4 / 57
本編 1
第四話 女性隊員もいました
しおりを挟む
初出勤の日、面接に来た時と同じように、門の少し手前で原チャリからおりた。そして、門の前に立っている自衛官さんのところへと、バイクを押しながら向かう。立っているのは、前とは違う自衛官さんだ。
「おはようございます。こちらのコンビニでバイトをすることになった、御厨と言います。入門許可証がまだなので、こちらで確認をとってもらうよう、オーナーさんから言われているのですが。ちなみに御厨は、こういう漢字です」
そう言いながら、免許証を差し出す。
「ここでお待ちください」
守衛室に引き返した自衛官さんは、前と同じように、ノートをパラパラとめくった。そして振り返る。
「みくりや、あや、さん、でしたね」
「はい」
「間違いなく訪問者リストに載っています。入っていただいてけっこうですよ。そのバイクは~」
「左の駐車場ですか?」
前の時に、置かせてもらった場所を指でさした。
「いえ。そちらは来客用なので。次からは、コンビニが入っている建物横、関係者用の駐輪スペースにとめてください」
「関係者!」
「ええ。コンビニのバイトさん、自転車やバイクで来る人は、全員そこに置いてもらってますので」
関係者とは、なんとも言いようがない特別感を感じてしまう。
「入門証を渡されたら、ここでそれを見せて、乗ったまま向かってもらったら良いですからね。ただし、営内を好き勝手に走り回ったりはしないように」
「やっぱり、戦車が走ってたりするんですか?」
「え、どうかなあ……」
隊員さんは、私の質問に首をかしげる。
「どちらかと言えば、戦車より、訓練で隊員が走っていることのほうが多いかな。とにかく、安全第一でお願いします」
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言って、原チャリに乗るとエンジンをかけ、目的地まで走らせた。建物の横には言われた通り、自転車が置かれている場所がある。屋根つきなので、雨が降ってきても安心だ。
「おはようございまーす!」
お店の前で声をあげると、スイーツが置かれている棚の前に立っていた自衛官さんが、ギョッとした顔で振り返った。どこかで見た顔だ。どこだっただろう?
「おはようございます。っていうか、いらっしゃいませ!」
「あ、はい。お邪魔してます……おはようございます?」
その人は、お店の時計を見ながら言った。時間はもう昼すぎ。たしかに「おはようございます」の時間じゃない。まあこれは、業界用語のようなもので、出勤時は必ず「おはようございます」なのだ。
「なにかお探しですか?」
「え、いや、もう見つけました」
手にしているのはプリン。しかも新商品。この前、先を越されてしまった司令さんが、悔しがっていたやつだ。
「司令さんのおつかいですか?」
「いえ、師団長の命令で」
「ああ、なるほど。この前、先を越されたって、司令さんが悔しがってましたよ?」
私がそう言うと、その人は少しだけゆかいそうな顔をした。
「そうでしょうね。下っ端の自分達は、司令と師団長のプリン争奪戦に巻き込まれて、ひじょうに苦労しているんですよ」
「そうなんですか。で、そちらは師団長さんサイドの人なんですね、えーと……あぁ、思い出しました、山南さんだ!」
やっと名前を思い出した。面接の日に、ここまで送ってくれた自衛官さんだ。
「よく覚えてましたね。まさか自分の名前を覚えられているとは、思いませんでした」
「だって、その前におじさん、じゃなくて、上官さんが、めちゃくちゃ大きな声で呼んでましたから。あ、もしかして、あの人が師団長さんなんですか?」
「いえいえ。あの人は、うちの先任です」
「センニン……仙人?」
まったくわからない。
「正しくは、最先任上級陸曹長ってやつです。階級は准陸尉ですが」
「……え、まって、まって。その、なんとか曹長の曹長ってのは階級ですよね? それなのに、階級が准陸尉? どーゆーこと……?」
頭の中でヒヨコが躍り出した。山南さんも、私が混乱していることに気づいたようだ。
「わかりませんか」
「すみません、まったくわかりません!」
「まあ、簡単に言えば、隊長の補佐をしている人です」
「隊長さんの補佐! それならわかります」
私が理解したとわかって、山南さんは満足げにうなづいた。
「その隊長も色々あるので、先任にも色々あるのですが、それを話している時間はなさそうなので、また次の機会にでも」
そう言いながら、デザートの棚から離れる。
「ああ、すみません、おつかいの途中でしたね!」
「いえいえ、お気になさらず」
山南さんがプリンをレジに持っていくと、オーナーの仰木さんが、バーコードリーダーを片手に、ニコニコしながら立っていた。
「御厨さん、さっそく仲良しの自衛官さんができたのね、良かったわ。山南さん、こちらは、新しくバイトで来てくれることになった、御厨さんよ。よろしくね」
「え、ああ。こちらこそ、よろしくお願いします。あ、レジ袋に入れてください。司令と鉢合わせしたら一大事なので」
「はい。今日も隠密任務、ご苦労様」
仰木さんはにこにこしながら、レジ袋にプリンとスプーンを入れる。
「偵察隊じゃないんですけどね、俺……」
ぼやきと同時に、コードを読み込むピッという音がした。そして音とともに、値段が画面に出る。
「お値段は外と同じですね」
値段の表示を見て、おもわずつぶやく。
「もちろんよ。そういうところは、普通のお店と変わらないわよ。違うのは、普通じゃない商品が並んでいることぐらいね。ああ、それと、お客さんのほとんどが自衛官さんってことかしら」
「では、自分はこれで」
「はい。いつもありがとう。たまには、自分のお買い物もしにきてね」
仰木さんの言葉に、山南さんは恥ずかしそうな顔をすると、急ぎ足で立ち去った。
「あの様子だと、待たれてますね、プリン」
「待たれてるわねー、間違いなく」
「意外でした。屈強な自衛官さん達が、プリンで一喜一憂するなんて」
「自衛官も普通の人とかわらないわよ」
バックヤードのロッカーに荷物を入れると、渡された制服の上着を着る。
「では今日一日、よろしくお願いします」
「こちらこそ。今の時間はあまりお客さんは多くないの。だから今のうちに、一通りの仕事の流れを説明しておくわね」
そう言いながら、二人で店内を回った。
「昼すぎから夕方までは、そこまでお客さんは多くないから、その時間を利用して、商品整理とお掃除を集中的にするのが、うちのパターンね。ああ、商品の整理は、そこまで気にしなくても良いかな」
「そうなんですか?」
お客さんが少ないからだろうか?と首をかしげた。
「ほら、ここの人達って整理整頓が得意でしょ? ちょっとでも乱れていると、気になっちゃうみたいでね。自分達で勝手に整理整頓しちゃうのよ。最近は止めるのをあきらめて、お任せしちゃってるの」
仰木さんがカラカラと笑う。
そして言葉通り、夕方までは、本当に数えるぐらいしかお客さんはこなかった。来店したのは、事務の人や、外にある設備の保守点検をしている人達など。その時間に来た人達は、自衛隊のお仕事をしているけれど、自衛官ではなく防衛技官という身分らしい。
お客さんがいなくなった時間を利用して、商品棚を確認しつつ、お掃除をする。今ここにいるのは私だけだ。仰木さんには、自宅にもどって休憩をしてもらっていた。やめてしまったバイトさんの穴埋めで、ずっと家のことがほったらかしになっていると聞いたからだ。
「基本的な仕事は前と変わらないし、ここは変なお客さんも来ないから、コンビニのバイトとしては、理想的な店舗だよね……」
掃除を続けながら、自衛隊の人達しか買えないモノがならんでいる、棚の前に立った。いかにもな雰囲気の商品から、これは何に使うもの?的なものまで様々だ。品出しをする時に品名はチェックするけど、私にはどんなものなのか、さっぱりわからなかった。
「ドーランて……あのドーランかな?」
目の前の「ドーラン」が自分の考えている「ドーラン」なのかも、実に怪しい。
「これ、なにに使うのか、山南さんが次にプリンのお使いに来た時に、教えてもらおう」
夕方、そろそろ交替の時間で、仰木さんが戻ってくるころだなと考えていると、廊下をバタバタと走る音が近づいてきた。
「こらっ、廊下を走るな!!」
「もうしわけありません!!」
野太い声の後に、謝っている女性の声がする。しかも複数の声。そしてワイワイガヤガヤと、にぎやかな空気とともに、迷彩服を着たお姉さん達が来店した。
「いらっしゃいませー」
「あ、新しいバイトさんだ! こんばんはー!」
「こんばんはー! ここの駐屯地、女子がめちゃくちゃ少ないので、バイトさんでも女子は大歓迎ですよ!」
お姉さん達は、ニコニコしながら、お菓子のコーナーへと突進する。
―― お姉さんっていうのは失礼かな。下手すると、あっちのほうが年下っぽい…… ――
お姉さん達は、楽しそうにおしゃべりをしながら、カゴにお菓子とジュースをどんどん放り込んでいた。そして、あふれそうなカゴを、レジに持ってくる。
「たくさんで驚きました? 今日は金曜日で、明日は訓練もお休みなんです。なので、今日の消灯時間までの自由時間は、ちょっとした女子会をするんですよ」
「へー、そんなのもできるんですか?」
お菓子をレジに通しながら、質問をする。
「外の居酒屋とか行くのも楽しいんですけど、中のほうが、門限を気にせずに、気兼ねなくおしゃべりができるので」
「あ、男子は圧倒的に、外に出ちゃうほうが多いんですよ。男子が中に残るのは、夜勤か懲罰を受けてる時ぐらいかな」
「ちょうばつ……」
「ま、いつの時代もバカな男子はいるってやつです」
「あー……なんとなく、わかるような」
小学校や中学校の時を思い出す。たしかに学年に一人ぐらいは、とんでもなくぶっ飛んだ男子がいた記憶が。
「そのうち、バイトさんも、いっしょに女子会しましょうね。じゃあ、しつれいしまーす!」
はち切れそうなレジ袋を二つかかえると、お姉さん達は廊下を走っていった。その途中で、再び走るなと怒られている。だけどその注意も、まったく無駄様子が聞こえてきた。
「ま、週末の夕方は、学生さんでも社会人さんでも、浮かれちゃうものね……」
自衛官さんも人間だ。お休み前に浮かれるのも、ありなんだろう。
「おはようございます。こちらのコンビニでバイトをすることになった、御厨と言います。入門許可証がまだなので、こちらで確認をとってもらうよう、オーナーさんから言われているのですが。ちなみに御厨は、こういう漢字です」
そう言いながら、免許証を差し出す。
「ここでお待ちください」
守衛室に引き返した自衛官さんは、前と同じように、ノートをパラパラとめくった。そして振り返る。
「みくりや、あや、さん、でしたね」
「はい」
「間違いなく訪問者リストに載っています。入っていただいてけっこうですよ。そのバイクは~」
「左の駐車場ですか?」
前の時に、置かせてもらった場所を指でさした。
「いえ。そちらは来客用なので。次からは、コンビニが入っている建物横、関係者用の駐輪スペースにとめてください」
「関係者!」
「ええ。コンビニのバイトさん、自転車やバイクで来る人は、全員そこに置いてもらってますので」
関係者とは、なんとも言いようがない特別感を感じてしまう。
「入門証を渡されたら、ここでそれを見せて、乗ったまま向かってもらったら良いですからね。ただし、営内を好き勝手に走り回ったりはしないように」
「やっぱり、戦車が走ってたりするんですか?」
「え、どうかなあ……」
隊員さんは、私の質問に首をかしげる。
「どちらかと言えば、戦車より、訓練で隊員が走っていることのほうが多いかな。とにかく、安全第一でお願いします」
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言って、原チャリに乗るとエンジンをかけ、目的地まで走らせた。建物の横には言われた通り、自転車が置かれている場所がある。屋根つきなので、雨が降ってきても安心だ。
「おはようございまーす!」
お店の前で声をあげると、スイーツが置かれている棚の前に立っていた自衛官さんが、ギョッとした顔で振り返った。どこかで見た顔だ。どこだっただろう?
「おはようございます。っていうか、いらっしゃいませ!」
「あ、はい。お邪魔してます……おはようございます?」
その人は、お店の時計を見ながら言った。時間はもう昼すぎ。たしかに「おはようございます」の時間じゃない。まあこれは、業界用語のようなもので、出勤時は必ず「おはようございます」なのだ。
「なにかお探しですか?」
「え、いや、もう見つけました」
手にしているのはプリン。しかも新商品。この前、先を越されてしまった司令さんが、悔しがっていたやつだ。
「司令さんのおつかいですか?」
「いえ、師団長の命令で」
「ああ、なるほど。この前、先を越されたって、司令さんが悔しがってましたよ?」
私がそう言うと、その人は少しだけゆかいそうな顔をした。
「そうでしょうね。下っ端の自分達は、司令と師団長のプリン争奪戦に巻き込まれて、ひじょうに苦労しているんですよ」
「そうなんですか。で、そちらは師団長さんサイドの人なんですね、えーと……あぁ、思い出しました、山南さんだ!」
やっと名前を思い出した。面接の日に、ここまで送ってくれた自衛官さんだ。
「よく覚えてましたね。まさか自分の名前を覚えられているとは、思いませんでした」
「だって、その前におじさん、じゃなくて、上官さんが、めちゃくちゃ大きな声で呼んでましたから。あ、もしかして、あの人が師団長さんなんですか?」
「いえいえ。あの人は、うちの先任です」
「センニン……仙人?」
まったくわからない。
「正しくは、最先任上級陸曹長ってやつです。階級は准陸尉ですが」
「……え、まって、まって。その、なんとか曹長の曹長ってのは階級ですよね? それなのに、階級が准陸尉? どーゆーこと……?」
頭の中でヒヨコが躍り出した。山南さんも、私が混乱していることに気づいたようだ。
「わかりませんか」
「すみません、まったくわかりません!」
「まあ、簡単に言えば、隊長の補佐をしている人です」
「隊長さんの補佐! それならわかります」
私が理解したとわかって、山南さんは満足げにうなづいた。
「その隊長も色々あるので、先任にも色々あるのですが、それを話している時間はなさそうなので、また次の機会にでも」
そう言いながら、デザートの棚から離れる。
「ああ、すみません、おつかいの途中でしたね!」
「いえいえ、お気になさらず」
山南さんがプリンをレジに持っていくと、オーナーの仰木さんが、バーコードリーダーを片手に、ニコニコしながら立っていた。
「御厨さん、さっそく仲良しの自衛官さんができたのね、良かったわ。山南さん、こちらは、新しくバイトで来てくれることになった、御厨さんよ。よろしくね」
「え、ああ。こちらこそ、よろしくお願いします。あ、レジ袋に入れてください。司令と鉢合わせしたら一大事なので」
「はい。今日も隠密任務、ご苦労様」
仰木さんはにこにこしながら、レジ袋にプリンとスプーンを入れる。
「偵察隊じゃないんですけどね、俺……」
ぼやきと同時に、コードを読み込むピッという音がした。そして音とともに、値段が画面に出る。
「お値段は外と同じですね」
値段の表示を見て、おもわずつぶやく。
「もちろんよ。そういうところは、普通のお店と変わらないわよ。違うのは、普通じゃない商品が並んでいることぐらいね。ああ、それと、お客さんのほとんどが自衛官さんってことかしら」
「では、自分はこれで」
「はい。いつもありがとう。たまには、自分のお買い物もしにきてね」
仰木さんの言葉に、山南さんは恥ずかしそうな顔をすると、急ぎ足で立ち去った。
「あの様子だと、待たれてますね、プリン」
「待たれてるわねー、間違いなく」
「意外でした。屈強な自衛官さん達が、プリンで一喜一憂するなんて」
「自衛官も普通の人とかわらないわよ」
バックヤードのロッカーに荷物を入れると、渡された制服の上着を着る。
「では今日一日、よろしくお願いします」
「こちらこそ。今の時間はあまりお客さんは多くないの。だから今のうちに、一通りの仕事の流れを説明しておくわね」
そう言いながら、二人で店内を回った。
「昼すぎから夕方までは、そこまでお客さんは多くないから、その時間を利用して、商品整理とお掃除を集中的にするのが、うちのパターンね。ああ、商品の整理は、そこまで気にしなくても良いかな」
「そうなんですか?」
お客さんが少ないからだろうか?と首をかしげた。
「ほら、ここの人達って整理整頓が得意でしょ? ちょっとでも乱れていると、気になっちゃうみたいでね。自分達で勝手に整理整頓しちゃうのよ。最近は止めるのをあきらめて、お任せしちゃってるの」
仰木さんがカラカラと笑う。
そして言葉通り、夕方までは、本当に数えるぐらいしかお客さんはこなかった。来店したのは、事務の人や、外にある設備の保守点検をしている人達など。その時間に来た人達は、自衛隊のお仕事をしているけれど、自衛官ではなく防衛技官という身分らしい。
お客さんがいなくなった時間を利用して、商品棚を確認しつつ、お掃除をする。今ここにいるのは私だけだ。仰木さんには、自宅にもどって休憩をしてもらっていた。やめてしまったバイトさんの穴埋めで、ずっと家のことがほったらかしになっていると聞いたからだ。
「基本的な仕事は前と変わらないし、ここは変なお客さんも来ないから、コンビニのバイトとしては、理想的な店舗だよね……」
掃除を続けながら、自衛隊の人達しか買えないモノがならんでいる、棚の前に立った。いかにもな雰囲気の商品から、これは何に使うもの?的なものまで様々だ。品出しをする時に品名はチェックするけど、私にはどんなものなのか、さっぱりわからなかった。
「ドーランて……あのドーランかな?」
目の前の「ドーラン」が自分の考えている「ドーラン」なのかも、実に怪しい。
「これ、なにに使うのか、山南さんが次にプリンのお使いに来た時に、教えてもらおう」
夕方、そろそろ交替の時間で、仰木さんが戻ってくるころだなと考えていると、廊下をバタバタと走る音が近づいてきた。
「こらっ、廊下を走るな!!」
「もうしわけありません!!」
野太い声の後に、謝っている女性の声がする。しかも複数の声。そしてワイワイガヤガヤと、にぎやかな空気とともに、迷彩服を着たお姉さん達が来店した。
「いらっしゃいませー」
「あ、新しいバイトさんだ! こんばんはー!」
「こんばんはー! ここの駐屯地、女子がめちゃくちゃ少ないので、バイトさんでも女子は大歓迎ですよ!」
お姉さん達は、ニコニコしながら、お菓子のコーナーへと突進する。
―― お姉さんっていうのは失礼かな。下手すると、あっちのほうが年下っぽい…… ――
お姉さん達は、楽しそうにおしゃべりをしながら、カゴにお菓子とジュースをどんどん放り込んでいた。そして、あふれそうなカゴを、レジに持ってくる。
「たくさんで驚きました? 今日は金曜日で、明日は訓練もお休みなんです。なので、今日の消灯時間までの自由時間は、ちょっとした女子会をするんですよ」
「へー、そんなのもできるんですか?」
お菓子をレジに通しながら、質問をする。
「外の居酒屋とか行くのも楽しいんですけど、中のほうが、門限を気にせずに、気兼ねなくおしゃべりができるので」
「あ、男子は圧倒的に、外に出ちゃうほうが多いんですよ。男子が中に残るのは、夜勤か懲罰を受けてる時ぐらいかな」
「ちょうばつ……」
「ま、いつの時代もバカな男子はいるってやつです」
「あー……なんとなく、わかるような」
小学校や中学校の時を思い出す。たしかに学年に一人ぐらいは、とんでもなくぶっ飛んだ男子がいた記憶が。
「そのうち、バイトさんも、いっしょに女子会しましょうね。じゃあ、しつれいしまーす!」
はち切れそうなレジ袋を二つかかえると、お姉さん達は廊下を走っていった。その途中で、再び走るなと怒られている。だけどその注意も、まったく無駄様子が聞こえてきた。
「ま、週末の夕方は、学生さんでも社会人さんでも、浮かれちゃうものね……」
自衛官さんも人間だ。お休み前に浮かれるのも、ありなんだろう。
69
あなたにおすすめの小説
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
僕の主治医さん
鏡野ゆう
ライト文芸
研修医の北川雛子先生が担当することになったのは、救急車で運び込まれた南山裕章さんという若き外務官僚さんでした。研修医さんと救急車で運ばれてきた患者さんとの恋の小話とちょっと不思議なあひるちゃんのお話。
【本編】+【アヒル事件簿】【事件です!】
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
お花屋さんとお巡りさん - 希望が丘駅前商店街 -
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】
少し時を遡ること十数年。商店街の駅前にある花屋のお嬢さん芽衣さんと、とある理由で駅前派出所にやってきたちょっと目つきの悪いお巡りさん真田さんのお話です。
【本編完結】【小話】
こちらのお話に登場する人達のお名前がチラリと出てきます。
・白い黒猫さん作『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
こちらのお話とはコラボエピソードがあります。
・篠宮楓さん作『希望が丘商店街 正則くんと楓さんのすれ違い思考な日常』
https://ncode.syosetu.com/n3046de/
※小説家になろうでも公開中※
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️
高野マキ
ライト文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない愛情物語り。こんなに溺愛する相手にめぐり会う事は二度と無い。
七海の商店街観察日誌 in 希望が丘駅前商店街
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】
鏡野課長は松平市役所の市民課の課長さん。最近なぜか転入する住民が増えてきてお仕事倍増中。愛妻弁当がなかなか食べられない辛い毎日をおくっています。そんな一家の長女、七海ちゃんの商店街観察日誌。
☆超不定期更新の一話完結型となりますので一話ごとに完結扱いにします☆
※小説家になろうでもでも公開中※
このお話は下記のお話とコラボさせていただいています(^^♪
・『希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339
・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
・『希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283
・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』
https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/582141697/878154104
・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる