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本編
第四話 週末は一緒にいられるようです
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「あああああ、なんてこったい!!」
お風呂から出てバスローブを着せてもらった後、大体のところを思い出した私はベッドでのた打ち回っていた。
「わわわ、私がもももも森永さんに迫ったんですねえ?!」
いや、そんな気はしてたんだ。だって森永さんは私みたいな小娘をナンパするような人には見えないし、そうなれば必然的に酔っ払った私が彼に迫ったという可能性しかない。
「いまさら他人行儀に“森永さん”だなんて呼び方はやめろ。信吾と呼んでくれ。なんなら壁さんでもいい」
残っていたシャンパンを飲んでいた彼が顔をしかめながら言った。そんな畏れ多いですよ、年上の人を名前とか壁だなんてっ。だいたい壁ってなんなの壁って!! 酔っ払っていた時の私を殴ってやりたい。
「でもっ、でもっ」
「……酔っ払っていた時の奈緒の方が素直で可愛かったのに」
ジタバタしている私の横に座った森永さんの手にはグラスがあって、それを飲みながら楽しそうにこちらを見下ろしている。朝から飲むなんて森永さんは結構なのん兵衛さんですね? そう呟いた私にニヤリと笑いかけた。
「せっかくの高級ワイン、しかもロマンチックなロゼを用意してくれたんだからちゃんと飲まないと。俺みたいなしがない公務員にはなかなか手の出せない代物だしな。そう言えば奈緒の誕生日はバレンタインなのか」
「あまり重なって欲しくない日に産まれちゃったみたいです、私」
抱きしめた枕の隙間から森永さんを見上げる。そんなものかーと呟きながら再びグラスに口をつけた。私の視線を感じたのか飲みながらニッと笑ったように見えた。ん? なに?
「わっ」
いきなり枕を取り上げられて仰向けにされると森永さんがキスしてきた。
そして口の中に流れ込んできたのはシャンパン。さっそく私を酔わそうと決めたみたい。甘い液体が喉を通っていきお腹の中が微かに熱くなる。お腹だけじゃなく体が熱くなってきたのはアルコールのせいだけじゃないよね? ひたすら口移しで飲まされ続け、ボトルの中身が空になる頃にはフワフワした感じが再び戻ってきていた。
「んー……空きっ腹にアルコールはちょっと効くかもな……」
シャンパンのせいでポヤーンとなった私を見下ろした森永さんが呟いた。お言葉ですが殆ど私が飲んでいたと思いますよ? だいたいボトルほぼ一本分を口移しで飲ませるだなんて一体ぜんたいどんなプレーなんだか。
「ケーキ、ありますよ?」
「朝飯にケーキはないだろう、少なくとも俺はイヤだ」
「私はケーキでも平気だけどな……」
信じられないという顔をされちゃった。だけど、せっかくホテルの人が私の為に用意してくれたんだもん、勿体ないから食べないと。蓋はかぶさっているけど、切った面のスポンジが乾いてきているので何とかしないと本当に食べられなくなっちゃうよ。
「ここってルームサービスあるんですよね? 森永さんはそれで朝ご飯頼んだら? 私はあのケーキ食べるし。あ、できたら紅茶はお願いしたいかも」
「やれやれ、本当にケーキを朝飯にするつもりか。分かった、お嬢さんのお望みのままにしよう」
「あ……」
「なんだ?」
「でも、もう朝なんですよね……」
森永さんは私の言いたいことに気がついたみたいでギュッと抱きしめてくれた。
「どうせ土日で学校は休みなんだろう? 俺は月曜日にチェックアウトして本省に顔を出したらそのまま駐屯地に戻る予定だ。この週末は二人で楽しむってのはどうだ?」
「楽しむって……えっと……ここで?」
「お望みとあらば、二日間、セックス三昧で過ごしても良いぞ? だがそうだな、先ずは朝飯、だな」
森永さんが電話をしている間に私はベッドを少しでも見れるように整えてから昨日の服に着替える。電話を終えた彼も着替えていた。昨日は制服だったけれど今はラフな格好だ。
「奈緒、着替えを取りに帰りたいか?」
「そうですね……他にも取りに戻りたいものがあるので一度は自宅に戻りたいです」
「分かった。俺も買わなきゃいけないものがあるから、後で一緒に出よう。それと、やはり森永さんはよせ。どうも他人行儀で気に入らん」
「じゃあ……信吾さん、で……」
「ああ、それでいい。次からは森永と呼んだ時点でお仕置きだからな」
「えー……」
なんだかそれって酷い。きっとお仕置きって森、じゃなくて信吾さんは楽しめるに決まってるんだから色々と不公平な気がする。
しばらくしてホテルの人が朝食を届けてくれた。やっぱ豪華だね、しかも和食で用意してくれるなんてすごーい。そして信吾さんが一人で宿泊していた筈の部屋に若い女性がいることに対しても、内心はどう思っているかは別としてさも当然という顔をして普通に接してくれる。
医者や看護師も大概ポーカーフェイスが得意な人が多いけどホテルマンには負けるかもしれない。
「お客様は紅茶だけと伺っておりますが、それでよろしいのでしょうか?」
「はい、いただいたケーキ、食べたいので」
小さなホール型とは言えそれをまるごと自分一人で食べるなんてちょっと冒険だけど、小さい頃にはそういうのちょっと憧れていたんだ。有り得ないとぶつぶつ言っている信吾さんを尻目にさっそくケーキにとりかかる。やっぱり美味しい~~。ホテルの人は頼んだ紅茶の他にフルーツを置いていってくれた。この気遣い!! さすが老舗ぇぇぇ!!
黙々とケーキを片づけながら、正面でテレビのニュースを見つつ食べている信吾さんを観察する。
「どうした?」
「なんだか新鮮。朝ご飯を誰かと食べるなんて久し振りだから」
「……それ、本当に朝飯なのか?」
そんなに胡散臭げに見ることないのに。そりゃ一般的な朝ご飯からしたらちょっと変わっているかもしれないけれど、パンにジャム付けて食べるのと大差ないと思うんだけどな。
「いいんですよう、私はこれが気に入ったんだからー。それに信吾さんに食べろって言ってるわけじゃないんですからね」
「最近の若い連中の食生活は一体どうなってるんだ……」
「意外と普通ですよ。別に私だって毎日こんなケーキを食べているわけじゃないし」
いわゆるジェネレーションギャップに苦悩する信吾さんを慰めながら朝ご飯を食べ終えると、きちんと出掛ける用意をしてホテルを出た。
「一緒に行かなくても良いか?」
「行ったら行ったで部屋の文句を言うつもりでしょ? それに昼間は管理人さんがいて色々と面倒だから」
「了解した。じゃあ十一時に駅前のカフェで待っている」
「あ、携帯の番号とか教えてはもらえないのかな……何かあった時のために」
信吾さんがちょっとだけためらったのが分かった。あまり教えたくないみたい。ま、そうだよね、私だって信吾さんでなきゃ週末だけの相手に携帯の番号なんて教えたくないもの。
「んじゃあ、私の番号だけ教えておきますね。どうしてもお仕事で行かなきゃいけないとかになったら、ここにショートメールでも良いので入れてもらったら」
手帳の後ろに番号を書くと、それを破って信吾さんに渡す。
「じゃあまた後でー直ぐに戻りますからー」
そう言って手を振ると止まっていたタクシーに乗り込んだ。
+++++
マンションの自室に戻ってから、うーむと考え込む。昨晩ここに来た信吾さんはここにいるのは良くないと言って私を連れ出した。そんなに良くないかな? もっと何か買った方が良いのかな? 戻ってから信吾さんに相談してみよう。
「……戻ったら、だって。ふふっ」
いつの間にか信吾さんを起点にして物事を考えていることに気がついて笑ってしまった。着替えをカバンに入れているとバッグに入っていた携帯のバイブがブルブルいっているのに気がついた。取り出して確認するとみゅうさんだ。
「もしもしー?」
『あ、やっと出たー。昨日から何度も電話したんだよ』
「御免なさい、全然気がつかなかったです」
信吾さんが部屋の隅に放り投げた後、携帯のことなんてすっかり忘れてた。
『松橋君に任せたけど大丈夫だったのかなーって心配になってね。もしかしてあの後、彼と?』
「いえ、先輩とはお店を出てすぐに別れましたよ」
『え、そうなの? じゃあ一人でタクシーで?』
「えーっと、あのほら、お店にいた壁さん覚えてます?」
『壁さん? ……ああ、自衛隊の制服着てた人? えーっ?! もしかしてその人と?』
「ですです」
なんかみゅーさんが喚いている。どうしちゃったのとか大丈夫なのかとか。
「心配ないですよー。信吾さんとっても優しい人ですし、お誕生日のケーキも食べましたよ、あとシャンパンなんて初めて飲みました」
『なおっち、あっさりと餌づけされてんじゃないわよぉ!!』
「餌づけって。私が信吾さんをお持ち帰りしたのであって、あちらが私を持ち帰ったわけでもないですしぃ、えへへぇ」
自然と顔が緩んでだらしない笑い声が漏れてしまった。
『何なのよ、その意味深な笑いはっ!!』
「えー、だってえ~信吾さん、私のこと好きとか愛してるとか言ってくれたんですよ~それも一晩中~~」
『なおっち、それは男の常套句で……』
「分かってますよ~。だけどお誕生日くらいそう言ってくれる人と一緒にいたいって思うの、間違ってないですよね? 私だって子供じゃないんだからずっと一緒にいられるとは思ってないですし、この週末だけ夢見たって良いですよね?」
私の言葉にみゅうさんが溜め息をついたのが分かった。
『なおっちが分かっているなら何も言わないけど』
「週明け、惚気話たっぷり聞かせてあげますぅ」
『いらねぇ~!』
まさか私のなおっちが男をお持ち帰りするなんて世も末とか言われたい放題だったけれど、そんなのどうでも良い。最初に愛してるって言われた時、それが本心でないって分かっていても凄く嬉しかったんだもの。一晩だけでも幸せなのにそれが週末あと二日も続くんだよ? 私、週明けには幸せすぎて天国に行っちゃってるかも。
『なおっち、相手が自衛官さんならあんたの父親のことは話しておいた方が良いんじゃないの?』
「え、でも絶縁状態ですよ?」
『そりゃそうだけど、それでも血縁であるには違いないでしょ? お父さんの立ち位置を考えると知らせておいた方が良いんじゃないかなって思う。ま、あの人が今更なおっちのことにくちばしを挟むとは思わないけど念の為にね』
私の父親は野党第一党に所属する国会議員で、現在は国対委員長を務めるまでに出世した人だ。たまにテレビのニュースで与党に対してあれやこれや異論を唱えているのを見かける。
そのたびにカツラおじさんが何を偉そうなこと言ってるんだか、なーんて意地悪なことを考えちゃうんだ。そんなあの人がいろいろと言っている中には自衛隊のことも含まれているから、言われてみれば信吾さんには話しておいた方が良いかな。向こうから縁を切った娘に今更あれこれ言ってくるとは思えないけど。
「……そうなのかな。分かりました、彼のところに戻ったら話してみます」
『戻ったらってなによ、戻ったらって! まったく、脳天気なリア充ぶりに腹が立ってきたわ、休み明けに洗いざらい白状してもらうわよ?!』
「みゅうさん、さっきはいらねーとか言ってたのにぃ」
『腹が立つから話を聞きながら罵ってあげる』
相変わらずなみゅうさんの言葉に笑いながら電話を切ると、着替えとスキンケア用品一式を入れたカバンを手に部屋を出た。
管理人さんにはお友達と某鼠の国にお泊まりで遊びに行くんですよ~って言っておいた。別に学生マンションじゃないんだから気にすることもないけど何となく。どうせ帰ってくる時間にはいないだろうし、そうなればお土産とか持ってなくても不審に思われることもないものね。
駅前に着くとビルにつけられている大型モニターでニュースが流れている。また国会紛糾とかだよ……ほんと飽きないよね偉い先生達って。そして映ったのは父親。まあ出るだろうとは思ってた。
「ほーんと、カツラのくせに偉そう」
ポソッと呟いてしまった。世の中の薄毛を気にしているおじさん御免なさい。でもどうしても言わずにはいられないの。
だって常にカメラに映る時の自分の顔の角度とか気にする人なんだよ、この人。そりゃ第一印象とか大切ってのは分かる。だけど顔で仕事してるんじゃないだろって話だよね。気にするところが違うんじゃないかなっていつも思ってた。映像みていると相変わらずそういうの気にしているみたいだ。
「きもい」
「何がきもいって?」
いきなりの声にヒッてなってカバンを落としちゃった。慌てて振り返ればニヤニヤした信吾さんが立っていた。
「もうっ! 驚かさないでっ!!」
パシッて信吾さんの胸元を叩いた。
「すまん、いつもの癖で気配消してた」
「いつもの癖って何ですかぁ!」
「そういう部隊に所属しているってことさ」
「そんな忍者みたいなことするのって何よぉ」
「秘密」
信吾さんは私が落としたカバンを拾い上げ、そこに自分が持っていた紙袋を突っ込んでいる。ちょっと大きめのカバンで良かった、じゃなくて。
「なにそれ?」
「俺達に必要なもの」
「俺、達……?」
「俺と奈緒。……コンドームだよ。今朝、残っていたのを使い切っちゃっただろ?」
んー?と首を傾げる私の耳元に屈みこんだ信吾さんがポソッと囁いた。
「あー……」
「なんで顔を赤くするんだ、お世話になる大切なものだぞ」
「だって、そんなあからさまな……」
「他に言いようがないだろ?」
「それはそうだけど……」
それは分かるよ? でもさ、もうちょっとこう何て言うか、オブラートに包んだ表現方法は無かったのかなあと思うわけね。うーん……無いかあ。
「あ……」
「なんだ?」
「昨日のは何処で?」
一つ二つなら持っていたって不思議じゃないと思う。だけど一箱なんて出張なのに持ってくるもの?
「ホテルに戻る途中のドラッグストアで買った。奈緒は寝ていたから気がつかなかっただろ? コートを着ていて助かったよ、制服のままではさすがに買いにくいからな」
「そ、そうだったんですか……」
「まさか俺が出張なのに持ってきているとでも?」
「え、男の人だからもしかして、とか……」
「奈緒みたいな女の子にお持ち帰りされると分かっていたら、最初から持ってきたかもしれないがな」
お、お持ち帰りしちゃったんだよね私が、信吾さんを。うわあ、何度考えても酔っ払った時の自分を殴りたい。当分お酒は自粛した方が良さそう。
「けど今の袋、なんだか大きいですけど……」
「一箱を一晩で使い切ったんだぞ? 単純に計算して週末は何箱使うと思う」
「うわあ……」
「うわあじゃない。こら、そんなことで顔を赤らめるな。実際にこれを買った俺の方が恥ずかしいんだぞ、若い店員に生温かい目で見られて。どうだ、次に買う必要が出来たら奈緒が買いに行ってみるか? そう言えば可愛いクマの箱なんてのもあったな、あれだったら奈緒でも買えそうだぞ?」
「いやぁぁぁ、無理ぃ、絶対に無理ぃ!!」
そんな私を見てゲラゲラ笑う信吾さん。酷い人だー。いや、本気で私に買いに行かせようとしているのかもしれない。
「ま、二箱もあれば普通は余るぐらいだと思うんだけどな。なんせおねだり上手な奈緒と俺のことだ、どうなることやら。ちょっとした新記録になるかもな」
「記録なんてつけないでえ……」
もう男の人って信じられないっ!!と怒りながらも期待に体が疼いたのも事実。そんな思いが顔に出てしまったのか信吾さんが楽しそうに笑った。
「おいおい、こんな街中で物欲しそうな顔をするんじゃないよ、お嬢さん。遠慮なしに襲っちまうぞ?」
「そんな顔してませんもん!」
「わかったわかった、早く部屋に戻りたいんだな、それならそうと早く言わないか」
「言ってないー!」
信吾さん、私の父親のことを聞いても今と同じように接してくれるかなあ……ホテルに戻る道すがらたわいもない話をしながらそんなことを考えた。
お風呂から出てバスローブを着せてもらった後、大体のところを思い出した私はベッドでのた打ち回っていた。
「わわわ、私がもももも森永さんに迫ったんですねえ?!」
いや、そんな気はしてたんだ。だって森永さんは私みたいな小娘をナンパするような人には見えないし、そうなれば必然的に酔っ払った私が彼に迫ったという可能性しかない。
「いまさら他人行儀に“森永さん”だなんて呼び方はやめろ。信吾と呼んでくれ。なんなら壁さんでもいい」
残っていたシャンパンを飲んでいた彼が顔をしかめながら言った。そんな畏れ多いですよ、年上の人を名前とか壁だなんてっ。だいたい壁ってなんなの壁って!! 酔っ払っていた時の私を殴ってやりたい。
「でもっ、でもっ」
「……酔っ払っていた時の奈緒の方が素直で可愛かったのに」
ジタバタしている私の横に座った森永さんの手にはグラスがあって、それを飲みながら楽しそうにこちらを見下ろしている。朝から飲むなんて森永さんは結構なのん兵衛さんですね? そう呟いた私にニヤリと笑いかけた。
「せっかくの高級ワイン、しかもロマンチックなロゼを用意してくれたんだからちゃんと飲まないと。俺みたいなしがない公務員にはなかなか手の出せない代物だしな。そう言えば奈緒の誕生日はバレンタインなのか」
「あまり重なって欲しくない日に産まれちゃったみたいです、私」
抱きしめた枕の隙間から森永さんを見上げる。そんなものかーと呟きながら再びグラスに口をつけた。私の視線を感じたのか飲みながらニッと笑ったように見えた。ん? なに?
「わっ」
いきなり枕を取り上げられて仰向けにされると森永さんがキスしてきた。
そして口の中に流れ込んできたのはシャンパン。さっそく私を酔わそうと決めたみたい。甘い液体が喉を通っていきお腹の中が微かに熱くなる。お腹だけじゃなく体が熱くなってきたのはアルコールのせいだけじゃないよね? ひたすら口移しで飲まされ続け、ボトルの中身が空になる頃にはフワフワした感じが再び戻ってきていた。
「んー……空きっ腹にアルコールはちょっと効くかもな……」
シャンパンのせいでポヤーンとなった私を見下ろした森永さんが呟いた。お言葉ですが殆ど私が飲んでいたと思いますよ? だいたいボトルほぼ一本分を口移しで飲ませるだなんて一体ぜんたいどんなプレーなんだか。
「ケーキ、ありますよ?」
「朝飯にケーキはないだろう、少なくとも俺はイヤだ」
「私はケーキでも平気だけどな……」
信じられないという顔をされちゃった。だけど、せっかくホテルの人が私の為に用意してくれたんだもん、勿体ないから食べないと。蓋はかぶさっているけど、切った面のスポンジが乾いてきているので何とかしないと本当に食べられなくなっちゃうよ。
「ここってルームサービスあるんですよね? 森永さんはそれで朝ご飯頼んだら? 私はあのケーキ食べるし。あ、できたら紅茶はお願いしたいかも」
「やれやれ、本当にケーキを朝飯にするつもりか。分かった、お嬢さんのお望みのままにしよう」
「あ……」
「なんだ?」
「でも、もう朝なんですよね……」
森永さんは私の言いたいことに気がついたみたいでギュッと抱きしめてくれた。
「どうせ土日で学校は休みなんだろう? 俺は月曜日にチェックアウトして本省に顔を出したらそのまま駐屯地に戻る予定だ。この週末は二人で楽しむってのはどうだ?」
「楽しむって……えっと……ここで?」
「お望みとあらば、二日間、セックス三昧で過ごしても良いぞ? だがそうだな、先ずは朝飯、だな」
森永さんが電話をしている間に私はベッドを少しでも見れるように整えてから昨日の服に着替える。電話を終えた彼も着替えていた。昨日は制服だったけれど今はラフな格好だ。
「奈緒、着替えを取りに帰りたいか?」
「そうですね……他にも取りに戻りたいものがあるので一度は自宅に戻りたいです」
「分かった。俺も買わなきゃいけないものがあるから、後で一緒に出よう。それと、やはり森永さんはよせ。どうも他人行儀で気に入らん」
「じゃあ……信吾さん、で……」
「ああ、それでいい。次からは森永と呼んだ時点でお仕置きだからな」
「えー……」
なんだかそれって酷い。きっとお仕置きって森、じゃなくて信吾さんは楽しめるに決まってるんだから色々と不公平な気がする。
しばらくしてホテルの人が朝食を届けてくれた。やっぱ豪華だね、しかも和食で用意してくれるなんてすごーい。そして信吾さんが一人で宿泊していた筈の部屋に若い女性がいることに対しても、内心はどう思っているかは別としてさも当然という顔をして普通に接してくれる。
医者や看護師も大概ポーカーフェイスが得意な人が多いけどホテルマンには負けるかもしれない。
「お客様は紅茶だけと伺っておりますが、それでよろしいのでしょうか?」
「はい、いただいたケーキ、食べたいので」
小さなホール型とは言えそれをまるごと自分一人で食べるなんてちょっと冒険だけど、小さい頃にはそういうのちょっと憧れていたんだ。有り得ないとぶつぶつ言っている信吾さんを尻目にさっそくケーキにとりかかる。やっぱり美味しい~~。ホテルの人は頼んだ紅茶の他にフルーツを置いていってくれた。この気遣い!! さすが老舗ぇぇぇ!!
黙々とケーキを片づけながら、正面でテレビのニュースを見つつ食べている信吾さんを観察する。
「どうした?」
「なんだか新鮮。朝ご飯を誰かと食べるなんて久し振りだから」
「……それ、本当に朝飯なのか?」
そんなに胡散臭げに見ることないのに。そりゃ一般的な朝ご飯からしたらちょっと変わっているかもしれないけれど、パンにジャム付けて食べるのと大差ないと思うんだけどな。
「いいんですよう、私はこれが気に入ったんだからー。それに信吾さんに食べろって言ってるわけじゃないんですからね」
「最近の若い連中の食生活は一体どうなってるんだ……」
「意外と普通ですよ。別に私だって毎日こんなケーキを食べているわけじゃないし」
いわゆるジェネレーションギャップに苦悩する信吾さんを慰めながら朝ご飯を食べ終えると、きちんと出掛ける用意をしてホテルを出た。
「一緒に行かなくても良いか?」
「行ったら行ったで部屋の文句を言うつもりでしょ? それに昼間は管理人さんがいて色々と面倒だから」
「了解した。じゃあ十一時に駅前のカフェで待っている」
「あ、携帯の番号とか教えてはもらえないのかな……何かあった時のために」
信吾さんがちょっとだけためらったのが分かった。あまり教えたくないみたい。ま、そうだよね、私だって信吾さんでなきゃ週末だけの相手に携帯の番号なんて教えたくないもの。
「んじゃあ、私の番号だけ教えておきますね。どうしてもお仕事で行かなきゃいけないとかになったら、ここにショートメールでも良いので入れてもらったら」
手帳の後ろに番号を書くと、それを破って信吾さんに渡す。
「じゃあまた後でー直ぐに戻りますからー」
そう言って手を振ると止まっていたタクシーに乗り込んだ。
+++++
マンションの自室に戻ってから、うーむと考え込む。昨晩ここに来た信吾さんはここにいるのは良くないと言って私を連れ出した。そんなに良くないかな? もっと何か買った方が良いのかな? 戻ってから信吾さんに相談してみよう。
「……戻ったら、だって。ふふっ」
いつの間にか信吾さんを起点にして物事を考えていることに気がついて笑ってしまった。着替えをカバンに入れているとバッグに入っていた携帯のバイブがブルブルいっているのに気がついた。取り出して確認するとみゅうさんだ。
「もしもしー?」
『あ、やっと出たー。昨日から何度も電話したんだよ』
「御免なさい、全然気がつかなかったです」
信吾さんが部屋の隅に放り投げた後、携帯のことなんてすっかり忘れてた。
『松橋君に任せたけど大丈夫だったのかなーって心配になってね。もしかしてあの後、彼と?』
「いえ、先輩とはお店を出てすぐに別れましたよ」
『え、そうなの? じゃあ一人でタクシーで?』
「えーっと、あのほら、お店にいた壁さん覚えてます?」
『壁さん? ……ああ、自衛隊の制服着てた人? えーっ?! もしかしてその人と?』
「ですです」
なんかみゅーさんが喚いている。どうしちゃったのとか大丈夫なのかとか。
「心配ないですよー。信吾さんとっても優しい人ですし、お誕生日のケーキも食べましたよ、あとシャンパンなんて初めて飲みました」
『なおっち、あっさりと餌づけされてんじゃないわよぉ!!』
「餌づけって。私が信吾さんをお持ち帰りしたのであって、あちらが私を持ち帰ったわけでもないですしぃ、えへへぇ」
自然と顔が緩んでだらしない笑い声が漏れてしまった。
『何なのよ、その意味深な笑いはっ!!』
「えー、だってえ~信吾さん、私のこと好きとか愛してるとか言ってくれたんですよ~それも一晩中~~」
『なおっち、それは男の常套句で……』
「分かってますよ~。だけどお誕生日くらいそう言ってくれる人と一緒にいたいって思うの、間違ってないですよね? 私だって子供じゃないんだからずっと一緒にいられるとは思ってないですし、この週末だけ夢見たって良いですよね?」
私の言葉にみゅうさんが溜め息をついたのが分かった。
『なおっちが分かっているなら何も言わないけど』
「週明け、惚気話たっぷり聞かせてあげますぅ」
『いらねぇ~!』
まさか私のなおっちが男をお持ち帰りするなんて世も末とか言われたい放題だったけれど、そんなのどうでも良い。最初に愛してるって言われた時、それが本心でないって分かっていても凄く嬉しかったんだもの。一晩だけでも幸せなのにそれが週末あと二日も続くんだよ? 私、週明けには幸せすぎて天国に行っちゃってるかも。
『なおっち、相手が自衛官さんならあんたの父親のことは話しておいた方が良いんじゃないの?』
「え、でも絶縁状態ですよ?」
『そりゃそうだけど、それでも血縁であるには違いないでしょ? お父さんの立ち位置を考えると知らせておいた方が良いんじゃないかなって思う。ま、あの人が今更なおっちのことにくちばしを挟むとは思わないけど念の為にね』
私の父親は野党第一党に所属する国会議員で、現在は国対委員長を務めるまでに出世した人だ。たまにテレビのニュースで与党に対してあれやこれや異論を唱えているのを見かける。
そのたびにカツラおじさんが何を偉そうなこと言ってるんだか、なーんて意地悪なことを考えちゃうんだ。そんなあの人がいろいろと言っている中には自衛隊のことも含まれているから、言われてみれば信吾さんには話しておいた方が良いかな。向こうから縁を切った娘に今更あれこれ言ってくるとは思えないけど。
「……そうなのかな。分かりました、彼のところに戻ったら話してみます」
『戻ったらってなによ、戻ったらって! まったく、脳天気なリア充ぶりに腹が立ってきたわ、休み明けに洗いざらい白状してもらうわよ?!』
「みゅうさん、さっきはいらねーとか言ってたのにぃ」
『腹が立つから話を聞きながら罵ってあげる』
相変わらずなみゅうさんの言葉に笑いながら電話を切ると、着替えとスキンケア用品一式を入れたカバンを手に部屋を出た。
管理人さんにはお友達と某鼠の国にお泊まりで遊びに行くんですよ~って言っておいた。別に学生マンションじゃないんだから気にすることもないけど何となく。どうせ帰ってくる時間にはいないだろうし、そうなればお土産とか持ってなくても不審に思われることもないものね。
駅前に着くとビルにつけられている大型モニターでニュースが流れている。また国会紛糾とかだよ……ほんと飽きないよね偉い先生達って。そして映ったのは父親。まあ出るだろうとは思ってた。
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ポソッと呟いてしまった。世の中の薄毛を気にしているおじさん御免なさい。でもどうしても言わずにはいられないの。
だって常にカメラに映る時の自分の顔の角度とか気にする人なんだよ、この人。そりゃ第一印象とか大切ってのは分かる。だけど顔で仕事してるんじゃないだろって話だよね。気にするところが違うんじゃないかなっていつも思ってた。映像みていると相変わらずそういうの気にしているみたいだ。
「きもい」
「何がきもいって?」
いきなりの声にヒッてなってカバンを落としちゃった。慌てて振り返ればニヤニヤした信吾さんが立っていた。
「もうっ! 驚かさないでっ!!」
パシッて信吾さんの胸元を叩いた。
「すまん、いつもの癖で気配消してた」
「いつもの癖って何ですかぁ!」
「そういう部隊に所属しているってことさ」
「そんな忍者みたいなことするのって何よぉ」
「秘密」
信吾さんは私が落としたカバンを拾い上げ、そこに自分が持っていた紙袋を突っ込んでいる。ちょっと大きめのカバンで良かった、じゃなくて。
「なにそれ?」
「俺達に必要なもの」
「俺、達……?」
「俺と奈緒。……コンドームだよ。今朝、残っていたのを使い切っちゃっただろ?」
んー?と首を傾げる私の耳元に屈みこんだ信吾さんがポソッと囁いた。
「あー……」
「なんで顔を赤くするんだ、お世話になる大切なものだぞ」
「だって、そんなあからさまな……」
「他に言いようがないだろ?」
「それはそうだけど……」
それは分かるよ? でもさ、もうちょっとこう何て言うか、オブラートに包んだ表現方法は無かったのかなあと思うわけね。うーん……無いかあ。
「あ……」
「なんだ?」
「昨日のは何処で?」
一つ二つなら持っていたって不思議じゃないと思う。だけど一箱なんて出張なのに持ってくるもの?
「ホテルに戻る途中のドラッグストアで買った。奈緒は寝ていたから気がつかなかっただろ? コートを着ていて助かったよ、制服のままではさすがに買いにくいからな」
「そ、そうだったんですか……」
「まさか俺が出張なのに持ってきているとでも?」
「え、男の人だからもしかして、とか……」
「奈緒みたいな女の子にお持ち帰りされると分かっていたら、最初から持ってきたかもしれないがな」
お、お持ち帰りしちゃったんだよね私が、信吾さんを。うわあ、何度考えても酔っ払った時の自分を殴りたい。当分お酒は自粛した方が良さそう。
「けど今の袋、なんだか大きいですけど……」
「一箱を一晩で使い切ったんだぞ? 単純に計算して週末は何箱使うと思う」
「うわあ……」
「うわあじゃない。こら、そんなことで顔を赤らめるな。実際にこれを買った俺の方が恥ずかしいんだぞ、若い店員に生温かい目で見られて。どうだ、次に買う必要が出来たら奈緒が買いに行ってみるか? そう言えば可愛いクマの箱なんてのもあったな、あれだったら奈緒でも買えそうだぞ?」
「いやぁぁぁ、無理ぃ、絶対に無理ぃ!!」
そんな私を見てゲラゲラ笑う信吾さん。酷い人だー。いや、本気で私に買いに行かせようとしているのかもしれない。
「ま、二箱もあれば普通は余るぐらいだと思うんだけどな。なんせおねだり上手な奈緒と俺のことだ、どうなることやら。ちょっとした新記録になるかもな」
「記録なんてつけないでえ……」
もう男の人って信じられないっ!!と怒りながらも期待に体が疼いたのも事実。そんな思いが顔に出てしまったのか信吾さんが楽しそうに笑った。
「おいおい、こんな街中で物欲しそうな顔をするんじゃないよ、お嬢さん。遠慮なしに襲っちまうぞ?」
「そんな顔してませんもん!」
「わかったわかった、早く部屋に戻りたいんだな、それならそうと早く言わないか」
「言ってないー!」
信吾さん、私の父親のことを聞いても今と同じように接してくれるかなあ……ホテルに戻る道すがらたわいもない話をしながらそんなことを考えた。
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