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本編
第三十二話 カボチャとお花
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ニャンコのイラストは【ぱちくり屋のPOP-BLOG】様でお借りしてきたものです。
++++++++++
「お帰り嗣治さん、これ見て~」
仕事を終えて自宅に戻った嗣治さんにプリントアウトとした紙をかざしてみせる。そこには黒い背景にちょっと怖い顔をしたオレンジ色のニャンコのイラスト。いつも私が作るニャンコのイラストとはちょっと趣が違うもの。
「ツグニャンとモモニャンに仮装させようと思ったんだけど上手くいかなくてね、改めて最初から作ってみたんだ」
「ハロウィン仕様なのか」
差し出した紙を手に取った嗣治さんは可笑しそうに笑みを口元に浮かべながらそれをジッと見詰めている。あ、まさかキャラ弁なんて考えてないよね?!
「そうだよ、可愛いでしょ?」
「休みの日にこんなことしてたらまた肩こりが酷くなるぞ。このまえ林整骨院に行ったばかりだろ?」
「それはそうなんだけどさ、せっかくハロウィンだし」
「まさかこれも職場で貼るのか?」
「プリントアウトしたのをマグネットシートに貼ってロッカーにくっつけるんだよ。他にもお化けとか作ったし」
何て言うか犯罪捜査という殺伐とした職場だから、こういうイベントの時ぐらいせめてロッカーぐらい明るくしたいなって思ったんだよね。
「それってもしかして税金?」
「ブーッ!! 自腹ですぅ、もしくは所長からせしめる」
「酷い部下だな、モモ」
「良いの、こういう楽しいことは所長も大好きだし、マグネットシートだってそんなに高価なものじゃないもん。それとプリントアウトはここでしていくし、備品で使うのはハサミぐらい」
これだってお昼休みとか仕事が始まる前に作業するからそれほど問題じゃないと思うんだ。去年まではそんなこと考える余裕も時間も体力も無かったんだけど、ここ暫くは赤ちゃんができたってことで仕事の量も減らしてもらってるし、せめてこういうことで気分を明るくすることで皆に恩返ししなきゃ。
「あまり根を詰めるなよ。お腹に赤ん坊がいるんだから」
「分かってるって」
「どうだか……分かってる人間は椅子に乗ったりしないよな」
「まだ蒸し返すかな……」
お休みの日にちょっと届かないところに仕舞い込んだ服を出そうとしていただけなのに、それを見つけた嗣治さんが大騒ぎして椅子から私を無理やり抱っこして引き離したのだ。別に前に言われたみたいに飛んだ跳ねたりしてないのに、ブツブツ……。
「モモに籐子さんの半分、いや四分の一ぐらいの妊婦としての自覚があればな」
「ちゃんと自覚してるもん」
「じゃあ何で俺がわざわざ禁止事項をメモ書きして冷蔵庫のドアに貼り付けなきゃいけないんだろうな」
「……それは」
「それは?」
「大皿を上の棚から出そうとしたからデス」
そんな訳で我が家の冷蔵庫には嗣治さん直筆の禁止事項が貼られている。もう幼稚園児じゃないんだからさあ……と抗議したけど私の抗議は丸っと無視された。剥がしたら二枚目は桜木茶舗の御隠居に書いてもらうからなという警告付きって考えてみるとちょっと酷いんじゃ?
「それと、エスポワールさんで作り方を教えてもらったハロウィン用のランタンを鹿ヶ谷カボチャで作ってみた」
「カボチャ?!」
またそんなに重たいものをって嗣治さんが怖い顔をしてくる。いやいや嗣治さん、普通のカボチャにしようと思っていたのを小さい鹿ヶ谷にしたんだよ? これなら二つだけ買ってきたら問題なさげだったし。そりゃ他にも色々と買ったから多少は荷物が重たくなったけどさ。
「本当はね、玄関に飾って蝋燭を入れて灯すまで嗣治さんには内緒にしておこうって思ってたんだけど、ちょうど出来上がったから見せてあげる」
「見せてあげるって何だ、その上から目線」
「たまには良いでしょ? いつも嗣治さんの方がえらそうだし」
「俺がいつえらそうに……」
「ほら、その感じが既にえらそう」
「……」
ブツブツと口の中で文句を言っている嗣治さんの背中を押してさっきまで作業をしていたリビングへ。テーブルの上で仲良く並んでいるのは巷で売っているジャックオーランタンとは一味違う、桃香特製ランタン。それを目にすると今度は楽しそうに笑った。
「これ、キーボ君か」
「そうなの。中でね蝋燭を灯すと1号君と2号君の目とお腹のあたりが光る感じになってるの」
「まったくモモ……」
エスポワールさんで作り方を教えてもらってから最初は普通のランタンを作ろうと思ってたんだよね。だけどスーパーで鹿ヶ谷カボチャを見た時にこれってキーボ君に何となく似てる?と思って思わず手がのびていた。芽衣さんにこれで作ってみたいって話したら面白いから作ったら是非とも写メしてねって言われているし。我ながらなかなか良く出来ていると思う。ちゃんと頭の上にはそれぞれの目印となるベレー帽だって乗せてあるし。
二体のキーボ君型のランタンをじっくりと眺めている嗣治さんの手にあるものに目がとまる。
「あれ、嗣治さん手に持ってるのって花?」
「え? なんかな、いきなり嫁に花ぐらい買っていけって花屋の奥さんに言われて何故か買う羽目に」
「エスポワールさん?」
「ああ。今日は家族そろってとうてつに昼飯を食いに来てたんだ。そこで何故か花の話になって。桃香、何か言ったのか?」
んー? 私はただカボチャの話をしただけだった筈なんだけど……。あ、フラワーボックスの話をしていた時にもしかしたら言ったかもしれない、お花をもらたことなんて無かったも~って。
「んーとね、もしかしたら言ったかも」
「それだ」
嗣治さんはそれを私に渡そうとして何か思いついたのか小さな花を二つ引き抜いた。
「綺麗だよ、ありがとう……で、嗣治さん」
「ん?」
「なんでランタンの上にさすの?」
小さな白い花をランタンのベレー帽のところにさしている。
「可愛いだろ?」
「……料理の盛り付けとか上手なのに何でお花だとそんなことするかな」
「まあ、キーボ君だからかな」
「ふう……」
私はお花を頭から生やしてニッコリ笑っているキーボ君を見て溜息をついてしまった。そんなわけで少し早いけど我が家にキーボ君の姿をしたジャックオーランタンが飾られることになったわけ。
+++
ちなみに鹿ケ谷カボチャのくり抜いた中身はと言えば、捨てることなくちゃんと嗣治さんがカボチャプリンを作ってくれました。
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「お帰り嗣治さん、これ見て~」
仕事を終えて自宅に戻った嗣治さんにプリントアウトとした紙をかざしてみせる。そこには黒い背景にちょっと怖い顔をしたオレンジ色のニャンコのイラスト。いつも私が作るニャンコのイラストとはちょっと趣が違うもの。
「ツグニャンとモモニャンに仮装させようと思ったんだけど上手くいかなくてね、改めて最初から作ってみたんだ」
「ハロウィン仕様なのか」
差し出した紙を手に取った嗣治さんは可笑しそうに笑みを口元に浮かべながらそれをジッと見詰めている。あ、まさかキャラ弁なんて考えてないよね?!
「そうだよ、可愛いでしょ?」
「休みの日にこんなことしてたらまた肩こりが酷くなるぞ。このまえ林整骨院に行ったばかりだろ?」
「それはそうなんだけどさ、せっかくハロウィンだし」
「まさかこれも職場で貼るのか?」
「プリントアウトしたのをマグネットシートに貼ってロッカーにくっつけるんだよ。他にもお化けとか作ったし」
何て言うか犯罪捜査という殺伐とした職場だから、こういうイベントの時ぐらいせめてロッカーぐらい明るくしたいなって思ったんだよね。
「それってもしかして税金?」
「ブーッ!! 自腹ですぅ、もしくは所長からせしめる」
「酷い部下だな、モモ」
「良いの、こういう楽しいことは所長も大好きだし、マグネットシートだってそんなに高価なものじゃないもん。それとプリントアウトはここでしていくし、備品で使うのはハサミぐらい」
これだってお昼休みとか仕事が始まる前に作業するからそれほど問題じゃないと思うんだ。去年まではそんなこと考える余裕も時間も体力も無かったんだけど、ここ暫くは赤ちゃんができたってことで仕事の量も減らしてもらってるし、せめてこういうことで気分を明るくすることで皆に恩返ししなきゃ。
「あまり根を詰めるなよ。お腹に赤ん坊がいるんだから」
「分かってるって」
「どうだか……分かってる人間は椅子に乗ったりしないよな」
「まだ蒸し返すかな……」
お休みの日にちょっと届かないところに仕舞い込んだ服を出そうとしていただけなのに、それを見つけた嗣治さんが大騒ぎして椅子から私を無理やり抱っこして引き離したのだ。別に前に言われたみたいに飛んだ跳ねたりしてないのに、ブツブツ……。
「モモに籐子さんの半分、いや四分の一ぐらいの妊婦としての自覚があればな」
「ちゃんと自覚してるもん」
「じゃあ何で俺がわざわざ禁止事項をメモ書きして冷蔵庫のドアに貼り付けなきゃいけないんだろうな」
「……それは」
「それは?」
「大皿を上の棚から出そうとしたからデス」
そんな訳で我が家の冷蔵庫には嗣治さん直筆の禁止事項が貼られている。もう幼稚園児じゃないんだからさあ……と抗議したけど私の抗議は丸っと無視された。剥がしたら二枚目は桜木茶舗の御隠居に書いてもらうからなという警告付きって考えてみるとちょっと酷いんじゃ?
「それと、エスポワールさんで作り方を教えてもらったハロウィン用のランタンを鹿ヶ谷カボチャで作ってみた」
「カボチャ?!」
またそんなに重たいものをって嗣治さんが怖い顔をしてくる。いやいや嗣治さん、普通のカボチャにしようと思っていたのを小さい鹿ヶ谷にしたんだよ? これなら二つだけ買ってきたら問題なさげだったし。そりゃ他にも色々と買ったから多少は荷物が重たくなったけどさ。
「本当はね、玄関に飾って蝋燭を入れて灯すまで嗣治さんには内緒にしておこうって思ってたんだけど、ちょうど出来上がったから見せてあげる」
「見せてあげるって何だ、その上から目線」
「たまには良いでしょ? いつも嗣治さんの方がえらそうだし」
「俺がいつえらそうに……」
「ほら、その感じが既にえらそう」
「……」
ブツブツと口の中で文句を言っている嗣治さんの背中を押してさっきまで作業をしていたリビングへ。テーブルの上で仲良く並んでいるのは巷で売っているジャックオーランタンとは一味違う、桃香特製ランタン。それを目にすると今度は楽しそうに笑った。
「これ、キーボ君か」
「そうなの。中でね蝋燭を灯すと1号君と2号君の目とお腹のあたりが光る感じになってるの」
「まったくモモ……」
エスポワールさんで作り方を教えてもらってから最初は普通のランタンを作ろうと思ってたんだよね。だけどスーパーで鹿ヶ谷カボチャを見た時にこれってキーボ君に何となく似てる?と思って思わず手がのびていた。芽衣さんにこれで作ってみたいって話したら面白いから作ったら是非とも写メしてねって言われているし。我ながらなかなか良く出来ていると思う。ちゃんと頭の上にはそれぞれの目印となるベレー帽だって乗せてあるし。
二体のキーボ君型のランタンをじっくりと眺めている嗣治さんの手にあるものに目がとまる。
「あれ、嗣治さん手に持ってるのって花?」
「え? なんかな、いきなり嫁に花ぐらい買っていけって花屋の奥さんに言われて何故か買う羽目に」
「エスポワールさん?」
「ああ。今日は家族そろってとうてつに昼飯を食いに来てたんだ。そこで何故か花の話になって。桃香、何か言ったのか?」
んー? 私はただカボチャの話をしただけだった筈なんだけど……。あ、フラワーボックスの話をしていた時にもしかしたら言ったかもしれない、お花をもらたことなんて無かったも~って。
「んーとね、もしかしたら言ったかも」
「それだ」
嗣治さんはそれを私に渡そうとして何か思いついたのか小さな花を二つ引き抜いた。
「綺麗だよ、ありがとう……で、嗣治さん」
「ん?」
「なんでランタンの上にさすの?」
小さな白い花をランタンのベレー帽のところにさしている。
「可愛いだろ?」
「……料理の盛り付けとか上手なのに何でお花だとそんなことするかな」
「まあ、キーボ君だからかな」
「ふう……」
私はお花を頭から生やしてニッコリ笑っているキーボ君を見て溜息をついてしまった。そんなわけで少し早いけど我が家にキーボ君の姿をしたジャックオーランタンが飾られることになったわけ。
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