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本編
第七話 霧島のターン?
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ドアが閉まると同時に、抱き寄せられて唇をふさがれた。ルームキーもバッグも足元に転がったけれど、私も霧島さんもそんなことはまったく気にならなくて、そのままお互いの舌を絡め合う。背中に回された彼の手が、滑るように腰の辺りまで下りてきて私の体を自分の方へと引き寄せると、服越しに熱く高まっているものが感じられて思わず息を呑んだ。
「さて先生、覚悟はいいかな? 俺はこんな状態だから、きっと手加減はしてやれないと思うぞ」
「それはこっちのセリフ」
「言ったな?」
霧島さんはニヤリと笑うと、私のことを抱き上げた。いつものような米俵みたいに運ぶのではなく、ちゃんとしたお姫様抱っこというやつだ。そしてそのままベッドまで運んでくれた、と思ったら、思いっ切り放り投げられてベッドの上で体がはずむ。
「ちょっと! 乱暴ね、私は荷物じゃないのよ! いつもいつも!!」
「だが意外と気に入ってるんだろ? 俺にこんな風に運ばれるのが」
ニヤニヤと私を見下ろしながらスーツの上着を脱ぎ捨てると、まるで豹のような素早さで飛びかかってきた。そして今度は噛みつくようなキス。気がつけば両足の間に霧島さんの下肢がおさまっていて、私の足が彼の腰を抱え込むような体勢になっていた。
「ねえ、どうして私がとった部屋にせずにこっちにしたの?」
キスの合間に質問をする。
宿泊予約のことでは私の勝ちを渋々ながらも認めた彼だったけれど、今夜使うのは自分のとった部屋にするべきだとかたくなに言い張った。部屋のランクがどうこうということではなく、あっちの部屋の方がここよりも上層階だし、眺めも良いのにって言ったのに、却下されてしまったのだ。
「女性議員がとった部屋に男が泊まったら問題だろ。いくらホテルマンの口が硬いからと言って、何処から漏れるか分からないからな。こっちなら少なくとも名前が出るのは俺だし、雑誌記者が張り込んで写真を撮らない限りは、一緒にいたのは謎の女性ですむ」
大臣付きのSPが女性とホテルに泊まったからと言って、どうのこうの騒ぐほど週刊誌もネタには困っていないだろうがと笑う。
「これでも用心して、母の旧姓を使わせてもらったんだけど、それでも駄目かしらね」
「別人に成りすますには、君の顔は知られすぎているよ」
「あら残念」
そう呟いてから両手で霧島さんの体を押し返すと、そのまま彼をベッドに押し倒した。そして今度は私が上になる。腰の辺りにまたがると、自分が少しだけ優位になれた気がして、ニッコリと微笑んで彼を見下ろした。
「おい、まさか油断させるつもりで今の質問をしたのか?」
「まさか。本当に気になっていたから質問したのよ。体勢を引っ繰り返されたのは、単に貴方が油断しただけ」
そう言いながら、明後日の方向に曲がってしまっている霧島さんのネクタイをスルリと引き抜いた。それからあることに気がついて、彼の顔に自分の顔を近付ける。
「ねえ……」
「今度はなんだ」
「もしかしてこれって、ダテなの?」
霧島さんのトレードマークである銀縁眼鏡。奪い取ってレンズを覗き込むと、やはり度が入っていない。
「SPになるぐらいだから視力は悪くないはずだとは思っていたけど、まさかダテ眼鏡君だったとは。どうしてダテ眼鏡なんてしてるの?」
「……今それを聞くのか?」
「聞いたら駄目なの?」
首をかしげて尋ねる。
「こんな状態なのに?」
霧島さんは私の手を取って、少しばかり盛り上がっているズボンの前立てのところに押しつけた。
「そうね、話したくないなら話さなくても良いわよ?」
「…………」
何とも言えない顔で私のことをしばらく見つめていた彼は、観念したように大きな溜め息をついた。
「上司に言われたんだ。お前は目つきが悪い。嫌がる議員もいるから、インテリ風の眼鏡をしてその極悪な目つきを隠せって」
「でも眼鏡をかけていても十分に目つきは悪いわよ? 全然隠せてないと思うんだけど」
「ほっとけ。とにかくそういう些細なことで文句を言う議員っていうのは、往々にして厄介な問題を起こすから付け入る隙を与えるなって意味なんだよ」
「なるほど。ねえ、せっかくならこんな銀縁じゃなくて、もっとお洒落な眼鏡にしない? 新しい眼鏡にするなら、一緒に選んであげるわよ?」
「遠慮しておく。君達みたいな金持ちが選ぶフレームなんて、馬鹿みたいに高いに決まってるんだからな」
「失礼ね、ちゃんと普通に選ぶわよ」
「どうだか」
フンと鼻を鳴らすといきなり起き上がって、再び私のことをベッドに押し付けた。
「ちょっと!」
「油断した君が悪い。さあお喋りはおしまいだ先生。ここからは俺のターン。ルームキーで取られたポイントは、きっちり取り戻させてもらうからな」
霧島さんはそう宣言すると、私が着ている服を有無を言わさずはぎ取っていき、それと同時に体のあちこちに濡れたキスを残していく。そんな中でブラウスのボタンがいくつか飛んだ気がするんだけど、気のせいかしら?
「ほお。まさかいつもツンツンしている議員先生が、こんなに可愛い下着をつけているとはな」
スカートがベッドの向こう側に消えて身に着けているのは下着だけになると、サイドがリボンになっているショーツに気づいた霧島さんがニンマリと笑った。今夜のためにとブラとお揃いのお気に入りを選んだから、彼が気に入ってくれたのなら嬉しい。
だけど!
「私はツンツンなんてしてない」
「そうか?」
リボンがほどけてサテンの布切れが取り去られたのを感じた。そしてブラも取り除かれ、彼の背後へと放り投げられて消えていく。
「いやはや参った、今度から君を見るたびに困ったことになりそうだな」
「私はツンツンなんてしていません」
「分かった分かった、君はツンツンはしてない」
「今の全然気持ちがこもって……っぅんっ……」
長い指が下腹部をなぞったかと思ったら、胎内に滑り込んできてゆっくりと探るように蠢く。私が体を硬くしたのが分かったのか、探るようにして動かしていた手を止めた。
「……まさか初めて?」
その問い掛けに顔が赤くなるのが分かった。
「そんな訳ないでしょ! その、ちょっと久し振りで緊張してるだけ……」
「どれぐらい?」
「それを今ここで聞くの?」
「君は眼鏡のことを聞いただろ。これでお互い様だ」
まったくこの男ときたら!
「……大学生の頃以来」
「何年生だった?」
「そんなの覚えてる訳ないでしょ?!」
「ん? なんだって?」
指が二本になり太さを増した状態で体の奥へと入り込むと、探るような動きを再開した。
「っ……二年生!!」
「ってことは、それから誰とも付き合っていないということか」
「なによ、ご不満?」
「いや。久方ぶりの男女のお付き合いの相手に、俺を選んでくれて光栄だと言っておこうか」
男独特の満足げな笑みを浮かべている。
「それより貴方、私を裸にしておいて自分だけまだ服を着ているなんて、ズルいわよ」
私が脱がせてあげると言って体を起こそうとすると、あいている方の手で肩を押さえつけた。
「それはまた今度ってことで。今は少しでも早く君の中に早く入りたい」
そう言うと私のことを探っていた指が引き抜かれ、霧島さんは素早く服を脱ぎ捨てた。服の下から現れた逞しい肉体と彼自身を見て思わず「わおっ」と呟いてしまう。
「しっかり鍛えているのね」
「ブクブクの体ではいざという時に動けないからな」
「そっちは鍛えてるかどうか分からないけど」
そう言って下の方に視線をおろしていく。見たところお元気そうではあるけれど、本当のところはどうだろう。
「それはこれから証明する」
そして私達は、部屋に入ってきた時と同じようにお互いの唇を食みながら、これ以上は無いぐらい親密な形で体を触れ合わせた。指でほぐされしっとりと濡れ始めている場所に、熱くて硬いものが押し当てられる。
「痛かったら言ってくれ」
押しつけてくる力が強くなって、霧島さんのものが少しだけ私の中に入り込んだところで、彼は一旦動きを止めると、彼の頭の後ろに回していた私の手を取って、てのひらにキスを一つ落とした。意外な行動に首をかしげて、彼の顔を見つめる。
「手加減はできないって言ってなかった?」
「努力だけはする」
霧島さんはいたって真面目な顔でそう答えると、その熱くて硬いもので私の体を一気に貫いた。久し振りのことなのに、そこは痛みを感じるどころか嬉々として霧島さんのものを受け入れた。そしてしっかりとお互いの体が結び合うと、自然と満足げな溜め息が口からもれる。押し広げられた体の奥で彼の鼓動が感じられた。
「大丈夫か?」
「ええ。凄く満たされている感じよ。貴方は?」
「君がこれほど女性らしい一面を持っているとは意外だった」
「どういう意味?」
「どこもかしこも熱くて柔らかい」
そう言うと、霧島さんはゆっくりと腰を動かし始める。ゆっくりと引いていったと思えば力強く入り込んできて奥を突き上げた。一番深いところを強く突かれるたびに、痛みと快感が混ざりあったようなような感覚が襲い掛かってきて、思わず体を反らして声をあげてしまった。
「痛かったか?」
心配そうな声で霧島さんが覗き込んでくる。
「ううん、そんなことないわ。深く貴方と繋がっていることが実感できて素敵。もっとして」
そう言いながら彼の腰に足を絡めた。霧島さんは本当に大丈夫か?と言いたげな顔をして私を見下ろした。
「まさかもう終わりってことじゃないわよね?」
首をかしげながら見上げる私の言葉に、彼はニヤッと笑みを浮かべる。
「もっと激しいのをお望みらしいな、俺の先生は」
「私を満足させてくれるんでしょう?」
「お望みとあらば?」
「じゃあやってみて」
そして私は明け方近くまで、彼の激しい激情に翻弄されることになった。
+++++
何処かでスマホの目覚ましが鳴っている。この曲は間違いなく私のスマホだ。
そう言えば、ドアの辺りでバッグが足元に転がったような気がする。ってことは、あそこまで取りに行かなきゃいけないってこと。だけど分かっていても動きたくない。それは私の横でまだ眠っている人も御同様の様子で、チラリと顔を覗き込んでみればアラームの音は耳に入っているらしく、煩そうに顔をしかめていた。
「貴方のシャツ、借りるわね」
「……どうぞ」
脱ぎ捨てられていた霧島さんのシャツを羽織ると、ふらつきながらドア前に急いだ。そしてバッグを拾い上げ、中でうるさく鳴っているアラーム音を切る。
「ねえ。私、出掛ける準備をしなきゃいけないから、先にシャワーを浴びても良いかしら?」
「ああ、かまわない」
部屋をのぞけば、霧島さんがベッドでのびをしているところだった。昨日は豹みたいだって思ったけれど、今朝は満腹状態で満足し切っている大きな猫のようだ。
そしてシャワーを浴びてから、盛大につけられたキスマークや咬み痕のことより、もっと重要で深刻な問題に直面した。
「やっぱりブラウスのボタンが飛んでる……」
ベッドに座って、散らばっていた服を拾い上げてブラウスを確認すれば、案の定いくつかのボタンが消えている。
「これじゃあ、ここから出ることすらできないじゃない。まったくボタンのことは想定外だった」
「すまないな」
横で物憂げな感じで寝そべっている霧島さんが、謝罪の言葉を口にした。だけど絶対に悪いことをしたとは思っていないわよね、その口調。
「まったく……|杉下《すぎした」さんに持ってきてもらうように頼まなきゃ」
ぼやきながらスマホを手にすると、その手を霧島さんが素早い動きでつかんだ。
「彼女はこのことを知っているのか?」
「このことって?」
「君が俺とホテルに泊まったこと」
「杉下さんに断りもなくトンズラするのはよせって言ったのは貴方でしょ? ちゃんと言ってあるわよ、その、具体的にってわけじゃないけど」
……まあ言わなくても察するわよね。
つかんでいた手が離れたので、さっそく彼女の電話番号を呼び出してタップする。時間は既に七時。今日は午後からの予定だから十時頃に迎えに来てもらう予定だったけれど、変更しなければ。
『はい、杉下です。どうされました?』
電話に出た杉下さんの声はいつもの爽やかな声。寝起きではなく、既に活動を開始している人の声だ。
「ゆっくりできる日なのにごめんなさいね。ちょっとお願いがあるんだけれど、良いかしら?」
『かまいませんよ。あと三十分ほどしたら出られますから』
電話の向こうで旦那さんの声が聞こえてくる。子供達のことは大丈夫だからって言っているようだ。
『訂正です、すぐに出られます』
「そんなに急がなくてもかまわないから。レグネンスホテルの……708号室にね、着替えを持ってきてほしいの。ううん、予備のバッグに用意してあるのがあったでしょ? あれで良いわ、あとはこっちにあるから」
『昨晩とられた部屋は1105室でしたよね?』
そうなのよね、彼女がしっかり覚えていているだろうとは思ってた。
「えーと、ちょっとした予定変更があって。その部屋で、大きな猫がおいたをしてブラウスのボタンが飛んじゃったのよ」
『……ああ、そういうことですか。わかりました、九時三十分にはそちらに伺います、それでよろしいですか?』
「うん。お願いします」
少し予定を前倒ししたのは、恐らく私がとった部屋に置いてある着替えを回収するためだ。
「次からはボタンを飛ばすようなことはしないと約束してくれないと、こういうとは二度と無いわよ」
電話を切ってから、寝そべったまま私を見上げている霧島さんに怖い顔をしてみせる。
「善処する」
「ちょっと! 真面目に言っているのよ私」
「惚れた相手を抱く時に、そこまで気にしていられるほど俺は器用じゃないからな」
そう言って満足げにニヤリと笑うだけだった。
「さて先生、覚悟はいいかな? 俺はこんな状態だから、きっと手加減はしてやれないと思うぞ」
「それはこっちのセリフ」
「言ったな?」
霧島さんはニヤリと笑うと、私のことを抱き上げた。いつものような米俵みたいに運ぶのではなく、ちゃんとしたお姫様抱っこというやつだ。そしてそのままベッドまで運んでくれた、と思ったら、思いっ切り放り投げられてベッドの上で体がはずむ。
「ちょっと! 乱暴ね、私は荷物じゃないのよ! いつもいつも!!」
「だが意外と気に入ってるんだろ? 俺にこんな風に運ばれるのが」
ニヤニヤと私を見下ろしながらスーツの上着を脱ぎ捨てると、まるで豹のような素早さで飛びかかってきた。そして今度は噛みつくようなキス。気がつけば両足の間に霧島さんの下肢がおさまっていて、私の足が彼の腰を抱え込むような体勢になっていた。
「ねえ、どうして私がとった部屋にせずにこっちにしたの?」
キスの合間に質問をする。
宿泊予約のことでは私の勝ちを渋々ながらも認めた彼だったけれど、今夜使うのは自分のとった部屋にするべきだとかたくなに言い張った。部屋のランクがどうこうということではなく、あっちの部屋の方がここよりも上層階だし、眺めも良いのにって言ったのに、却下されてしまったのだ。
「女性議員がとった部屋に男が泊まったら問題だろ。いくらホテルマンの口が硬いからと言って、何処から漏れるか分からないからな。こっちなら少なくとも名前が出るのは俺だし、雑誌記者が張り込んで写真を撮らない限りは、一緒にいたのは謎の女性ですむ」
大臣付きのSPが女性とホテルに泊まったからと言って、どうのこうの騒ぐほど週刊誌もネタには困っていないだろうがと笑う。
「これでも用心して、母の旧姓を使わせてもらったんだけど、それでも駄目かしらね」
「別人に成りすますには、君の顔は知られすぎているよ」
「あら残念」
そう呟いてから両手で霧島さんの体を押し返すと、そのまま彼をベッドに押し倒した。そして今度は私が上になる。腰の辺りにまたがると、自分が少しだけ優位になれた気がして、ニッコリと微笑んで彼を見下ろした。
「おい、まさか油断させるつもりで今の質問をしたのか?」
「まさか。本当に気になっていたから質問したのよ。体勢を引っ繰り返されたのは、単に貴方が油断しただけ」
そう言いながら、明後日の方向に曲がってしまっている霧島さんのネクタイをスルリと引き抜いた。それからあることに気がついて、彼の顔に自分の顔を近付ける。
「ねえ……」
「今度はなんだ」
「もしかしてこれって、ダテなの?」
霧島さんのトレードマークである銀縁眼鏡。奪い取ってレンズを覗き込むと、やはり度が入っていない。
「SPになるぐらいだから視力は悪くないはずだとは思っていたけど、まさかダテ眼鏡君だったとは。どうしてダテ眼鏡なんてしてるの?」
「……今それを聞くのか?」
「聞いたら駄目なの?」
首をかしげて尋ねる。
「こんな状態なのに?」
霧島さんは私の手を取って、少しばかり盛り上がっているズボンの前立てのところに押しつけた。
「そうね、話したくないなら話さなくても良いわよ?」
「…………」
何とも言えない顔で私のことをしばらく見つめていた彼は、観念したように大きな溜め息をついた。
「上司に言われたんだ。お前は目つきが悪い。嫌がる議員もいるから、インテリ風の眼鏡をしてその極悪な目つきを隠せって」
「でも眼鏡をかけていても十分に目つきは悪いわよ? 全然隠せてないと思うんだけど」
「ほっとけ。とにかくそういう些細なことで文句を言う議員っていうのは、往々にして厄介な問題を起こすから付け入る隙を与えるなって意味なんだよ」
「なるほど。ねえ、せっかくならこんな銀縁じゃなくて、もっとお洒落な眼鏡にしない? 新しい眼鏡にするなら、一緒に選んであげるわよ?」
「遠慮しておく。君達みたいな金持ちが選ぶフレームなんて、馬鹿みたいに高いに決まってるんだからな」
「失礼ね、ちゃんと普通に選ぶわよ」
「どうだか」
フンと鼻を鳴らすといきなり起き上がって、再び私のことをベッドに押し付けた。
「ちょっと!」
「油断した君が悪い。さあお喋りはおしまいだ先生。ここからは俺のターン。ルームキーで取られたポイントは、きっちり取り戻させてもらうからな」
霧島さんはそう宣言すると、私が着ている服を有無を言わさずはぎ取っていき、それと同時に体のあちこちに濡れたキスを残していく。そんな中でブラウスのボタンがいくつか飛んだ気がするんだけど、気のせいかしら?
「ほお。まさかいつもツンツンしている議員先生が、こんなに可愛い下着をつけているとはな」
スカートがベッドの向こう側に消えて身に着けているのは下着だけになると、サイドがリボンになっているショーツに気づいた霧島さんがニンマリと笑った。今夜のためにとブラとお揃いのお気に入りを選んだから、彼が気に入ってくれたのなら嬉しい。
だけど!
「私はツンツンなんてしてない」
「そうか?」
リボンがほどけてサテンの布切れが取り去られたのを感じた。そしてブラも取り除かれ、彼の背後へと放り投げられて消えていく。
「いやはや参った、今度から君を見るたびに困ったことになりそうだな」
「私はツンツンなんてしていません」
「分かった分かった、君はツンツンはしてない」
「今の全然気持ちがこもって……っぅんっ……」
長い指が下腹部をなぞったかと思ったら、胎内に滑り込んできてゆっくりと探るように蠢く。私が体を硬くしたのが分かったのか、探るようにして動かしていた手を止めた。
「……まさか初めて?」
その問い掛けに顔が赤くなるのが分かった。
「そんな訳ないでしょ! その、ちょっと久し振りで緊張してるだけ……」
「どれぐらい?」
「それを今ここで聞くの?」
「君は眼鏡のことを聞いただろ。これでお互い様だ」
まったくこの男ときたら!
「……大学生の頃以来」
「何年生だった?」
「そんなの覚えてる訳ないでしょ?!」
「ん? なんだって?」
指が二本になり太さを増した状態で体の奥へと入り込むと、探るような動きを再開した。
「っ……二年生!!」
「ってことは、それから誰とも付き合っていないということか」
「なによ、ご不満?」
「いや。久方ぶりの男女のお付き合いの相手に、俺を選んでくれて光栄だと言っておこうか」
男独特の満足げな笑みを浮かべている。
「それより貴方、私を裸にしておいて自分だけまだ服を着ているなんて、ズルいわよ」
私が脱がせてあげると言って体を起こそうとすると、あいている方の手で肩を押さえつけた。
「それはまた今度ってことで。今は少しでも早く君の中に早く入りたい」
そう言うと私のことを探っていた指が引き抜かれ、霧島さんは素早く服を脱ぎ捨てた。服の下から現れた逞しい肉体と彼自身を見て思わず「わおっ」と呟いてしまう。
「しっかり鍛えているのね」
「ブクブクの体ではいざという時に動けないからな」
「そっちは鍛えてるかどうか分からないけど」
そう言って下の方に視線をおろしていく。見たところお元気そうではあるけれど、本当のところはどうだろう。
「それはこれから証明する」
そして私達は、部屋に入ってきた時と同じようにお互いの唇を食みながら、これ以上は無いぐらい親密な形で体を触れ合わせた。指でほぐされしっとりと濡れ始めている場所に、熱くて硬いものが押し当てられる。
「痛かったら言ってくれ」
押しつけてくる力が強くなって、霧島さんのものが少しだけ私の中に入り込んだところで、彼は一旦動きを止めると、彼の頭の後ろに回していた私の手を取って、てのひらにキスを一つ落とした。意外な行動に首をかしげて、彼の顔を見つめる。
「手加減はできないって言ってなかった?」
「努力だけはする」
霧島さんはいたって真面目な顔でそう答えると、その熱くて硬いもので私の体を一気に貫いた。久し振りのことなのに、そこは痛みを感じるどころか嬉々として霧島さんのものを受け入れた。そしてしっかりとお互いの体が結び合うと、自然と満足げな溜め息が口からもれる。押し広げられた体の奥で彼の鼓動が感じられた。
「大丈夫か?」
「ええ。凄く満たされている感じよ。貴方は?」
「君がこれほど女性らしい一面を持っているとは意外だった」
「どういう意味?」
「どこもかしこも熱くて柔らかい」
そう言うと、霧島さんはゆっくりと腰を動かし始める。ゆっくりと引いていったと思えば力強く入り込んできて奥を突き上げた。一番深いところを強く突かれるたびに、痛みと快感が混ざりあったようなような感覚が襲い掛かってきて、思わず体を反らして声をあげてしまった。
「痛かったか?」
心配そうな声で霧島さんが覗き込んでくる。
「ううん、そんなことないわ。深く貴方と繋がっていることが実感できて素敵。もっとして」
そう言いながら彼の腰に足を絡めた。霧島さんは本当に大丈夫か?と言いたげな顔をして私を見下ろした。
「まさかもう終わりってことじゃないわよね?」
首をかしげながら見上げる私の言葉に、彼はニヤッと笑みを浮かべる。
「もっと激しいのをお望みらしいな、俺の先生は」
「私を満足させてくれるんでしょう?」
「お望みとあらば?」
「じゃあやってみて」
そして私は明け方近くまで、彼の激しい激情に翻弄されることになった。
+++++
何処かでスマホの目覚ましが鳴っている。この曲は間違いなく私のスマホだ。
そう言えば、ドアの辺りでバッグが足元に転がったような気がする。ってことは、あそこまで取りに行かなきゃいけないってこと。だけど分かっていても動きたくない。それは私の横でまだ眠っている人も御同様の様子で、チラリと顔を覗き込んでみればアラームの音は耳に入っているらしく、煩そうに顔をしかめていた。
「貴方のシャツ、借りるわね」
「……どうぞ」
脱ぎ捨てられていた霧島さんのシャツを羽織ると、ふらつきながらドア前に急いだ。そしてバッグを拾い上げ、中でうるさく鳴っているアラーム音を切る。
「ねえ。私、出掛ける準備をしなきゃいけないから、先にシャワーを浴びても良いかしら?」
「ああ、かまわない」
部屋をのぞけば、霧島さんがベッドでのびをしているところだった。昨日は豹みたいだって思ったけれど、今朝は満腹状態で満足し切っている大きな猫のようだ。
そしてシャワーを浴びてから、盛大につけられたキスマークや咬み痕のことより、もっと重要で深刻な問題に直面した。
「やっぱりブラウスのボタンが飛んでる……」
ベッドに座って、散らばっていた服を拾い上げてブラウスを確認すれば、案の定いくつかのボタンが消えている。
「これじゃあ、ここから出ることすらできないじゃない。まったくボタンのことは想定外だった」
「すまないな」
横で物憂げな感じで寝そべっている霧島さんが、謝罪の言葉を口にした。だけど絶対に悪いことをしたとは思っていないわよね、その口調。
「まったく……|杉下《すぎした」さんに持ってきてもらうように頼まなきゃ」
ぼやきながらスマホを手にすると、その手を霧島さんが素早い動きでつかんだ。
「彼女はこのことを知っているのか?」
「このことって?」
「君が俺とホテルに泊まったこと」
「杉下さんに断りもなくトンズラするのはよせって言ったのは貴方でしょ? ちゃんと言ってあるわよ、その、具体的にってわけじゃないけど」
……まあ言わなくても察するわよね。
つかんでいた手が離れたので、さっそく彼女の電話番号を呼び出してタップする。時間は既に七時。今日は午後からの予定だから十時頃に迎えに来てもらう予定だったけれど、変更しなければ。
『はい、杉下です。どうされました?』
電話に出た杉下さんの声はいつもの爽やかな声。寝起きではなく、既に活動を開始している人の声だ。
「ゆっくりできる日なのにごめんなさいね。ちょっとお願いがあるんだけれど、良いかしら?」
『かまいませんよ。あと三十分ほどしたら出られますから』
電話の向こうで旦那さんの声が聞こえてくる。子供達のことは大丈夫だからって言っているようだ。
『訂正です、すぐに出られます』
「そんなに急がなくてもかまわないから。レグネンスホテルの……708号室にね、着替えを持ってきてほしいの。ううん、予備のバッグに用意してあるのがあったでしょ? あれで良いわ、あとはこっちにあるから」
『昨晩とられた部屋は1105室でしたよね?』
そうなのよね、彼女がしっかり覚えていているだろうとは思ってた。
「えーと、ちょっとした予定変更があって。その部屋で、大きな猫がおいたをしてブラウスのボタンが飛んじゃったのよ」
『……ああ、そういうことですか。わかりました、九時三十分にはそちらに伺います、それでよろしいですか?』
「うん。お願いします」
少し予定を前倒ししたのは、恐らく私がとった部屋に置いてある着替えを回収するためだ。
「次からはボタンを飛ばすようなことはしないと約束してくれないと、こういうとは二度と無いわよ」
電話を切ってから、寝そべったまま私を見上げている霧島さんに怖い顔をしてみせる。
「善処する」
「ちょっと! 真面目に言っているのよ私」
「惚れた相手を抱く時に、そこまで気にしていられるほど俺は器用じゃないからな」
そう言って満足げにニヤリと笑うだけだった。
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