橘瑞樹の一生〜機械とエーテル、スチームパンクなエルヴァニアで過ごした一世紀〜

Coppélia

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第1章、異世界と私

第12話:会話する街と優しいトゲバナ

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『pppp.....』「‥う、うう?」『BBBB.....』「橘さん、おはようございます。起きてください!」「ううう、ん?」「布団を被り直さないで、起きて!」

朝日がカーテン越しに差し込み、クロックタウンの街全体がエーテルの光を浴びて柔らかな緑色に輝いていた。

新しい生活を迎えるため、少ない荷物を小さなバックに詰めていると、リリーが笑顔で迎えに来てくれた。

「今日は引越し日和ですね」とリリーは、窓から差し込む光を浴びながら、まるで花が開くような笑顔を浮かべて話しかけてくる。

私も笑顔で返そうとしたが、昨日の夜に見たアザミ、病院の前で、微かに緑色に発光していたあの花—アザミの警告という言葉が脳裏をよぎった。

「そういえば、昨日見たアザミの花ですが、あれは本当にただの迷信なんですか?」
「え?」
「ほら、エーテルは生命エネルギーなら、もしかしたら、何かあるとか」

リリーは少し考え込む。「私たちの技術でも、エーテルがもたらすすべてを解明していませんが、天空の城が近づいた影響かもしれませんね」

「天空の城……」

遠く空にかすかに浮かんで見える影。天空の城と呼ばれるその存在は、私のいた地球ではありえない光景であり、どこか神秘的な存在感を放っている。冒険心をそそられるが、今の私には手の届かない場所だ。

「天空の城が近くを通ると、エーテルの動きも変化します。そうなると街全体に影響が出ることがあるんです。普段は見られない現象が起きることもありますし、エーテルが活性化して植物や花々が反応することもあるんです」とリリーは続ける。

病院を出て新居へと向かう道すがら、頭の中でエーテルや天空の城、そして発光するアザミのことを巡らせる。空を見上げると、遠くに浮かぶその城が、確かに自分が異世界にいることを改めて感じさせた。

新居に着くと、リリーが玄関先で振り返り、「これで橘さんも、この街の一員ですね」と優しく微笑む。

新居はクロックタウンの街の中心にもアクセスしやすい場所にあり、必要なエーテルギアもすでに整っていた。リリーに改めて礼を言う。

「何か困ったことがあれば、いつでも声をかけてくださいね」

何もわからないままに異世界へと放り出されたが、こうして誰かに支えられていることに感謝の気持ちでいっぱいになる。

新居の準備を終え、リリーと一緒に昼食を取りに街へと向かうと、エーテルの光に照らされた花々がまるで街全体を守るかのように咲き誇っている。

「まだあまり説明していませんが、エーテルには各々「質」があります。個性みたいなもので、例えばアザミの花のエーテルを加工すると変化に敏感になります。あのアザミの花は街が私たちに話しかけてくれているのかもしれません」とリリーが教えてくれた。

小さな花、僅かなエーテル。この街での日々が、きっと私に新たな発見や経験をもたらしてくれるだろう。

静かな街並みに心が落ち着くと同時に、微かに不安も感じていた。天空の城の影響がどこまで及ぶのか、そして昨日のアザミの警告は本当に迷信にすぎないのか——そう思いつつも、新しい生活が始まる期待に笑顔と興奮が抑えきれなかった。
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