橘瑞樹の一生〜機械とエーテル、スチームパンクなエルヴァニアで過ごした一世紀〜

Coppélia

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第1章、異世界と私

第18話:探査開始

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「実は、記憶ないんです。クロッカスの花の近くで死んだらしく、そのときに土地のエーテルが増す天空の城が近くにきていたので魔族になったみたいです」
見た目がゴジラみたいなクロッカスの魔人とか、事実は小説よりも奇なり。リョウは美男ではないが味のある顔だった。

「それは、すごく神秘的ですね。」私は感心しながらリョウの話を聞いていたが「あ、橘さん!」「え?うわっ!」「大丈夫ですか?」「あ、ありがとう、リリー。すいません、足元が疎かでした」。思わぬラッキーすけべに顔を引き締める。ここは笑ってはいけない。

「ここが最初のポイントです。」リョウが指示した場所で、ギアを起動させた。微かな澄んだ音が広がっていく。

「なんかいますね?」
「確かに、エーテル濃度が濃い場所が移動している?リョウさんはなぜ?」
「ああ、私はクロッカスなんで水に敏感なんですよ。空気感でなんとなくわかります」
「あ。あれ!」

視界の先に神々しい鹿がいた。その姿はまるで智大大蔵の守り神のように、美しく力強かった。

声も出ないでいる私たちを鹿は見つめ返していた。これは、やるしかない。そっとチョーカーを起動させた。

『見知らぬ気配だからと来てみれば。まあいい。おい、若いの。そのサンドイッチを置いていけ。代わりにいいこと教えてやる』

「ここは、この鹿の縄張りかな?だからギアに反応してやってきたのかな」そっと、リョウが言った。
「あの、サンドイッチくれたら、いいこと教えてくれるそうです。私のサンドイッチ、あげていいですか?」
「え?まさか、小動物翻訳機?」

驚いたリリーの呟きに、ニマニマしてしまうが、とりあえず、サンドイッチを置いて、後退した。

『ふむ。やはりたまは人の食べ物もいいな。この前の嵐の夜か、少し離れた山から手負いの熊がこの辺りに来て、鉱山の方に向かった。お前さんたち、気をつけろよ』

「ありがとうございます」
「鹿さんはなんと?」
「手負いの熊が鉱山に向かったから気をつけて、と」
「まずいな。鉱山地区ではエーテル濃度の異常が報告されており、操業を休んでるんだ」
「急ぎましょう」

鉱山近くまでくると、智大大蔵のメンバーが傷ついた木を発見した。

「こりゃ、熊だな」「熊ですか?」「ああ、まずいかもな」

さらに鉱山に近づくと、空気が重く感じられ、周囲には不安な雰囲気が漂っている。私は直感的に何かが起こる予感を感じた。

「ここは……何かおかしい。」

リョウも警戒しながら、周囲を見渡していた。「これは鹿の助言は、当たりかな?」

鉱山入り口で、私はギアを起動した。まだ入り口が見える場所で、突然、遠吠えのような声が響き渡り、思わず立ち止まる。

「これは……熊の声だ。」リョウが耳を澄ませながら言った。

明かりをつけ、周囲を探ると、壁に爪痕があり、最近ここに熊がいたことを示していた。「どうやら熊が死んで魔物化したようだね」。先遣隊のリーダーは壁際の古い糞からそう判断した。

「今は撤退した方が良さそうだ。」
「はい。一度、街に戻りましょう。この流れなら熊の魔物化がこの異常を引き起こした可能性が高いです。熊の魔物を解決して、それから残りを確認してほうが効率的です」。リリーがそういうと、みな、うなづいた。

「橘さん、大活躍でしたね」

街につき、リリーにそう言われて、私はミントの香りがすることを思い出した。
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