忘却のバイカー

bigboss

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チャプター1

悪夢からの非業

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ここは、とある世界のとある海岸線。アスファルトで舗装された道に向こうとは明らかに違う輝きを放つ海。

 その時ある二人の男女の生が終わった。一方は久しぶりにバイクで走り冷たい風に当たろうとして。もう一方は友達との約束を守って遅くなりきれいな海を見ようとバイクにまたがっていた。
 両者の進む信号は互い違いになるはずであった。だが、その時の信号は巨大な世界のはたらく力の影響でLED電球の信号の色がすべて青になっていた。彼らは巨大な力の作った悪意に彼らは時速六〇キロで縦横に迫っていた。
 彼らがそれぞれの存在に気づき互いのブレーキを稼働させ両者は危機を回避しようとする。ゴム製のタイヤは煙を上げながらスリップを起こし、互いの存在を避けようとする。
 彼らが目を開けた時、それは衝突しようとした相手が目に入った。その時の二人はため息の声を上げた。そう、その時に悪意の仕掛けた保険が二人に迫っていたことを予想できなかった。
 女の子の横を巨大なパイプを積んだトラックが横切る。積み荷のパイプは重量移動に耐え切れずワイヤーが破断し二人に転がり込んだ。
 その瞬間二人の意識は映像が切れたテレビのように途絶えた。
 あとに残されたのは、全身が赤と小麦色が入り交じり、アスファルトに赤い川が流れ出た二つの抜け殻と荷崩れを起こして踏みつぶされ火炎の業火を起こしていた二つのバイクだったものがそこに横たわっていた。
 「え、な、なんだこれ。」
 「いったい何がどうなってるの。」
 二人は不可思議な体験を起こしていた。確か自分はぶつかりそうになっって急ブレーキをかけて、縦横に衝突を回避したかと思ったら横を通り過ぎたトラックから荷物が崩れてきて……。そこから先の記憶が全く思い出せなかった。気が付くと二人はお互いに見合っていた。最初の時は互いの無事を確認しあったがそれと同時におかしなことに気が付いた。本来自分達は事故に巻き込まれたはずなのに傷一つないことに気が付いたのである。しかも自分達は立っている、どういうことであろうか。二人が詮索をしているとトラックやパトカーが集まってきた。よかった、自分達を心配してくれたのか二人は安どの声を上げようとした。しかしどういうわけか自分達を素通りして、トラックの方向に向かっていく。いったい何考えているのだろうか、自分はここにいるのだろ、なんで私たちを心配しないの。ひょっとして私たちのほかにけが人がいるのか、
 
「なあ、これって。」
「う、嘘……。」
 二人はその人混みの足元から見える光景に言葉を失う。そこに倒れていたのは紛れもなく自分たち自身であった。しかも明らかに血だらけで生きているのか死んでいるのかすらわからないような状況で、二人はあまりの事態に半狂乱になった。彼らはその時初めて自分が置かれている事態に気づいたのだ。
 鵜足がパニックを起こしていると救急車がサイレンを鳴らして現場で止まった。後部のドアを開けて救急隊員が出てきて担架を引き出した。よかった、これで俺達は助かるその時の二人はそう思った。その瞬間二人は背後か何かに捕まえられ、動けなくなった。二人が振り向くとそこに巨大な黒い穴ができていて、そこから巨大な手が伸びてきて二人を引きずり込もうとする。二人は泣きべそをかきながら必死で抜け出そうとする。だが二人捕まえた二つの手はその悪意ともとれるどす黒いオーラを身にまとい引きずり込もうとする。
「は、放しやがれ。」
「い、いやだ死にたくない。」
 二人は必死に生への門に対する執着の言葉とあふれ出る涙と氷見の声を上げる。その声をあざ笑うかのように闇の手は引きずり込んでいった。

「……坊ちゃま、お嬢様、大丈夫ですか。」
 その声は闇から響いてきたのはその時であった。二人が目を開けるとそこはいつも見慣れた気品あふれる部屋であった。二人は目を大きく見開き、上半身を直立不動にして起き上がった。二人は自分達の額を擦った。それは凄まじい量の寝汗であった。二人は別途から起きると、豪華な開閉扉を開けた。そこには美形で長身の黒い服を着た青年執事が笑みを作って立っていた。
「アルフェルド、済まないまた悪い夢を見てしまってね。」
 女の子のマリーン・セルフィは眠い目を擦って、アルフェルドの持ってきた二つのコップのうちの一つを掴み中に入れてあった硬水を一気に流し込んだ。
「坊ちゃまも同様ですか。」
「ああ、俺達の夢はいつも同じで困るんだ。いくら俺達は双子だからっていい迷惑だよ。」
 男の子のウォルフセルフィも頭を抱え込みながら口走る。
「まあ、夢は夢です、いやな夢ほど忘れるのに限りますね。」
 そういってアルフェルドはコップをウォルフに差し出した。ウォルフはそれを手に取ると一気に中のものを流し込んだ。
「さあ、二人とも、早く着替えてください。出ないと学校に遅れますよ。」
 そういってアルフェルドは扉を閉めた。それを見計らった二人は近くの壁に立てかけてあった鏡に目を移した。そこには生まれた時から見慣れた自分達の姿があった。
 ウォルフ、マリーンのセルフィ兄妹はともに帝国で多少の影響力を持った貴族セルフィ家の家長であった。身長はともに帝国の兵器より少し高い程度の身長に見た目は細身の体で陶器のような透き通る肌にプラチナの髪に紫の切れ長の目を持った美形の兄妹であった。
 文武ともに突出はせずとも非凡さを発揮して、良くも悪くも注目の的になった。そんな二人には一つ悩みの種があった。それは生まれた時から見る、リアルな夢であった。それはこことは違う科学の進み魔法が迷信とされたい世界で二人の幼馴染の記憶であった。その時の二人は東方の国の人間のような名前で自分達とは性格が全く違うのである。冷静で優しい笑顔が印象のウォルフは大久保淳史という少年で思考が感情に優先されて行動を起こす男の子で仲間のためなら命を懸けるといった人物であった。もう一方のマリーンはおしとやかな自分とは違い明快で明るく、ネガティブの自分とは違いポジティブ思考の女の子。その夢の中での自分達は学校が近く、よくバイクという乗り物に乗っては、舗装された道を駆け抜けたり、夏休みの部活で一緒にギターという楽器を弾いて優しい音色を奏でるなどした。それは今の自分達にはうらやましい夢であった。しかし、そんな順風満帆な学校生活に突然の悲劇が訪れた。夢の中で事故にあい必ず二人は死ぬのであるが、問題はそのあとであった。その。当然周囲には伝えるのであるが誰も相手にしてもらえず、その辛さは心の奥底にしまい込んでいた。
 それに比べ今の二人の人生は悲劇の連続であった。二人が生まれた直後、母親は死に、父親からは愛されず、さらに二人が三つの時に父も死んで、親戚一族で骨肉の争いを経験。そして極めつけだったのが自分達が父の子供ではなかったことである。本当の父親は王国から亡命した難民で高い魔力を持っていた。母親は政略で結婚したことへの不満のはけ口をこの男にぶつけたことが二人の悲劇の始まりであった。当然二人は帝国の中では高い魔力を持って生まれ、そのことが知れると魔法を忌み嫌う帝国の中で二人の存在はあからさまな悪意と侮蔑の目で見られることになったのである。
 そんな二人は二年前、帝国の義務として軍への徴兵義務が課された。これは帝国に住むすべての人間が徴兵検査を受け、そこで適性があるとみなされれば、各適正ごとに最低二年の兵役に就くことになる。二人は非凡な才能が認められ、軍士官学校への入隊を命令された。しかしその時の二人の気持ちは喜びではなく恐怖であった。二人はすぐに普通の教育機関で十分だと答えたのだが、軍の命令と若い才能を無駄にしないという担当官の厳命には逆らえず、二人は従うしかなかった。

 そして現在、二人は軍からの一時帰宅で家で休んでいた。二人は鏡の中で自分達を見つめながらも、こちらが現実であることを改めて認識していた。
「さあ、マリーン、急いで支度をしよう。」
「うんそうね。」
 二人がそういうと扉に手をかけ下に降りていくのであった。
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