1 / 5
第1話 風使いのアクセルとグリード
しおりを挟む
世界の〝終わり〟は突然に訪れる。
戦争? 災害? 異世界からの侵略?
残念ながら、どれも違う。
言うなれば、神の気まぐれ。
大いなる力を持つ者の、ほんの些細な思いつき。
植民世界ミストリアスは傲慢なる神々によって終了を宣告され、それはすべての人々の知るところとなった。
そして、その終焉の日も、すでに間近へと迫っていた。
◇ ◇ ◇
「おい、アクセル! 手を抜いてんじゃねぇぞ!」
「お前もな。グリード」
二人の青年が大空を舞い、互いに魔法を撃ち合っている。
一人は濃い青色の髪を逆立てた男、アクセル・マークスター。
そして緑色の髪をセンターで分けた、グリードという名の男。
彼らは風の結界を纏い、空を舞台に激しい戦いを繰り広げている。
「どうせ、もうすぐ終わる身だ。俺様の最大火力をお見舞いしてやる!」
「ふっ、望むところだ」
グリードは空中に魔法陣を描き、大魔法の詠唱に入る。
対するアクセルは受けて立つとばかりに、彼の真正面で身構えた。
「むっ? あれは……」
しかしアクセルは何かに気づき、足元の地上へ視線を落とす。そして矢庭に急降下し、グリードとの戦闘から離脱してしまった。
◇ ◇ ◇
「……おいっ!? どういうつもりだ、アクセル!」
グリードは大魔法の詠唱を中断し、慌ててライバルの後を追う。
彼が地上に降り立つと、そこには猫を抱いたアクセルの姿があった。
「猫だ」
「……見りゃわかる! それがどうした!?」
「轢かれそうになっていてな」
そう言ってアクセルが顎で示した方向には、砂煙と共に北へ遠ざかってゆく馬車の姿が見えた。それも地平線の彼方へ向けて、数台が列をなしている。
「なんだありゃ? 隊商か?」
「いや、王国軍だな。魔王軍の討伐に向かうのだろう」
「ご苦労なこった! どうせもうすぐ、終わるってのによ!」
グリードは皮肉を吐きながら、豆粒ほどの大きさとなった馬車を見つめている。彼の隣でアクセルが猫を下ろすと、かれは静寂を求めて静かな森へと去っていった。
「あの先は北の国境だな。どうする?」
「あぁ? どうするって、まさかお前……」
「暴れたいんだろう? 魔物に魔王。相手には困らんぞ?」
彼らは古くからの友人で、互いに盗賊として鎬を削っていた仲だ。何かと喧嘩早いグリードがアクセルに噛みつくことが多く、たびたび命を賭けた真剣勝負に発展することも珍しくない。
「ハッ! 盗賊が魔王退治ってか? 面白ぇじゃねぇか」
「ふっ、決まりだな」
二人は少年のような笑みを浮かべ、風の魔法で結界を纏う。
そしてそのまま空中に浮遊し、北へ向かって飛び去った――。
戦争? 災害? 異世界からの侵略?
残念ながら、どれも違う。
言うなれば、神の気まぐれ。
大いなる力を持つ者の、ほんの些細な思いつき。
植民世界ミストリアスは傲慢なる神々によって終了を宣告され、それはすべての人々の知るところとなった。
そして、その終焉の日も、すでに間近へと迫っていた。
◇ ◇ ◇
「おい、アクセル! 手を抜いてんじゃねぇぞ!」
「お前もな。グリード」
二人の青年が大空を舞い、互いに魔法を撃ち合っている。
一人は濃い青色の髪を逆立てた男、アクセル・マークスター。
そして緑色の髪をセンターで分けた、グリードという名の男。
彼らは風の結界を纏い、空を舞台に激しい戦いを繰り広げている。
「どうせ、もうすぐ終わる身だ。俺様の最大火力をお見舞いしてやる!」
「ふっ、望むところだ」
グリードは空中に魔法陣を描き、大魔法の詠唱に入る。
対するアクセルは受けて立つとばかりに、彼の真正面で身構えた。
「むっ? あれは……」
しかしアクセルは何かに気づき、足元の地上へ視線を落とす。そして矢庭に急降下し、グリードとの戦闘から離脱してしまった。
◇ ◇ ◇
「……おいっ!? どういうつもりだ、アクセル!」
グリードは大魔法の詠唱を中断し、慌ててライバルの後を追う。
彼が地上に降り立つと、そこには猫を抱いたアクセルの姿があった。
「猫だ」
「……見りゃわかる! それがどうした!?」
「轢かれそうになっていてな」
そう言ってアクセルが顎で示した方向には、砂煙と共に北へ遠ざかってゆく馬車の姿が見えた。それも地平線の彼方へ向けて、数台が列をなしている。
「なんだありゃ? 隊商か?」
「いや、王国軍だな。魔王軍の討伐に向かうのだろう」
「ご苦労なこった! どうせもうすぐ、終わるってのによ!」
グリードは皮肉を吐きながら、豆粒ほどの大きさとなった馬車を見つめている。彼の隣でアクセルが猫を下ろすと、かれは静寂を求めて静かな森へと去っていった。
「あの先は北の国境だな。どうする?」
「あぁ? どうするって、まさかお前……」
「暴れたいんだろう? 魔物に魔王。相手には困らんぞ?」
彼らは古くからの友人で、互いに盗賊として鎬を削っていた仲だ。何かと喧嘩早いグリードがアクセルに噛みつくことが多く、たびたび命を賭けた真剣勝負に発展することも珍しくない。
「ハッ! 盗賊が魔王退治ってか? 面白ぇじゃねぇか」
「ふっ、決まりだな」
二人は少年のような笑みを浮かべ、風の魔法で結界を纏う。
そしてそのまま空中に浮遊し、北へ向かって飛び去った――。
0
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる