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最終話 真世界へと駆け抜けた風
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ついに〝終わり〟の刻が訪れた。
闇よりも昏き深淵が。
深淵よりも深き虚無が。
ミストリアスの空を、大地を、人々を。
世界のすべてを覆い尽くしていった。
創生紀 三〇二九年。
植民世界・ミストリアスは創造主たる〝偉大なる古き神々〟の手によって、大いなる闇の中へと消滅した。
◇ ◇ ◇
しかし、ミストリアスが終わることはなかった。
それは奇跡と呼ぶには程遠い、途方もない努力の賜物。
一人の名も無き旅人の、大いなる闇との孤独な戦い。
後に再世神と呼ばれることになる――この〝最後の侵入者〟の数千年にも及ぶ努力によって、ミストリアスは揺るぎなき〝真世界〟としての復活を果たしたのだ。
◇ ◇ ◇
そして闇の揺り籠に護られること、さらに二千年。
再世紀 一九九八年。
かつては〝原初の地、ダム・ア・ブイ〟と呼ばれていた島。
その地に興された国家・ノインディアにて。
太陽の陽光が降り注ぐなか、緑色の髪をセンターで分けた少年が、立派な石造りの塀を見上げている。
すると周囲を警戒するように、濃い青色の髪を逆立てた少年が姿をみせた。
「遅ぇぞニセル! 今日の宝が逃げちまうぜ?」
「ジェイド、声が大きい。――ようやく使用人を撒いたところだぞ?」
ニセルは小さく呪文を唱え、ジェイドの隣へ静かに降り立つ。どうやら風の結界を纏うことで、落下の衝撃を打ち消したらしい。
「まったく! 金持ちのニセル・マークスター君が、なんで盗賊なんかやりたがるんだか!」
「さあね。初めての友人が盗賊だったから、じゃないか?」
皮肉混じりの台詞とは裏腹に、ジェイドはどこか嬉しげな笑みを浮かべている。
ニセルもそんな彼に対し、ニヤリと口元を上げてみせた。
「ハッ、上等だ! よし、疾風の盗賊団! 張り切って出発だ!」
「ああ。……その名前は、なんとかならないのか?」
「よくわからねぇが、なんかしっくり来るんだよ! ほら、行こうぜ!」
再世された大地を、二人の少年が駆け抜けてゆく。
彼らは親友として、ライバルとして、互いに切磋琢磨を重ねながら、いつの日か〝ある若者〟の元へと導かれることとなる。
天上の太陽はそんな二人を、今は静かに見守っていた。
闇よりも昏き深淵が。
深淵よりも深き虚無が。
ミストリアスの空を、大地を、人々を。
世界のすべてを覆い尽くしていった。
創生紀 三〇二九年。
植民世界・ミストリアスは創造主たる〝偉大なる古き神々〟の手によって、大いなる闇の中へと消滅した。
◇ ◇ ◇
しかし、ミストリアスが終わることはなかった。
それは奇跡と呼ぶには程遠い、途方もない努力の賜物。
一人の名も無き旅人の、大いなる闇との孤独な戦い。
後に再世神と呼ばれることになる――この〝最後の侵入者〟の数千年にも及ぶ努力によって、ミストリアスは揺るぎなき〝真世界〟としての復活を果たしたのだ。
◇ ◇ ◇
そして闇の揺り籠に護られること、さらに二千年。
再世紀 一九九八年。
かつては〝原初の地、ダム・ア・ブイ〟と呼ばれていた島。
その地に興された国家・ノインディアにて。
太陽の陽光が降り注ぐなか、緑色の髪をセンターで分けた少年が、立派な石造りの塀を見上げている。
すると周囲を警戒するように、濃い青色の髪を逆立てた少年が姿をみせた。
「遅ぇぞニセル! 今日の宝が逃げちまうぜ?」
「ジェイド、声が大きい。――ようやく使用人を撒いたところだぞ?」
ニセルは小さく呪文を唱え、ジェイドの隣へ静かに降り立つ。どうやら風の結界を纏うことで、落下の衝撃を打ち消したらしい。
「まったく! 金持ちのニセル・マークスター君が、なんで盗賊なんかやりたがるんだか!」
「さあね。初めての友人が盗賊だったから、じゃないか?」
皮肉混じりの台詞とは裏腹に、ジェイドはどこか嬉しげな笑みを浮かべている。
ニセルもそんな彼に対し、ニヤリと口元を上げてみせた。
「ハッ、上等だ! よし、疾風の盗賊団! 張り切って出発だ!」
「ああ。……その名前は、なんとかならないのか?」
「よくわからねぇが、なんかしっくり来るんだよ! ほら、行こうぜ!」
再世された大地を、二人の少年が駆け抜けてゆく。
彼らは親友として、ライバルとして、互いに切磋琢磨を重ねながら、いつの日か〝ある若者〟の元へと導かれることとなる。
天上の太陽はそんな二人を、今は静かに見守っていた。
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