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第2章 ランベルトスの陰謀
第8話 拓かれたる冒険の道
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魔物たちは〝偉大なる古き神々〟の定めた秩序に従い、無差別に人々を襲う。
ランベルトスへ向かう道中――
エルスたちは林へ分け入り、目についた魔物を倒しながら進む。
毎日これらの魔物を討伐することも、冒険者の重要な役割のひとつなのだ。
「それっ!――どーん! 悪しき魔物め! 正義の技を受けるのだー!」
「おいッ、ミーファ! ちょっとは手加減しねェと、そこら中が穴だらけになっちまうぞッ!」
「すごいねぇ。あの斧、エルスに当たってたらグチャグチャになってたかも」
彼女の巨大な斧から繰り出される一撃は、周囲の木々までも粉々に打ち砕いてしまう。残念ながら、岩や樹木といった自然物は〝霧〟の力で修復されることはない。
「ふっ。そろそろ充分だろう。このまま突っ切るとしようか」
「そうだな……。このままじゃ林ン中に、新しい道が出来ちまうぜ……」
エルスは無惨に切り拓かれた林を振り返り、溜息を漏らす。
「ふっふー! これぞまさに、正義の道なのだ!」
「あっ。それ、いいかも? わたしもやろっかな」
「やめろアリサ! 二人とも、頼むからおとなしくしてくれェ……」
二人の女子に翻弄されながら林を抜け――
やがて一行は、ランベルトスへと続く街道に出た。
林と荒地が続く右手側とは対照的に、左手側にはランベルベリーの耕作地が広がり、甘酸っぱい香りが辺りに漂っている。緩やかに窪んだ地平線の先には、巨大な街の姿が浮かんで見える。
「おおッ、すげェなぁ。この匂い、なんか喉が渇いてくるぜ!」
「ふー。ミーは少し休憩するのだ!――とうっ!」
そう言うやいなや――
ミーファは軽々と跳躍し、前を歩くエルスの肩に跨った!
「おー! ちょうどいい高さなのだ! それじゃ、張り切って向かうのだ!」
「おいッ、なんで乗っかるんだよッ! いつもの『ご主人様』扱いはどうした!?」
「いいなぁ――。ほら、エルス。ミーファちゃんは、ほんとは王女様だし」
「そういうことなのだ! みなのもの、苦しゅうないのだー!」
「ふっ。エルスは少し肉体を鍛えた方がいい。ちょうど良いだろうさ」
「うぐッ……。まぁ、それはなんとなく気づいてたけどよ……」
痛いところを指摘され、エルスは口ごもる。
アリサたちに比べ、彼が武器での戦闘において見劣りしているのは否めない。
「ねぇ、ミーファちゃん。さっきの斧って、どこから出したの?」
「うー? これなのだ?」
ミーファが右手を掲げると同時に、その手に巨大な斧が出現する!
その途端――エルスは顔面から盛大に、石畳へと突っ込んだ!
「ぐおお……ぉおォ……重でェ……!」
「これは特別製の腕輪に収納してあるのだ! 正義の秘密道具なのだ!」
「ふっ、なるほどな」
ミーファの言葉に心当たりがあるのか、ニセルは静かに口元を緩める――。
「……それより……はやぐ、退いで……ぐでェ……」
「わ、エルス。また顔がグチャグチャに……。えいっ、セフィド――っ!」
「――らべぶッ!」
アリサの治癒魔法を顔面に押しつけられ――
癒されたエルスは、どうにか街道に立ち上がる。
「チクショウ、このままじゃ身体が保たねェ……」
「大丈夫なのだ! ミーと一緒に強くなるのだー!」
「まっ、冒険者は体力勝負だからな。これも修行さ」
「エルス、頑張ろうねっ!」
仲間たちに励まされながら――
エルスは新たな目的地・ランベルトスを目指す。
もう立ち止まってはいられない。
長い足止めから解放され、念願の冒険が始まったばかりなのだ!
「ああッ、望むところだよッ! みんな、行くぜェ――!」
ランベルトスへ向かう道中――
エルスたちは林へ分け入り、目についた魔物を倒しながら進む。
毎日これらの魔物を討伐することも、冒険者の重要な役割のひとつなのだ。
「それっ!――どーん! 悪しき魔物め! 正義の技を受けるのだー!」
「おいッ、ミーファ! ちょっとは手加減しねェと、そこら中が穴だらけになっちまうぞッ!」
「すごいねぇ。あの斧、エルスに当たってたらグチャグチャになってたかも」
彼女の巨大な斧から繰り出される一撃は、周囲の木々までも粉々に打ち砕いてしまう。残念ながら、岩や樹木といった自然物は〝霧〟の力で修復されることはない。
「ふっ。そろそろ充分だろう。このまま突っ切るとしようか」
「そうだな……。このままじゃ林ン中に、新しい道が出来ちまうぜ……」
エルスは無惨に切り拓かれた林を振り返り、溜息を漏らす。
「ふっふー! これぞまさに、正義の道なのだ!」
「あっ。それ、いいかも? わたしもやろっかな」
「やめろアリサ! 二人とも、頼むからおとなしくしてくれェ……」
二人の女子に翻弄されながら林を抜け――
やがて一行は、ランベルトスへと続く街道に出た。
林と荒地が続く右手側とは対照的に、左手側にはランベルベリーの耕作地が広がり、甘酸っぱい香りが辺りに漂っている。緩やかに窪んだ地平線の先には、巨大な街の姿が浮かんで見える。
「おおッ、すげェなぁ。この匂い、なんか喉が渇いてくるぜ!」
「ふー。ミーは少し休憩するのだ!――とうっ!」
そう言うやいなや――
ミーファは軽々と跳躍し、前を歩くエルスの肩に跨った!
「おー! ちょうどいい高さなのだ! それじゃ、張り切って向かうのだ!」
「おいッ、なんで乗っかるんだよッ! いつもの『ご主人様』扱いはどうした!?」
「いいなぁ――。ほら、エルス。ミーファちゃんは、ほんとは王女様だし」
「そういうことなのだ! みなのもの、苦しゅうないのだー!」
「ふっ。エルスは少し肉体を鍛えた方がいい。ちょうど良いだろうさ」
「うぐッ……。まぁ、それはなんとなく気づいてたけどよ……」
痛いところを指摘され、エルスは口ごもる。
アリサたちに比べ、彼が武器での戦闘において見劣りしているのは否めない。
「ねぇ、ミーファちゃん。さっきの斧って、どこから出したの?」
「うー? これなのだ?」
ミーファが右手を掲げると同時に、その手に巨大な斧が出現する!
その途端――エルスは顔面から盛大に、石畳へと突っ込んだ!
「ぐおお……ぉおォ……重でェ……!」
「これは特別製の腕輪に収納してあるのだ! 正義の秘密道具なのだ!」
「ふっ、なるほどな」
ミーファの言葉に心当たりがあるのか、ニセルは静かに口元を緩める――。
「……それより……はやぐ、退いで……ぐでェ……」
「わ、エルス。また顔がグチャグチャに……。えいっ、セフィド――っ!」
「――らべぶッ!」
アリサの治癒魔法を顔面に押しつけられ――
癒されたエルスは、どうにか街道に立ち上がる。
「チクショウ、このままじゃ身体が保たねェ……」
「大丈夫なのだ! ミーと一緒に強くなるのだー!」
「まっ、冒険者は体力勝負だからな。これも修行さ」
「エルス、頑張ろうねっ!」
仲間たちに励まされながら――
エルスは新たな目的地・ランベルトスを目指す。
もう立ち止まってはいられない。
長い足止めから解放され、念願の冒険が始まったばかりなのだ!
「ああッ、望むところだよッ! みんな、行くぜェ――!」
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