恋人に浮気された私は、辺境伯に見初められる

MOMO-tank

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13話 ハリー

その日、俺は逃げていた。


ロックウェル侯爵家次男の俺は、不定期ではあるけれど、強制的にお茶会に参加させられていた。

侯爵家とは口ばかりで、立場が良くないのは幼いながらに肌で感じていた。

始めのうちははただ、「ご令嬢達とお茶を飲んでおいで」と言われるだけだった。
でも成長してくると、「くれぐれも失礼のない様に。わかったな」に変化した。

俺はどうやら外見が異性受けするようで、話したこともないのに女の子が寄って来る。
中でも子爵令嬢の一人は特にしつこくてうんざりしていた。


だから、12歳になって学園で寮生活をスタートさせ、やっと忌々しい行事から解放されたと喜んでいた。

でも実際にはそんな甘い話ではなかったようで、夏休みで屋敷に帰った途端にその話を振られそうになった俺は、適当に理由をつけて逃げ出した。  

12歳になり学園の騎士科に在籍し、以前より足も速くなった俺は父上の護衛騎士を撒いた後、とある公園の木に登り息を潜めていた。

暫くしても追っ手も来ないし、もう大丈夫かと動き出そうとした時、誰かが来た。
よりにもよって俺の登った木のすぐ横のベンチに座ったようで、顔を見てみようと動いた途端バランスを崩して、木から落ちた。


痛がる俺に声をかけてきたのは、少し年下に見える女の子だった。
一般的な茶色い髪に茶色の瞳、平民か?
でも身につけている仕立ての良いワンピースにちぐはぐな印象を受けた。

キョトンとしていて、読んでいたと思われる本のタイトルが、(淑女のすすめ~)で。
これって、子どもが読むか?

面白そうな子だな。と、思った俺は自分から名前を名乗っていた。
女の子の名前はルルといった。


学園の夏休みは2ヶ月間ある。
気づけば俺は、ルルと出逢った公園へ足を運んでいた。

ルルとは色々と話した。
田舎町にパン屋の娘として生まれたルルは、10歳の頃の魔力測定で魔力持ちであることが確認され、現在はエルドウッド伯爵邸で暮らし魔法の勉強をしている。

エルドウッド伯爵、、魔法伯爵か。
将来有望な魔力持ちは、エルドウッド伯爵が後見人になる話は聞いたことがある。

すごい子なんだな。と思った。


ルルは自分の生い立ちや今の暮らしを話してくれたのに、俺は貴族であること、家名もルルに話さなかった。

身分を明かすことで、この居心地の良い関係が崩れることを恐れてなのか、貴族らしい父上や、愛人と暮らす両親を恥じてなのか分からない。

でも、この時素直に明かせなかったことは後に俺を悔やませた。



夏休みが終わって学園に戻ってからは、ルルと文通を始めた。
字が下手くそと気にしていたルルの字は幼い子のようでかわいかった。 


その後ルルが学園へ行ってからも、手紙のやり取り、夏休みに公園で会う関係は続いた。


ルルは年齢と共に魔法の腕を上げ、手紙の文字が動いたり、ルルの描いた動物の絵が動きだしたり、俺を楽しませてくれた。

でも、ルル本人が見せてくれる魔法はもっとすごかった。
眩いブルーの光ともに氷の薔薇を作ったり、水を操って波や滝を見せてくれた。

真っ直ぐに立ち、魔法を使うと、少し金色を帯びる髪は美しく神秘的だった。  

この頃からだろうか。
ルルを見ると少し落ち着かなくなっていったのは。
会う度に大人びていくルルにドキドキして、好きなんだと自覚した。
でも、ルルは至って出逢った時と変わらないので、自分も自然を装った。


俺が16歳の頃、学園で問題が起きた。
例の俺を気に入っていた子爵令嬢が学園に編入して来た。
学年は1つ違い、騎士科の俺とは接点は無いはずなのにどこからともなく現れる。

子爵家には援助を受けている手前無下にもできない。
そんな俺に救いの手を差し伸べてくれたのは、幼い頃から交流のあるクリスティ・シモンズ侯爵令嬢だった。

「リンダ・ウィルソン子爵令嬢に、お困りの様ね」
そう話しかけてきたクリスティには、交換条件があった。

どうやらクリスティは、俺の友達のブライアンが気になるらしい。
要は、学園内で一緒に行動しようと。というものだ。
クリスティは、俺と一緒にいるブライアンに近づける。
そして子爵令嬢は、クリスティが俺と一緒にいることで近づけない。

シモンズ侯爵家は名門で、クリスティは王妃様と叔母と姪という関係だ。
王太子殿下とも従兄となる。
そんなクリスティに子爵令嬢ごときが容易に近づけない。

ブライアンには申し訳ない思いがあったが、子爵令嬢に悩む俺を知っていたし、クリスティも決して距離を詰めることは無く、むしろブライアンを気に入っている素振りは微塵も見せなかった。
高貴で華やかなクリスティは、俺以上に不器用なのかもしれない。


年が明け春になった頃、騎馬訓練でクラスメイトの乗った馬が突然暴れ出し、俺の騎乗した馬に激突し、落馬した俺は大怪我を負った。

すぐに、治療師に回復魔法を掛けてもらったが左腕だけは治らなった。

時間はかかるが治らないわけではないのでホッとしたが、痛みが酷く眠れない日が続いた。 


でも夏休みになり、ルルは治療師が治せなかった腕に回復魔法を掛けて、俺の腕を治した。

回復魔法を掛けてくれた時のルルは、髪が少しずつ金色に変化して、瞳も色が薄くなって少しずつ金色を帯びて、まるで聖女のようだった。

俺は今までルルへの気持ちを隠していたが、もう無理だった。

ルルが好きそうなデザートのあるカフェに誘ったり、俺の馬で一緒に出かけたり、ルルのに似合いそうな髪飾りを贈った。
やり過ぎは禁物とわかってはいても、ルルとの距離を縮めたいし、意識して欲しかった。

でも、贈り物に恐縮したルルに、誕生日プレゼントはルルの好きそうな本(貴婦人シリーズ)を渡した。
そして、ルルに自分の気持ちを伝えた。
その後、ルルにも気持ちを伝えてもらえた時は天にも昇る気持ちだった。

転移魔法で消えたルルの後には、眩い光がキラキラして、俺は幸福を噛み締めた。


ルルの手紙によると、学園には行かず、デルの森や国のあちこちで仕事をしているようだった。
あの回復魔法に、転移魔法、そりゃそうだな。

ルルに治してもらった腕で頑張ろう。 
少しでもルルに近づきたい。
俺は立派な騎士を目指して、必死で訓練に臨んだ。


ルルとの交際は順調だった。
ワンピースに髪飾りをつけて、お洒落するルルは可愛かった。
肉好きな俺の為に作ってくれたスモークチキンのサンドイッチは最高に美味かった。

でも、行った先のカフェでクリスティに遭遇してしまい、俺とクリスティの会話に誤解したルルは明らかに元気がなくなった。

クリスティはいかにも貴族で、俺と幼馴染なんて言って、しかも明日は来てくれなんて。

いや、クリスティは何一つ間違ったことは言ってない。
俺がルルに貴族である事を隠さず、その他にももっと話していれば・・・・・・

でもその後、ルルとは仕事で2ヶ月も会えなくなり、更には俺の失態で子爵令嬢に腕を組まれているところを見せることになってしまう。














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