恋人に浮気された私は、辺境伯に見初められる

MOMO-tank

文字の大きさ
17 / 36

16話 ハリー

しおりを挟む
「ハリー様、あの・・・」

アンジェラ嬢が公開訓練に現れた。
差し入れを持って、ハンカチで俺の額の汗を拭こうとする。

「アンジェラ嬢、正直困るよ。来ないでほしいと言ったよね」

と、大きめの声で言った後に囁く。
(ありがとう)

「これ、食べて下さい」

アンジェラ嬢も大きめの声で言った後に、周りを気にしながらそっと囁く。
(素敵でした)

差し入れの籠を受け取る時に、お互いの指が触れた。



アンジェラ嬢に公開訓練を見学したいと言われた時は迷った。
彼女とは以前に、歌劇の話を公開訓練でしている。
その時他の連中に見られているから、また来たとなると噂好きの人は黙ってはいない。
だから、俺は嫌がる演技をしてアンジェラ嬢は差し入れを渡してすぐに帰ってもらう。
怪しまれないために。



ルルが緊急任務に向かった後、俺とアンジェラ嬢の関係が変化し以前より親密になった。

結婚するアンジェラ嬢と恋人の居る俺の、期間限定のちょっとしたお遊びだ。
思い出作りの延長に過ぎない。
ルルが仕事から帰って来るまでの。






3週間前


ルルが仕事で居ない事を周りも知っているのか、一段と飲み会の誘いがかかるようになった。
俺と伯爵令息であるマークが行くとわかれば、女性の参加率が上がるからだろう。
2人とも貴族では珍しく、婚約者も居ないし見た目も悪くないから。

それに、俺とマークが女の子に紳士的な態度でお喋りして手の甲にキスをするパフォーマンスをすれば、実際はフリだが、ちょっとした盛り上がりを見せる。

少し緊張感を感じた飲み会の場が、くだくけた雰囲気になって会話も弾むと、騎士仲間や貴族令息に憧れる女性から要望されていた。

だから、今日もマークとそれぞれ女の子とお喋りしていた。



視線を感じた。
辺りを見渡すと、一人の女性と目が合った。


アンジェラ嬢・・・


恥ずかしそうに顔を赤くしている女の子の相手が終わると、彼女の方からやって来て、隣の今空いたばかりの席に座った。

「ハリー様、あの、今の女性とは・・・」

「ただ話していただけだよ。
ライト男爵令嬢、君はもうすぐ結婚する。俺には恋人が居る。
それに歌劇を鑑賞して、君の思い出作りも終わったはず。
もう、俺と関わるべきではないよ」

「そんな、ハリー様、ひどい・・・
ライト男爵令嬢なんて・・・
今まで通り、アンジェラって呼んでください」

アンジェラ嬢はなかなか引かなかった。
でも、俺だってもうアンジェラ嬢と一緒に居る姿をルルに見られる訳にはいかない。

アンジェラ嬢は、そんな簡単に言わないで。と言う。

「ハリー様、買い物やピクニックで私にたくさん触れてくれたじゃないですか。
それに私達、口づけだって・・・」



買い物、ピクニック、口づけ・・・・・・ 

ああ、そうだ。
俺とアンジェラ嬢は・・・


買い物へ行った時、
アンジェラ嬢に手を繋ぎたいと言われ、恋人繋ぎという、お互いの指が交互に絡み合う繋ぎ方をした。

その日は、ずっとそうして手を繋いでいて、
次に会った時は、当たり前の様に手を繋いだ。


ピクニックでは、膝枕をしたいと言うアンジェラ嬢の膝でうとうとする俺の髪を彼女が触っていて、
俺もお返しにと、アンジェラ嬢に横になってもらい、
暫くの間、彼女の柔らかいピンクブロンドの髪を撫で続けた。


草原でいきなり走り出すアンジェラ嬢を追いかけて、彼女を後ろから抱きしめてた。
そのまま彼女の甘いバラの香りを堪能しながら、抱きしめ続けた。


夜会のバルコニーで彼女に抱きつかれ、ブルーグレーの潤んだ瞳に見つめられ、ゆっくりと唇が重なっていった。



気づけば、黙り込む俺の手の上に白い華奢な手が重なっていた。 
それははいつの間にか、お互いの指が交互に絡み合うものに変わっていた。

隣を見ると、俺を見つめるアンジェラ嬢がいた。


2ヶ月後に恋人が戻るまで、会うのもここだけ。それでも良いなら。
と、俺は言った。

アンジェラ嬢は微笑んで頷き、甘えるように俺に寄り添った。
甘いバラの香りを感じながら,2人でお酒を飲んだ。


お酒で頬をピンク色に染めたアンジェラ嬢が俺をじっと見つめてくる。
どちらからともなく顔が近づき、口づけを交わした。
周りの酔ってる仲間が、冷やかしてくる声が聞こえた。



次の週もアンジェラ嬢と一緒に過ごした。
アンジェラ嬢は俺が他の女性と話すのか気に入らないらしく、拗ねている。
どう機嫌を取ろうか酔った頭で考えていると、口づけして。と言われた。

俺はアンジェラ嬢の肩を抱き、唇を重ねた。
アンジェラ嬢の唇が開き、次第に深い口づけに変化した。
アンジェラ嬢の意外な大胆さに多少の驚きを覚えるも、そのまま口づけを楽しんだ。



3週目も、隣にはアンジェラ嬢が居た。
騎士団の公開訓練を見学したい。と言われ困惑するも引かない彼女に負けて、ルールを決めて来てもらうことにした。

差し入れを何にするか迷う彼女の頬に口づけをした。
周りの騎士達は、それだけか!と、囃し立てていた。




4週目も俺は変わらず飲み会へ参加した。

女の子とのお喋りが終わったら、アンジェラ嬢が俺の隣に座る。
話をしていた女の子にやきもちを妬くアンジェラ嬢を見ながら酒を飲む。
いつものように。

少し酔ったアンジェラ嬢に、また公開訓練を見学したい。と甘えて言われる。
どうしようかな。意地悪く言う俺に、
アンジェラ嬢が頬を膨らませて拗ねる。
謝る俺に、近づいてきて俺を見つめる。

「じゃあ、口づけしてください。
頬じゃなく、唇に」

俺はアンジェラ嬢の肩に手を置き、ゆっくりと抱き寄せる。

見つめ合い、ゆっくりと口づけを交わす。
アンジェラ嬢の手が俺の胸元に置かれ、深い口づけに変化する。

いつもみたいに酔った騎士仲間の囃し立てる声が聞こえるが、途中から俺の名前をしきりに呼ぶ。
何だ?と思ったと同時に眩しい光が目にはいる。


ルル!


俺は慌ててアンジェラ嬢を引き離す。

「ルル!違うんだ!これにはわけが!」

必死に言い訳する俺の目の前には、今まで見た事のないルルが居た。

ローブ姿の全身を金色の光に包まれて、煌めくプラチナブロンドの髪を靡かせている。
でも、透き通ったような金色の美しい瞳は驚く程冷たく俺を見ていた。


ルル!ルル!
違うんだ!
ルル!


「ルル・・・・・・」

その瞬間、冷たく俺を見る目の周りと鼻が赤くなり、目に涙を浮かべていた。
今にも泣き出しそうなルルがいた。


同時に、俺の忘れかけていた記憶が蘇った。


子爵令嬢に腕を組まれて、ルルを傷つけ
て、あの時誓った。

もう、ルルにあんな泣きそうな顔は絶対にさせない。

言いたいことを言い合おう。


誓ったのに・・・・・・




瞳に冷たさを取り戻したルルは、深呼吸して、赤黒い光を纏った右手を握りしめて、

左頬に強烈な衝撃を受けたと同時に、俺は吹っ飛んだ。
 

ルル、ルル、ごめん
頼むから行かないでくれ
ルル


遠くに見えるルルは、
光の中に消えて
見えなくなった。











































 






































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたを愛する心は珠の中

れもんぴーる
恋愛
侯爵令嬢のアリエルは仲の良い婚約者セドリックと、両親と幸せに暮らしていたが、父の事故死をきっかけに次々と不幸に見舞われる。 母は行方不明、侯爵家は叔父が継承し、セドリックまで留学生と仲良くし、学院の中でも四面楚歌。 アリエルの味方は侍従兼護衛のクロウだけになってしまった。 傷ついた心を癒すために、神秘の国ドラゴナ神国に行くが、そこでアリエルはシャルルという王族に出会い、衝撃の事実を知る。 ドラゴナ神国王家の一族と判明したアリエルだったが、ある事件がきっかけでアリエルのセドリックを想う気持ちは、珠の中に封じ込められた。 記憶を失ったアリエルに縋りつくセドリックだが、アリエルは婚約解消を望む。 アリエルを襲った様々な不幸は偶然なのか?アリエルを大切に思うシャルルとクロウが動き出す。 アリエルは珠に封じられた恋心を忘れたまま新しい恋に向かうのか。それとも恋心を取り戻すのか。 *なろう様、カクヨム様にも投稿を予定しております

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

ままごとのような恋だった

弥生
恋愛
貴族学園に通う元平民の男爵令嬢「ライラ」 その初々しさから、男子の受けは良いが、婚約者のいる令息にもお構い無しにちょっかいを出す「クズ令嬢」として女子からは評判が悪かった。 そんな彼女は身の程知らずにも「王太子」にロックオンする、想像以上にアッサリと王太子は落ちたと思われたが、何処か様子がおかしくて…

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

恋の締め切りには注意しましょう

石里 唯
恋愛
 侯爵令嬢シルヴィアは、ウィンデリア国で2番目に強い魔力の持ち主。  幼馴染の公爵家嫡男セドリックを幼いころから慕っている。成長につれ彼女の魔力が強くなった結果、困った副作用が生じ、魔法学園に入学することになる。  最短で学園を卒業し、再びセドリックと会えるようになったものの、二人の仲に進展は見られない。  そうこうしているうちに、幼い頃にシルヴィアが魔力で命を救った王太子リチャードから、 「あと半年でセドリックを落とせなかったら、自分の婚約者になってもらう」と告げられる。  その後、王太子の暗殺計画が予知されセドリックもシルヴィアも忙殺される中、シルヴィアは半年で想いを成就させられるのか…。  「小説家になろう」サイトで完結済みです。なろうサイトでは番外編・後日談をシリーズとして投稿しています。

わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。 離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。 王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。 アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。 断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。 毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。 ※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。 ※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。

幼馴染と結婚したけれど幸せじゃありません。逃げてもいいですか?

恋愛
 私の夫オーウェンは勇者。  おとぎ話のような話だけれど、この世界にある日突然魔王が現れた。  予言者のお告げにより勇者として、パン屋の息子オーウェンが魔王討伐の旅に出た。  幾多の苦難を乗り越え、魔王討伐を果たした勇者オーウェンは生まれ育った国へ帰ってきて、幼馴染の私と結婚をした。  それは夢のようなハッピーエンド。  世間の人たちから見れば、私は幸せな花嫁だった。  けれど、私は幸せだと思えず、結婚生活の中で孤独を募らせていって……? ※ゆるゆる設定のご都合主義です。  

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

処理中です...