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22話
辺境へ向かおうとしていた朝、ステファン様に辺境伯領の西に位置する町で土砂崩れが起きたと報告を受け、急遽その町に立ち寄ることになった。
ローブ姿で町に到着すると、負傷者の所へ案内してもらい、すぐに重傷者から順に治療に取り掛かった。
あの出来事の後、私には変化があった。
髪の色が一部を残して金色になり、あと、自分自身もどこか変わった。
説明するのは難しいけれど、明らかに以前とは何かが違う。
でも、それはとても自然なことのように自分の中で受け入れられた。
むしろ人と話していても、魔法を使っても、何をするにせよ、なぜか以前よりもしっくりくる。
だから、10名程の治療も以前よりも早くあっという間に終了した。
治療後は過剰過ぎるくらいに感謝され、中には手を合わせてくる人までいる。
(ぐぅーー)
この音は・・・
一気に回復魔法を使ったせいか、お腹が空いてしまい、周りにバッチリと聞こえる程の音が鳴ってしまった。
こんな大きな音、、今までなら誤魔化せる程度だったのに・・・
「この先に、あっしの両親の食堂があるんです。
トマトスープとパンが絶品で。
お礼と言っちゃあ何ですが、ぜひ立ち寄ってくだせぇ」
周りも「そうだ。そうだ。治療師さんに是非」「ほら、行くぞ」と賛同して、恥ずかしくて固まっていた私はあれよこれよという間に食堂に連れて行かれて、気づけば席に座らされ、店主の老夫婦からは感謝され、何度も頭を下げられた。
ローブを脱いで隣の席に置いた。
食堂は、小さくて温かい雰囲気でほっとした気持ちになる。
お客さんは私以外に一人、斜め前の席に座りテーブルに顔を伏せて寝ている人がいるだけだった。
しばらくすると、野菜が沢山のトマトスープと焼き立てのパンが運ばれてきた。
バターを練り込んでサクサクする私の大好きなパンに思わず目が輝く。
食堂の老夫妻には、またもや何度もお礼を言われた。
トマトスープと焼き立てパンの匂いに吸い寄せられるように、私は夢中で食べた。
サクサクでバターの味が広がるパンはとんでもなく美味しく、お代わりも勧められるがままに有り難く頂いた。
ん?
何か、視線を感じた。
でも、人といったら私の他に・・・
斜め前を見ると、そこにはテーブルに肘をついてこちらを見て、クックックッと笑う、身体の大きい男の人がいた。
騎士?
知り合い?
てゆーか、どうして笑われるの?
「あの、何か?」
「いやぁ、随分と美味しそうに食べているので、見とれてしまってね」
「はぁ」
揶揄っているのか、男の人は緑色の瞳でじっとこちらを見るので、居心地の悪さを感じていると、その人はガタンッと椅子から立ち上がり、老夫婦に食事のお礼を言うと歩き出した。
そして、私の横で立ち止まると、
「美味しそうなパンが口の周りに残っているよ」
と、肩を震わせながら小さな低い声で言うと、食堂から出て行った。
嘘でしょーー
口元に指を持っていくと、ポロポロとパンくずがテーブルに落ちてきた。
心配なので一応魔法で綺麗にして、ローブを羽織り、老夫婦にスープとパンのお礼を言って店を出た。
大丈夫、あの人にもう会う事はない。
呪文のように唱えて、目的地である辺境の専属治療師モーガンさんの元へ転移した。
治療院らしき建物の前に着いて中へ入ると、待合室には患者さんらしき人がたくさん居た。
「ルルかい? 待っておったぞ。
ワシはモーガンじゃ。
ちょっと、今こんな状況で申し訳ないが・・・
そうだな、ちょっとこっちに来てくれんか?」
「ハイ?」
横にある診察室から白衣のようなローブのようなものを羽織った白髪の男性、モーガンさんに呼ばれ、そのまま助手のような仕事や簡単な治療魔法を行い、気づけば夕暮れ時だった。
「助かった、助かった」と、モーガンさんに感謝され、「疲れたろう」と、まるでステファン様みたいに優雅に魔法で紅茶を淹れてくれた。
モーガンさんも私と同じく紅茶に砂糖を3つ入れていた。
その時、突然眩しい光と共に一人の男性が現れた。
「モーガン爺さん、今日は城で晩餐会やるって話しましたよね?」
「あー、いや、聞いておらんな」
「全く、これだから・・・
と、失礼。いらっしゃってたんですね」
「そうだ。ルル嬢だ。
わしがせっかくルルと茶を飲んでいた所に、邪魔しおって」
「ルル嬢、ようこそシモンズ伯爵領へ。僕は、ロバート・シモンズです。
間もなく兄である、伯爵も戻る頃かと。
あ、今朝はネルソンでの負傷者への治療ありがとうございます。
素晴らしい治療魔法に皆感謝してました」
「わしも今日はルルに手伝ってもらったんじゃ。
それはそれは助かってのう」
「何してるんですか。初日から働かせて」
「お前だって同じだろう。
ところで、クリスはネルソンに行っておるのか?」
「ええ、土砂崩れの話を聞いてからすぐに単騎でね。
もちろん騎士もすぐに追行しましたが、相変わらずですよ。
黙っていられないですからね」
「そうか・・・
おう。ルル、すまんかったのう。
ワシらばっかり話して」
そっか、挨拶がまだだったか。
この方、ロバート・シモンズって、伯爵様の弟さんか。
「エルドウッド伯爵様の紹介で来たルルです。
よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
細められた緑色の瞳は、どこかで見たような・・・気がした。
「今夜はルル嬢をお迎えする晩餐会、とはいってもただの食事会みたいなものですが・・・
ああ、そろそろ参りましょう。
さ、モーガン爺さんも行きますよ」
ロバート様にローブのままで大丈夫でしす。と言われたので、一応洗浄魔法をかけ、そのままロバート様に連れられ転移した。
到着した広間の晩餐会、食事会は、見た感じ大きな規模ではなく、胸を撫で下ろしたのも束の間、ロバート様に連れられ兄である伯爵様の元へ向かった。
「兄上、ルル嬢をお連れしました」
伯爵様が目に入った途端、私は固まった。
この、緑色の瞳は・・・
「ルル嬢、ようこそ辺境伯領へ。
クリストファー・シモンズだ。
また、逢えたね」
大きな手を差し出したその人は、食堂でパンくずを付けた私を見て肩を震わせて笑っていた、身体の大きなあの人だった。
ローブ姿で町に到着すると、負傷者の所へ案内してもらい、すぐに重傷者から順に治療に取り掛かった。
あの出来事の後、私には変化があった。
髪の色が一部を残して金色になり、あと、自分自身もどこか変わった。
説明するのは難しいけれど、明らかに以前とは何かが違う。
でも、それはとても自然なことのように自分の中で受け入れられた。
むしろ人と話していても、魔法を使っても、何をするにせよ、なぜか以前よりもしっくりくる。
だから、10名程の治療も以前よりも早くあっという間に終了した。
治療後は過剰過ぎるくらいに感謝され、中には手を合わせてくる人までいる。
(ぐぅーー)
この音は・・・
一気に回復魔法を使ったせいか、お腹が空いてしまい、周りにバッチリと聞こえる程の音が鳴ってしまった。
こんな大きな音、、今までなら誤魔化せる程度だったのに・・・
「この先に、あっしの両親の食堂があるんです。
トマトスープとパンが絶品で。
お礼と言っちゃあ何ですが、ぜひ立ち寄ってくだせぇ」
周りも「そうだ。そうだ。治療師さんに是非」「ほら、行くぞ」と賛同して、恥ずかしくて固まっていた私はあれよこれよという間に食堂に連れて行かれて、気づけば席に座らされ、店主の老夫婦からは感謝され、何度も頭を下げられた。
ローブを脱いで隣の席に置いた。
食堂は、小さくて温かい雰囲気でほっとした気持ちになる。
お客さんは私以外に一人、斜め前の席に座りテーブルに顔を伏せて寝ている人がいるだけだった。
しばらくすると、野菜が沢山のトマトスープと焼き立てのパンが運ばれてきた。
バターを練り込んでサクサクする私の大好きなパンに思わず目が輝く。
食堂の老夫妻には、またもや何度もお礼を言われた。
トマトスープと焼き立てパンの匂いに吸い寄せられるように、私は夢中で食べた。
サクサクでバターの味が広がるパンはとんでもなく美味しく、お代わりも勧められるがままに有り難く頂いた。
ん?
何か、視線を感じた。
でも、人といったら私の他に・・・
斜め前を見ると、そこにはテーブルに肘をついてこちらを見て、クックックッと笑う、身体の大きい男の人がいた。
騎士?
知り合い?
てゆーか、どうして笑われるの?
「あの、何か?」
「いやぁ、随分と美味しそうに食べているので、見とれてしまってね」
「はぁ」
揶揄っているのか、男の人は緑色の瞳でじっとこちらを見るので、居心地の悪さを感じていると、その人はガタンッと椅子から立ち上がり、老夫婦に食事のお礼を言うと歩き出した。
そして、私の横で立ち止まると、
「美味しそうなパンが口の周りに残っているよ」
と、肩を震わせながら小さな低い声で言うと、食堂から出て行った。
嘘でしょーー
口元に指を持っていくと、ポロポロとパンくずがテーブルに落ちてきた。
心配なので一応魔法で綺麗にして、ローブを羽織り、老夫婦にスープとパンのお礼を言って店を出た。
大丈夫、あの人にもう会う事はない。
呪文のように唱えて、目的地である辺境の専属治療師モーガンさんの元へ転移した。
治療院らしき建物の前に着いて中へ入ると、待合室には患者さんらしき人がたくさん居た。
「ルルかい? 待っておったぞ。
ワシはモーガンじゃ。
ちょっと、今こんな状況で申し訳ないが・・・
そうだな、ちょっとこっちに来てくれんか?」
「ハイ?」
横にある診察室から白衣のようなローブのようなものを羽織った白髪の男性、モーガンさんに呼ばれ、そのまま助手のような仕事や簡単な治療魔法を行い、気づけば夕暮れ時だった。
「助かった、助かった」と、モーガンさんに感謝され、「疲れたろう」と、まるでステファン様みたいに優雅に魔法で紅茶を淹れてくれた。
モーガンさんも私と同じく紅茶に砂糖を3つ入れていた。
その時、突然眩しい光と共に一人の男性が現れた。
「モーガン爺さん、今日は城で晩餐会やるって話しましたよね?」
「あー、いや、聞いておらんな」
「全く、これだから・・・
と、失礼。いらっしゃってたんですね」
「そうだ。ルル嬢だ。
わしがせっかくルルと茶を飲んでいた所に、邪魔しおって」
「ルル嬢、ようこそシモンズ伯爵領へ。僕は、ロバート・シモンズです。
間もなく兄である、伯爵も戻る頃かと。
あ、今朝はネルソンでの負傷者への治療ありがとうございます。
素晴らしい治療魔法に皆感謝してました」
「わしも今日はルルに手伝ってもらったんじゃ。
それはそれは助かってのう」
「何してるんですか。初日から働かせて」
「お前だって同じだろう。
ところで、クリスはネルソンに行っておるのか?」
「ええ、土砂崩れの話を聞いてからすぐに単騎でね。
もちろん騎士もすぐに追行しましたが、相変わらずですよ。
黙っていられないですからね」
「そうか・・・
おう。ルル、すまんかったのう。
ワシらばっかり話して」
そっか、挨拶がまだだったか。
この方、ロバート・シモンズって、伯爵様の弟さんか。
「エルドウッド伯爵様の紹介で来たルルです。
よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
細められた緑色の瞳は、どこかで見たような・・・気がした。
「今夜はルル嬢をお迎えする晩餐会、とはいってもただの食事会みたいなものですが・・・
ああ、そろそろ参りましょう。
さ、モーガン爺さんも行きますよ」
ロバート様にローブのままで大丈夫でしす。と言われたので、一応洗浄魔法をかけ、そのままロバート様に連れられ転移した。
到着した広間の晩餐会、食事会は、見た感じ大きな規模ではなく、胸を撫で下ろしたのも束の間、ロバート様に連れられ兄である伯爵様の元へ向かった。
「兄上、ルル嬢をお連れしました」
伯爵様が目に入った途端、私は固まった。
この、緑色の瞳は・・・
「ルル嬢、ようこそ辺境伯領へ。
クリストファー・シモンズだ。
また、逢えたね」
大きな手を差し出したその人は、食堂でパンくずを付けた私を見て肩を震わせて笑っていた、身体の大きなあの人だった。
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