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第23話 クライブ
夕刻に騎士団へ戻ると、団長がまるで俺を待っていたかのように立ち上がって部屋へ招き入れてくれた。
「これが今日届いた」
手渡されたのは、シドニーからの手紙だった。
今まで、ありがとう。
幸せになって下さい。
シドニー
それは紛れもなくシドニーの美しい字で、その文字をただ見つめることしかできなかった。
そして、もう一枚の紙をゆっくりと開くと、それはシドニーの字で記入された離婚申請書で、それを目にした瞬間、自分でも分からない感情が胸の中で溢れかえり、それをぐしゃぐしゃに丸めていた。
「クライブ、あの事務員のリンチ子爵令嬢だが、ニコラス・ドミンゲス伯爵令息と付き合っていたらしい」
でも、ドミンゲス伯爵令息はあの通り女癖が悪い。
あちこちで令嬢に手を出していた。
リンチ子爵令嬢は、どれも本気ではなく遊びだからと耐えていたが、令息は一人の令嬢に対しては違ったらしい。
それがシドニーだった。
特別シドニーに執着する姿を見ているうちに、嫉妬にも似た感情が芽生えていく。
そして、それは令息がシドニーに暴行を働き伯爵領で謹慎となってから、恨みへと変化していった。
「あの令息は、賭け事で抱えた多額の借金や侍女に手を出した段階で謹慎処分は決定されていた。
それに、シドニーは被害者だ」
「勿論それが真実だ。
俺が話しているのは、あくまでもリンチ子爵令嬢の言い分に過ぎない」
そんなのは分かっているが、苛立ちを抑えることができなかった。
リンチ子爵令嬢は、シドニーと俺が結婚したことにも納得できなかった。
同じ子爵令嬢なのに、シドニーばかりが男から注目され、求められる。
ーーノックス副団長まで誑かして。
私があの女から副団長を救ってあげよう。
そんな時、ステラ・コンウォール前伯爵夫人が夜会で俺と再会した話を耳にする。
ーー今も想い合っている二人の姿をあの女に見せよう。
騎士団の事務員という職柄、護衛騎士が必要なお茶会の情報も知っている。
しかも、王妃様付きの侍女の友人からとびっきりの話を聞いていた。
『想い合う二人に、時間を設けてあげる』
運良く着替えを持って来たシドニーを庭園まで案内した。
ーー副団長とステラ様が見つめ合い、髪に触れる姿を目にして、あの女の絶望した顔を見てスッとした。
あと、もう一息。
忙しい副団長が自分に心を寄せたら。
お菓子の差し入れ、ある日は躓く振りをして俺の騎士服に口紅の跡を残し、執事からの手紙を隠す。
火傷の傷を負ったシドニーに『傷物になった』と噂を流して、
そして、シドニーの控え室に離婚申請書を置いた。
「3週間が限界だ、必ず帰って来い」
団長の言葉に強く頷いて、マッケンジー公爵領へ向かうことを告げた。
シドニーがどれだけ苦しんでいたかを思うと胸が痛かった。
過去の婚約破棄の話が美談となっていた。
なのに肝心な俺がシドニーに話さなければ、伝わるはずがない。
今からでも、全て話せば分かってもらえるだろうか。
自分が愛しているのは、
愛してやまないのは、
シドニーだと。
馬を走らせ、マッケンジー公爵領まで急いだ。
1日半で公爵領に入った。
離婚申請書はシドニーが準備した物ではなかった。
あれが、シドニーの希望ではないと信じたい。
ただ、あの子爵令嬢が勝手にシドニーに嫉妬し、起こした行動をシドニーが知ったら、またきっと傷つく。
シドニーをこれ以上傷つけさせない。
そう誓って、公爵領の中心部へ向かった。
リリアン・フィッチャー劇団は有名で、すぐに公演中の劇場は見つかった。
すぐにシドニーに駆け寄りたかったが、シドニーは仕事中らしく、陰から見守ることにした。
でも、そこでシドニーは“ジーナ”と呼ばれ、生き生きと楽しそうにしていて、そんなシドニーを見ていると、話しかける機会を失った。
「これが今日届いた」
手渡されたのは、シドニーからの手紙だった。
今まで、ありがとう。
幸せになって下さい。
シドニー
それは紛れもなくシドニーの美しい字で、その文字をただ見つめることしかできなかった。
そして、もう一枚の紙をゆっくりと開くと、それはシドニーの字で記入された離婚申請書で、それを目にした瞬間、自分でも分からない感情が胸の中で溢れかえり、それをぐしゃぐしゃに丸めていた。
「クライブ、あの事務員のリンチ子爵令嬢だが、ニコラス・ドミンゲス伯爵令息と付き合っていたらしい」
でも、ドミンゲス伯爵令息はあの通り女癖が悪い。
あちこちで令嬢に手を出していた。
リンチ子爵令嬢は、どれも本気ではなく遊びだからと耐えていたが、令息は一人の令嬢に対しては違ったらしい。
それがシドニーだった。
特別シドニーに執着する姿を見ているうちに、嫉妬にも似た感情が芽生えていく。
そして、それは令息がシドニーに暴行を働き伯爵領で謹慎となってから、恨みへと変化していった。
「あの令息は、賭け事で抱えた多額の借金や侍女に手を出した段階で謹慎処分は決定されていた。
それに、シドニーは被害者だ」
「勿論それが真実だ。
俺が話しているのは、あくまでもリンチ子爵令嬢の言い分に過ぎない」
そんなのは分かっているが、苛立ちを抑えることができなかった。
リンチ子爵令嬢は、シドニーと俺が結婚したことにも納得できなかった。
同じ子爵令嬢なのに、シドニーばかりが男から注目され、求められる。
ーーノックス副団長まで誑かして。
私があの女から副団長を救ってあげよう。
そんな時、ステラ・コンウォール前伯爵夫人が夜会で俺と再会した話を耳にする。
ーー今も想い合っている二人の姿をあの女に見せよう。
騎士団の事務員という職柄、護衛騎士が必要なお茶会の情報も知っている。
しかも、王妃様付きの侍女の友人からとびっきりの話を聞いていた。
『想い合う二人に、時間を設けてあげる』
運良く着替えを持って来たシドニーを庭園まで案内した。
ーー副団長とステラ様が見つめ合い、髪に触れる姿を目にして、あの女の絶望した顔を見てスッとした。
あと、もう一息。
忙しい副団長が自分に心を寄せたら。
お菓子の差し入れ、ある日は躓く振りをして俺の騎士服に口紅の跡を残し、執事からの手紙を隠す。
火傷の傷を負ったシドニーに『傷物になった』と噂を流して、
そして、シドニーの控え室に離婚申請書を置いた。
「3週間が限界だ、必ず帰って来い」
団長の言葉に強く頷いて、マッケンジー公爵領へ向かうことを告げた。
シドニーがどれだけ苦しんでいたかを思うと胸が痛かった。
過去の婚約破棄の話が美談となっていた。
なのに肝心な俺がシドニーに話さなければ、伝わるはずがない。
今からでも、全て話せば分かってもらえるだろうか。
自分が愛しているのは、
愛してやまないのは、
シドニーだと。
馬を走らせ、マッケンジー公爵領まで急いだ。
1日半で公爵領に入った。
離婚申請書はシドニーが準備した物ではなかった。
あれが、シドニーの希望ではないと信じたい。
ただ、あの子爵令嬢が勝手にシドニーに嫉妬し、起こした行動をシドニーが知ったら、またきっと傷つく。
シドニーをこれ以上傷つけさせない。
そう誓って、公爵領の中心部へ向かった。
リリアン・フィッチャー劇団は有名で、すぐに公演中の劇場は見つかった。
すぐにシドニーに駆け寄りたかったが、シドニーは仕事中らしく、陰から見守ることにした。
でも、そこでシドニーは“ジーナ”と呼ばれ、生き生きと楽しそうにしていて、そんなシドニーを見ていると、話しかける機会を失った。
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