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第8話
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考えてみれば、ぶつかった場所は王族専用エリア。
誰もかれも通れるものではない。
男性で、あの人でも前国王様でもないとすれば、残るはスタインベック公爵。
護衛が堂々と通路の中央を歩く訳がない。
なぜ考えが及ばなかったんだろう。
それと同時に、取り乱して走る姿を目撃されていた事にいたたまれない気持ちになる。
でも、欲しかった物が目の前にある。
落ち着きを取り戻し、何事もなかったようにカードに手を伸ばした。
《ありがとうございます》
なのに、カードが掴めない。
すると、公爵が胡散臭く見える程の完璧な笑顔で、カードを自分の頭よりも僅かに高く掲げていた。
《カードの筆跡は、ランディ・ホール伯爵子息。王宮文官。二十一歳。
続きを知りたい?》
予想外の出来事に固まっていると、クツクツ笑い声が聞こえる。
《ごめん、ごめん。
この場は安全だけど、一応自然に。
そうだなぁ、前回のような感じで振る舞ってもらえるかな?》
《分かりましたわ》
公爵の思惑は分からないが、既に相手のペースのうえ、単純に続きが知りたい。
それに、この人を信じて良い。直感のようなものが働いた。
《気分が悪くなる噂の出処は、王妃様にカードを渡した侍女を差し向けた公爵家。
権力を手に入れたい公爵は娘を愛妾に、養女を側妃にと画作している。
ちなみに養女となったのはカードの筆跡者ランディ・ホールの妹、マディソン・ホール》
フランチェスカ様を愛妾に、養女を側妃?
言われてみれば、確か財政困難なホール伯爵家から養子を取ったと聞いた。
しかも、側妃問題が出るってことは・・・
《じゃあ、次はもっと不愉快な噂話が流れる可能性があるってこと?》
この流れだと、私に問題があるから子どもを授からないとかよね。
《恐らくね。
・・・・・・そこで提案があるんだ》
《提案?》
《私は個人的に公爵に思うところがある。
甥っ子は好き勝手やり過ぎている。
私は現在独身。まぁ、過去に離婚歴はあるが・・・。
そこで、私と王妃様が恋仲になるっていうのはどうだい?》
「はぁ?」
何年振りかに間抜けな声を出してしまい、公爵には笑われた。
この複雑な状況でどうするべきか、迷っている。
最初、公爵から提案された時はとんでもないと思った。
私は王妃だ。
あの人がいくら好き勝手しているとしとも、自分はああはなりたくない。
でもーー
このままだとこの先、側妃と愛妾と過ごす姿をずっと見ながら、名ばかりの王妃として一生を終えることになる。
もし、公爵と恋仲というものになれば、正確には周りにそう思わせるような演技をする訳になるけれど、私の行く末は変化する可能性が大きい。
《あの二人が惹かれ合って、周りは噂に踊らされ盛り上がっている。
だったら私が王妃様に惹かれて、あなたに振り向いて欲しくて行動しても許されるだろう。
私は、公爵だしね。
側妃問題に傷つくあなたを慰めつつ、徐々に積極的、情熱的に行動する。
もちろん、常に一線を引いて。
あなたに問題があるから側妃をという話が正式に決まった時に、私が名乗り出る》
《私にばかりメリットがあるような》
《そうでもないよ。
ああ、そろそろ行かなくては。
二週間後の晩餐会で答えを聞かせて欲しい》
晩餐会まで三日。
最近は噂話だけではなく、憶測まで飛び交っている。
毅然と振る舞ってはいるが、正直のところかなり堪える。
こんな日々がずっと続くのか・・・・・・。
広すぎるベッドに横になって考えたが、まだ答えは出なかった。
誰もかれも通れるものではない。
男性で、あの人でも前国王様でもないとすれば、残るはスタインベック公爵。
護衛が堂々と通路の中央を歩く訳がない。
なぜ考えが及ばなかったんだろう。
それと同時に、取り乱して走る姿を目撃されていた事にいたたまれない気持ちになる。
でも、欲しかった物が目の前にある。
落ち着きを取り戻し、何事もなかったようにカードに手を伸ばした。
《ありがとうございます》
なのに、カードが掴めない。
すると、公爵が胡散臭く見える程の完璧な笑顔で、カードを自分の頭よりも僅かに高く掲げていた。
《カードの筆跡は、ランディ・ホール伯爵子息。王宮文官。二十一歳。
続きを知りたい?》
予想外の出来事に固まっていると、クツクツ笑い声が聞こえる。
《ごめん、ごめん。
この場は安全だけど、一応自然に。
そうだなぁ、前回のような感じで振る舞ってもらえるかな?》
《分かりましたわ》
公爵の思惑は分からないが、既に相手のペースのうえ、単純に続きが知りたい。
それに、この人を信じて良い。直感のようなものが働いた。
《気分が悪くなる噂の出処は、王妃様にカードを渡した侍女を差し向けた公爵家。
権力を手に入れたい公爵は娘を愛妾に、養女を側妃にと画作している。
ちなみに養女となったのはカードの筆跡者ランディ・ホールの妹、マディソン・ホール》
フランチェスカ様を愛妾に、養女を側妃?
言われてみれば、確か財政困難なホール伯爵家から養子を取ったと聞いた。
しかも、側妃問題が出るってことは・・・
《じゃあ、次はもっと不愉快な噂話が流れる可能性があるってこと?》
この流れだと、私に問題があるから子どもを授からないとかよね。
《恐らくね。
・・・・・・そこで提案があるんだ》
《提案?》
《私は個人的に公爵に思うところがある。
甥っ子は好き勝手やり過ぎている。
私は現在独身。まぁ、過去に離婚歴はあるが・・・。
そこで、私と王妃様が恋仲になるっていうのはどうだい?》
「はぁ?」
何年振りかに間抜けな声を出してしまい、公爵には笑われた。
この複雑な状況でどうするべきか、迷っている。
最初、公爵から提案された時はとんでもないと思った。
私は王妃だ。
あの人がいくら好き勝手しているとしとも、自分はああはなりたくない。
でもーー
このままだとこの先、側妃と愛妾と過ごす姿をずっと見ながら、名ばかりの王妃として一生を終えることになる。
もし、公爵と恋仲というものになれば、正確には周りにそう思わせるような演技をする訳になるけれど、私の行く末は変化する可能性が大きい。
《あの二人が惹かれ合って、周りは噂に踊らされ盛り上がっている。
だったら私が王妃様に惹かれて、あなたに振り向いて欲しくて行動しても許されるだろう。
私は、公爵だしね。
側妃問題に傷つくあなたを慰めつつ、徐々に積極的、情熱的に行動する。
もちろん、常に一線を引いて。
あなたに問題があるから側妃をという話が正式に決まった時に、私が名乗り出る》
《私にばかりメリットがあるような》
《そうでもないよ。
ああ、そろそろ行かなくては。
二週間後の晩餐会で答えを聞かせて欲しい》
晩餐会まで三日。
最近は噂話だけではなく、憶測まで飛び交っている。
毅然と振る舞ってはいるが、正直のところかなり堪える。
こんな日々がずっと続くのか・・・・・・。
広すぎるベッドに横になって考えたが、まだ答えは出なかった。
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