彼女があなたを思い出したから

MOMO-tank

文字の大きさ
9 / 46

第9話

晩餐会当日、来客なんて滅多に訪れない私の執務室にあの人エリオット様の側近が姿を見せた。
珍しい事もあるものね。
業務上の連絡事項かと思い、側近にメモを取るように合図すると、意外な言葉を口にした。

「王妃様、国王様がお呼びでございます。
執務室へお越しいただけますか?」

「・・・分かりました。
ひと段落つき次第向かいます」

半年もの間私を避け続けている人の急な呼び出しに、動揺しなかったといえば嘘になる。
でも、こちらが歩み寄りを見せても態度を変えず、人の話を最後まで聞かず、友人と言い張った人物との不貞行為を思い出すと、早く済ませてしまって、自分の仕事を終わらせよう。
そんな気持ちで、何ヶ月かぶりに執務室の扉を叩いた。

「入ってくれ」 

執務室の椅子に座る姿を見ても気持ちが乱れることも無く、少しほっとした。

「ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「なぜ呼ばれたのか、分かってるんじゃないのか?」

「仰っている意味がわかりかねます」

はぁ~っ。
呆れるようにため息を吐くと、

「君がフラン・・・パルディール前侯爵夫人のことを、あちこちで悪く言っているのは知っている。
みんな迷惑してるんだ。
これ以上、馬鹿げたことをするのは止めてくれ」

まるで侮蔑するような目を私に向けていた。

「私は一切そのような事はしておりません」

「白々しい。しらを切るのか?」

「・・・・・・」

「図星を突かれて言葉も出ないか」

「・・・・・・しらを切るも何も、していないものはしておりません。
まさか陛下・・は、片方だけの話を鵜呑みにし、信用されるのですか?
私の話も聞かずに、人を嘘つき呼ばりするのですか?」

あまりの滅茶苦茶な話に、それを信じていることに絶句した。
本当に変わってしまった。
もう何を話しても無駄だと解った。

また言い返してくると思い身構えていたが、陛下は急に動きを止め、今までの勢いを失ったように黙り込んだ。

「・・・・・・じゃあ、君は侍女に、パルディール前侯爵夫人を辱める発言、彼女のドレスを汚す命令や・・・命令はしていないんだな」

「しておりません。
第一、私は自分付きの侍女以外と会話する暇はございません」

「・・・・・・そうか」

「お話がお済みでしたら、もうよろしいでしょうか?」

「・・・ああ」

「では、失礼致します」

「ま、待ってくれ。
君は、叔父上と・・・・・・いや、何でもない」

よく聞こえなかったのでそのまま退出したけれど、気持ちの整理がつかなかった。
執務室まで呼ばれて何かと思えば、悪口を話したか?学生のような幼稚な質問をされた。
あんな話を信用するなんて。
私が忙しく、スケジュールは常に一杯で、他の侍女と会話する暇なんてある訳無い。
そんなこと、知ってるはずなのに。


あの侮蔑するように向けられた目が、あれがこの先も続くかと思うと・・・・・・

『私と王妃様が恋仲になるっていうのはどうだい?』

公爵の顔か浮かんだ。



何事も無かったかのように、陛下のエスコートで晩餐会の会場に入った。
お互いに隣に座った賓客と会話する。
いつもの事なのに、なぜか気持ちが晴れず、笑顔を作るのも一苦労だった。

何気なく辺りを見渡すと、少し離れた場所に一際目立つ男性が目に入った。
その男性、公爵を中心に周りが笑顔に包まれている。
こちらに顔を向けた一瞬目が合うと、かすかに笑顔から心配するような表情に変わったような気がした。 

もう答えは出ていた。

《あのお話、お受けします》

そんな気持ちで頷くように頭を僅かに動かすと、公爵は目を細めて、また周りとの会話に戻った。



私はこの時、全く気づかなかった。
陛下がじっと見ていたことに。




あなたにおすすめの小説

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。