怖い話

つくね

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ゴミ捨て場

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私の住んでいる地域では、毎週金曜日に燃えるゴミの回収があるのだが、山のふもとにある田舎で、ゴミ捨て場自体が公園の横にネットを貼っているだけという簡素な作りなこともあり、金曜日の早朝はカラスによって荒らされたゴミが路上に散乱して、なんとも言えない匂いが辺りに漂っているのが当たり前になっていた。


ある金曜日、ゴミ捨て場に向かうと、精巧なカラスの人形が1つ吊るされてあった。
誰かがカラス対策のために試したのだろうが、なんとこれが効果てきめん。
散らばったゴミの量は半分以下になっていた。


カラスは頭が良いからカカシを設置しても効果が無いと聞いた事があったが、自分と同じ見た目の物が吊るされている光景は頭が良いカラスだからこその恐怖があったのかもしれない。と適当な考察をしながら、いつもと違う異臭のない金曜日に少し上機嫌になった。


次の週、流石にカラスも吊るされているのが偽物だと気づいて、結局荒らされているのではないか、と予想を立てながら家を出ると、2つに増えているカラスの人形と全く荒らされていないゴミ捨て場が見えてきた。
2週続けて清潔なゴミ捨て場、異臭のない朝、これからは憂鬱な思いをせずに金曜日の朝を迎えられる。


次の週、夜中にふと目が覚めた私は、中々寝付けずにいた。
本当はルール違反なのだが、どうせ眠れないなら今のうちにゴミを出してしまおうと思い、外に出た。

ゴミ捨て場に向かうとカラスの人形を大量に持った老人がいる。
この人が対策してくれてたんだと思い、「こんばんは、いつもご苦労さまです。」と声をかけたが返事は無い。
無愛想な老人を横目にゴミをネットの中に入れると手に液体がかかった。袋の中には汁気を含んだ物もあったため、それが手にかかってしまったのだろう。 
手を洗うために小走りで家に戻る途中私は異変に気づく。
手にかかった液体が赤黒く鉄臭い。
そんな物をゴミ袋に入れた覚えがない。
振り返り老人をよく見ると、私の手についた液体と同じものが全身かかっており、手に持つ人形からそれが滴っていた。
怖くなり、急いで家に帰って手を洗っているとインターホンがなった。
私は音を立てないように玄関に向かい、覗き穴から外を見るとあの老人が立っている。
その場にしゃがみこみ、息を殺していると、 ドアの外からぶつぶつと声が聞こえてきた。
「次はルールを守らない人間の対策をしないといけない」
私はその日、朝までその場から動くことが出来なかった。

    
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