イケオジ社長に一目惚れされました

おもち

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同棲

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同棲を始めて、はや三ヶ月。
結論から言うと、僕は隆弘さんのことを好きになってしまった。なんなら同棲から一ヶ月…いや、下手したら一週間の時点で既にかなり好きになっていたと思う。
まず彼はとてつもなく優しいのだ。二十四時間、あの優しさに触れていると本当にダメになる。彼は人をダメにする能力者なのかもしれない。
そしてなにより彼に毎日のように好きだと言われて好きにならないほうが難しい。僕は悪くない、不可抗力だ。
そんなこんなで彼を好きになってしまった僕は彼との毎日の生活をドキドキしながら過ごしてるのに、当の彼は最近はあまり甘い言葉をかけてくれない。会社が忙しくて暇がないだけなのか、それとももう僕に飽きてしまったのか。


「おはよう」
「おはようございます」
「今日の朝ごはんは?」
「焼き鮭とご飯と味噌汁とサラダです」
「卵焼きも嬉しい。ありがとう」

毎朝、少し眠そうにしながら僕を後ろからハグをしてきて朝食のメニューを聞いてくる。
彼のお気に入りは卵焼き。洋食メニューを朝食にしたときに卵焼きじゃなくてオムレツを作ってみたらかなり残念がっていたので、和洋問わずに卵焼きは毎日作っている。
立ち去り際にちゅと頭にキスをしたら彼はメガネをかけてタブレットを確認し始める。メガネ姿もよく似合う。

「おまたせしました」
「ありがとう」

忙しいだろうに、彼はご飯を食べるときはタブレットやら書類を置いて食事に集中する。元々は仕事をしながら食べることも多かったらしいが、僕が作ったものは味わって食べたいからという優しい理由らしい。

「今日もすごく美味しい」
「良かったです。そうだ、今日の夜は家で食べるんですよね?なに食べたいですか?」
「ハンバーグが良い。きのこ入りのやつ」
「分かりました。美味しいの作って待ってます」

料理は好きな方だったけど、面倒くさくて一人の時は手抜きなことも多かった。しかしやはり美味しく食べてくれる人─それも好きな人─がいたら気合いも入る。
隆弘さんは仕事として食事をしてくる日も多いから一緒に夕食を食べること自体は少ないけど、小腹が空いてるからと帰宅して真っ先に冷蔵庫を開けて僕の作った料理を食べてくれるのは幸せを感じる瞬間のひとつだ。
おかげで僕は毎日健康的な美味しいご飯を作るようになった。

「ごちそうさま。美味しかった」

そう言って隆弘さんは彼自身の使った食器に加えて僕の食器まで食洗機に入れてくれる。置きっぱなしでいいと僕は伝えているが出来ることはやりたいらしいと彼は話す。しかし本当は僕の負担を一つでも減らそうという優しさだと僕は気づいている。

髪を整えてコンタクトもセットした彼はスーツを身に着けて、最後に玄関で僕にネクタイを結ばせる。
初めの頃は自分でつけるやり方しか知らなくて、彼を後ろから抱きしめるような形で彼のネクタイを締めていたけれど、練習してしまったので正面からネクタイを整える。せっかく練習したのに彼との物理的な距離が離れてしまって少し寂しい。

「あの、隆弘さん。今日は帰ってくるの早いんですよね?」
「17時には帰ってこられると思う」
「それならご飯食べたあとに少し出掛けませんか?」
「良いね。どこに行きたい?」
「海は好きですか…?」
「好きだよ。とっておきのロマンチックなところに行こうか」

そう言いながら彼は僕の頬に手を添える。僕はその手に頬をすり寄せながらも、このままだと遅刻してしまうのでそっと手を離す。

「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「行ってきます」

本当は下まで見送りに行きたいけれど、さすがに僕も大ぎくがあるので玄関でお別れだ。
それにしてもこのやり取りがあまりに家族過ぎて密かにニヤニヤとしてしまう。
…これでもし彼が僕に飽きてたら、だいぶショックだな。
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