俺だって冒険したい

智秋

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閑話休題 ~俺の独り言~

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はじめは夢だと思ったんだ

いつもの様に夢から覚めて
「ああ、びっくりした」と呟いて起きるはずだった

起きたら、いつもの身支度をして外出し

近所のカフェで食事して、予定をこなす

帰宅して風呂やら済ませて就寝して

そして起きたら、見たことない壁やら枕

(昨日は飲みに行って潰れたのか?)

動くと流れ落ちた長い髪は濃い蜂蜜色

(うわぁ…ガイジンさん)

手足も細長く、美しい造りの人形みたいだ

体は酒による怠さもない

だが、起きれない

暫くしてさらに驚いたのは、自分が赤ん坊であること

あの蜂蜜の色した髪は添い寝していた母らしき女性だったこと

あぶ、とか、うー、とか

話しても単語にさえならない

(美女の母にイケメン紳士の父とか…映画のみすぎか)

この日から自分は貴族の子女として生きていく事になった

*‐*‐*

その夢は覚めることなく続き

赤ん坊(=俺)が聖霊に気に入られ、周りに大切に育てられていき

自我が芽生えた頃に人格が枝分かれしているようだ。と感じた

会話が出来るだけでも感動したが、この俺を一部と認識しても受け入れてくれた可愛い子は朗らかで癒された

名はシェルミナ

母親の美しさと父親の賢さに、聖霊の加護を授かった清く美しく健やかな女の子

貴族としても裕福で、実に恵まれた環境だ

人間としての知識は俺なりに解釈しなにやら恩恵が影響している様たが、聖霊に気に入られたのはシェルミナの魂だった

洗礼の際に起きた奇跡は割愛するが、俺とシェルミナは仲良く過ごしていた

『ねぇ、あの子。可愛いお耳があるわ』

『ああ、獣人だな。遥か昔に神に使えた霊獣や神獣と選ばれた人間の末裔だ』

『ま、つ…えい?』

『神様と一緒に絵に描かれた奴らは解るよな…アイツらと、シェルミナみたいに話せる人間の子供の子供だよ』

『すごいね』

『可愛いな。ケモミミ』

『ケモミミ可愛いねー』

基本的に素直だし、感受性豊かで、好奇心も人並み?なシェルミナは俺とテレパシー的に話すため、にこにこしながら獣人の子供らしき子を眺めていた

(触りたがらないのは、大人やその子と初対面だから、かな?)

貴族の子女だとむやみやたらに触っちゃいけない、声を掛けるなら両親か侍女たちに了解を得たら、問題ないと理解してるからだな、偉い偉い

『あの子なんの獣人かな』

『ん~、ピンとしてるから犬科?』

『ビートみたいにたくさんの音を聴くのかしら?』

『あちらも貴族だな、あの子に聞くか』

『お父様にお話しして大丈夫かお訊ねしましょう』

可愛いドレスのスカートをつまみ、父の公爵に相談するとにこやかに相手の親と話してくれた

可愛いお耳の女の子はベルと名乗り、シェルミナと仲良くなった

後に男爵から伯爵まで出世し、公爵と仲良く農業改革をする家族との出会いだった

*‐*‐*

だがある日を境にベルとは会えなくなった

シェルミナも年頃の乙女になり、将来の為に必要な道を模索しはじめた


なぁ、シェルミナ

俺はお前が幸せな人生を終えるその時

聖霊たちと共に天まで昇れるだろうか

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