俺だって冒険したい

智秋

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お見合い相手 … 大公子息(魔術師)様

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前回のお見合いから季節が移り雨期になりました

ごきげんよう、皆様

わたくしシェルミナは公爵家の温室を一部改築した新しい浴室に居ります

「では、いきます!」

湯口からジャバババとお湯が流れ出し、乳白色の熱いお湯からは少し自然の香りがするのが懐かしい

浴槽の側にかがんで指先を貯まってきたお湯にいれ、じんわりと染みる湯加減に頬が緩んでしまいました

「ふふ。いいお湯だわ」

「良かったです。お嬢様の発案された設備が上手くいきましたので、湯の入れ替えや温度調節ならレバーで出来ますよ」

がっしりした体躯の男が湯口など確認して、笑顔で侍女たちを見た

以前は関所の宿場町のまとめ役だった彼、リュウセイは、我が領内の工房で配管の技術者になり、今回の源泉汲上仕掛や浴槽の設置、浴室を改築する全てを手掛けてくれた転生者(である俺の)同輩なのだ

彼は温泉旅行が趣味のサラリーマンの転生者で、私の日本あるあるに気付いて名乗り出た御仁である

(たしか以前は40代後半で独身だったそうだけど)

「これで大分楽に入浴出来そうね」

銭湯の広さはまだ無理だと言われ、泣く泣くゆったり家庭サイズに致しました

目指すは、富士山ですが何か?

温室の硝子を板張りにした浴室には、脱衣場や身体を清める洗い場のタイルの床の脇や浴室の壁にはお湯を使った床暖房もどきで、とある仕掛けを使えばサウナにもなるのである

使用人達は貴族が使用した後や時間のあるときに身体を清めると聞いて、異世界あるあるに気付いた私は主治医の先生と相談して入浴健康法を実施したかったのですが…

あつあつのお湯を作っては運ぶため、使用人にはかなり危ない重労働なのだ!

流行病や疫病なんか蔓延していたり、戦後の日本経済の発展を考えれば小さいことだろうけど、嫁入り前の女の子や少年達がお腹を空かせてふらふらと働くなんて不憫で仕方なかった

領内の住民で動ける若い子供には、まず手洗いうがいをさせて食事をさせ、古い貯蔵庫を改築して湯あみさせ、服は寄付で集めた物を着せて働かせた

お父様やお母様も賛成して下さったこの働きは若い子供に元気ややる気をもたせる事も出来たのと、働く親や年寄りには昼間面倒をみる人手を考えずに済むと納得して貰えたので一安心です

話を戻しますわね。今回の温室付近にある源泉をあてたのは天啓じゃない?と驚いたのも束の間、こんな匂う熱い湧き水どうすんだよ。な領民達を宥めて配管の技術者を集めました。

苦節半年ですが、夏前に出来上がって良かった

「さ、今日は私が一番に入るから仕度しましょうね♪」

この浴室には色々工夫致しました。私の専属侍女ふたりが居て仕度をしてくれてます

「お嬢様、こちらへどうぞ」

「リュウセイ、ご苦労様でした」

「はい。では楽しんで下さい、シェルミナお嬢様」

彼はニカッと笑い浴室から出て行った

シェルミナから指示された入浴方法で、侍女の手で身を清めて貰い、薄手のリネンを巻いて浴槽にゆっくり浸かった

「ふぅ、気持ちいい」

天窓は元々使われていた硝子の再利用で日中なら日の光で充分明るい

これはお父様達にも勧めよう。と束ねた髪を振らないように肩にすくった湯をかけた

「お嬢様、失礼します」

「あら、んっ…どこでこれを?」

小さなリネンを肩にかけられ首や肩を揉みほぐすにマギー驚きつつ尋ねたら「リュウセイが(照)」と恥ずかしそうにしていた 

(あんにゃろう、私の侍女に手を出したな)

本来は日本で三助という古くは湯浴みに携わる専門の仕事があったが彼はサラリーマンだったから本職さんにして貰ったのかもしれない

「ありがとう。のぼせる前に上がるわね」

長湯はいけないから、ふかふかのリネンを広げた侍女に優しく拭われてから脱衣場の藤細工に似た柔らかな寝椅子に腰かけた

髪も乾かして貰い、身体にはオイルを塗って貰う

乾燥で痛くならないようにケアするのも貴族令嬢の嗜みだそうです

うとうとした後、寝間着を着せて貰い自室の寝台までふわふわと移動して休んだ

(やっぱり、あったまると寝つきが違う)

久しぶりにぽかぽか気分になった私は瞬く間に夢の中へ旅立ちました

*‐*‐*

その人はしなやかな体躯をしていた

シルクシャツは滑らかで肌触りがいい

品の良いベストには懐中時計の鎖

細いリボンのループタイとタイピン

なぜか、顔は見えないが自分の右手を掴み

指先へとくちづける貴方は…

     だ     れ    ?  

*‐*‐*

我国の王族で公式の王子・王女は少ない

先代の王兄で現大公領の領主邸に赴いた青年は、重い足取りで回廊を歩いていた

相続されない地位である大公の父から見合いの話を受けたのは初めてではなかった

だが、彼には昔から可愛がっている女達がいる
独身である彼には、ある意味【利害の一致】した相手を見つけては、生態系の本能を鎮めていた

簡単に言えば、(体の関係のみの)情婦だ

魔力が枯渇しない体質のせいで、人並み以上の精力があり素人では相手にならない

東方の気功を学び、房中術を駆使して問題が深刻にならない様に十二分に気をつけていた

「最近のアレはそのせいか」

魔術師としても一流の青年は予知夢を見る

ぼんやりとした夢と抱き心地の良い女

今回の見合い相手は評判の良い公爵令嬢で、容姿はシャルルの薔薇と謳われた、古代魔法の大家でもあるエドモンド公爵夫人の愛娘

聖霊に祝福された神子

発明が趣味のエドモンド公爵家の当主が滅多には連れ出さず溺愛しているらしいが、自身も社交界には興味がないため顔さえ判らない

昔、古代魔法の適性を視るために喚んだ魔術師は女で閨を伴にした時に尋ねた

噂でしかなかったが、古代魔法を駆使する1部が淫魔と契約して精気を吸い、若く美しい姿で生きるのか?と聞いたがその女魔術師は笑いながら告げた

「希代の古代魔術師はシャルルの薔薇と名高い方です。今も古代魔法の権威ですが、婚姻された夫君と相性のいい組み合わせであれば、さぞ美しい魂の赤子がお生まれになるでしょうね。適任があれば男なら成人して淫魔も使役できますし、女なら最高の情交が得られますわ」

ただし、命の保証はない

「我らは皆が生命の源を理に縛られてますわ。とかく、聖霊の祝福は恩恵をもたらしますが、障害や弊害が多く生きにくいでしょうね」

魔法の適性や聖霊の加護は連れ合いや身内にも影響がある為、あまり公表されない

ならば、なぜかの令嬢は有名なのか

答えは我が母になる

令嬢の洗礼式に招かれた母は先天的盲目であるためか霊力が強い巫女だった
占いや予知が当たる程に発言力が強かったが、常識的で成人と共に神殿を辞して王子と婚姻した

シャルルの薔薇である子爵令嬢とは子女学院にて仲が深く、互いに公爵夫人と大公夫人となった後も変わらず付き合いがあり、王族の立場でもあった為招かれたのだ

祝福の品を渡し、愛らしいオーラへと近づき清めた指先を伸ばした

愛らしい赤子のもみじの手を指先で感じた瞬間に溢れだしていた聖霊の数に驚愕したという

『私、あの様な美しい聖霊達を感じれたことは今までなかったわ』

聖霊の樹から虹色に輝く木漏れ日は聖霊界からの恩恵の証

ありとあらゆる聖霊が動物の姿で赤子を慈しむ様に見つめていた

頬を撫でる風は暖かくやわらかく撫でていく

まるで聖霊界の森へ誘われた様だった。と母は話していた

神子の従兄が受け取った錫杖は公爵の宝物庫にしまわれたそうだが、年に数回令嬢が手にして儀式に使うだけ

自分には魔術師として過分な適性があるからか、魔力の研究をする傍ら聖霊の加護は別次元の研究になる

手始めにお茶でもしながら、その話を聞いてみたい

もしかしたら、あの夢の女かもしれない
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