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中学生

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「お帰りなさいませ、お嬢様」



「ただいま。お父さんとお母さんに話があるの。席を用意して貰えない?」



「は……はい、かしこまりました…」





 泉屋家のお手伝いさんのうちの1人、潤子さん。髪は後ろでお団子にしてあり、優しい印象のお婆さんである。



 記憶が戻る前までは、父と母の事を「パパ」「ママ」と呼んでいたので、急に「お父さん」「お母さん」になった事に驚いたみたいで、何かを思案しながら潤子さんは返事をした。



 両親は芸能人なのでお互いに忙しく、私は基本1人で食事をする。1日二人とも帰ってこない事も多い。今日はたまたまドラマの撮影が巻いたようで、久しぶりに家に母がいる。父も映画の撮影がひと段落したと連絡かあったのでじきに帰ってくるだろう。



 りビンクに1人待っていると、ワンピース姿の母がまず入ってきた。体のラインがしっかり出る型をここまで着こなせるのは母以外に中々居ないと思う。





「麗華、久しぶりね。貴方からは珍しいけどどうしたの?」



「まぁ…少し話があって………」



「ふふふ、どんな話なのか楽しみね~」





 とワクワクしている母に何だか申し訳ない気持ちになった。

 ある意味楽しい話かも知れないが、確実に両親が固まること間違いなしである。



 暫く母と話をしていると、父が入ってきた。父は顎髭が少し生えており、マスターに似た雰囲気がある。マスターの事が好きなのは、父に何処と無く似ているからなのかもしれない。



 父が席に着いたのを見計らって私は話を切り出す。うだうだ遠回しに言っても仕方が無いのでド直球で言う。





「私と蓮の婚約を破棄してください」





 案の定二人ともピシリと固まる。父なんて口が開いてしまっているので腑抜けにみえる。暫く意識を何処かに飛ばしていた両親は、生き返ると私の元に走って来て、母は私の手を握り、父は私の肩に手を置いている。非常に焦っているようだ。





「それは本気なの?麗華」



「うん」



「蓮君はなんて言っているんだい?」



「良いって」





 すると母と父は2人でコソコソ会話をし始めた。





「麗華は本気のようね」



「あぁ。急にどうしたんだ……」



「喧嘩でもしたのかしら……」



「でも麗華と蓮君だぞ……」



「そうね………」



「蓮君が簡単に婚約破棄するとは思えないが……」



「………あれで気が付かないうちの娘も……」





 私には全く会話が聞こえない。最後に溜息を同時についた父と母は、「如月に打診しておくから」と、蓮のお父さんに言ってくれることを約束してくれた。



 これで蓮との関係は完全に絶った。……と思われた。





 *・*・*





 一週間後、久しぶりに1日休みの父から呼び出された。物凄く良い笑顔でキラキラが舞っている。





「麗華!!!安心しろ!蓮君は婚約破棄しないそうだ!!」



「……は?」





 父から告げられた衝撃的な事実に私は思わず間抜けな声が出てしまう。父は私が蓮に婚約破棄の話を持ち出されたと思っているようだ。訂正しなければ。





「お父さん、婚約破棄したいの」



「………」





 ニコニコするのを止めず、私の反論に何も言わない父。





「お 父 さ ん ?」



「………っ!!麗華……お願いだ。婚約はそのままにしてくれ。じゃないと如月に……!」





 一応有名俳優で、かなり芸歴も長いので、芸能界では割とベテランの方の父が、ヘロヘロと青い顔をしている。蓮のお父さんに何をされたんだ……?



 やはりきちんと文書にしなければ駄目だったと自分の詰めの甘さを痛感し下唇を噛んだ。よし、強硬手段だ。蓮の親友、東雲晴人に「新・恋人役」をやってもらおう。晴人ならば、蓮と対等に話すことが出来る。



 そうと決まれば私は早い。早速晴人にメールを打った。





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