Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

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 運命の人なんて、そんなのは二次元の妄想だ。
 例え三次元あったとしても、それはドラマかなんかの話しで、そこには原作者と脚本家と、ああ監督? それに合わせた役者がいて、運命の出会いを演じてるってカラクリがある。
 何が言いたいかってーと、それらは全てフィクションなんだ。


 オレの前に運命の人物なんて出てこない。


 絶対絶対、絶対にだ。

 何でそんな頑ななんだよって思うか?

 答えは簡単だ、今までにそういう女の子に会わなかったからさ。
 じゃあお前がいかほどの女の子に出会えたかって??

 そうだな、仕方ない、教えてやるか。


 オレがこないだ転園した幼稚園は214名いたそうだ。
 年中さんはバラ組さんユリ組さんだなんて麗しいクラス名でだな、フン、もちろんオレは高貴なバラ組さんであった、れいな先生は時に厳しく優しい先生だったぞ今も大好きだ、虫が好きな所が苦手だったが、お泊り保育で泣いてしまいそうだった時には一晩中側にいてくれる、非常に気遣いのできるいい女であった。
 が、彼女は運命の人ではなかった、なぜなら体操の先生とデキ婚したからだ。
 で、クラスの男女比は半々だったから34人位は女子だった。
 その中でステファニーちゃんってすっげー可愛いハーフの子もいた、桃香ちゃんって元気でいい子にらぶりちゃんって頭いい子もいたんだよ。
 他にも優しくて可愛い子はたくさんいた、いたぞ。
 結婚する! とか話してる子達もいた、いたぞ。
 ○○君大好き!! って話してる子もいた、いたぞ!!!
 でもな、オレは全くそういう子達にドキっとか何にも感じなかったんだ。
 そう、運命ってもんを感じなかった、そして彼女達から好きなんて言葉を貰った日もなかったな。

 ほら、いないだろ? 運命なんてないのさ!

 そんで、あれは年長さんの時、小学校に上がる前に分譲でいい家があったって、引っ越す事になった。
 記憶にないのだが、児童館で仲良くしてもらった子達とお別れするってんで、オレは久々に子供センター的な所にも連れて行かれたけど、再会を懐かしんで引っ越しに涙するのは母さんだけで、オレは一緒の幼稚園じゃない子の顔は覚えてなかったし、乳児の時に一緒に遊んでいたであろう子(女子)を見てもトキメキも感じなかった。

 ほら、だから運命なんてないんだってば!

 で、お前、何をそんなにドキドキや運命にこだわってんだよって話なんだが、アレだ。
 オレが大好きな【覆面ライダー ダイド】が愛の力で弱点を克服しててだな、もしかしたらオレも愛の力があれば弱点を克服できるのでは?!
 という戦法だ、何、心配するな! オレに弱点などないのだが、あった時に愛の力があったら無敵だな、と思って、好きな子いないかなって探している。
 そう、運命の人!! そいつがいたらオレ最強だろ?!!

 しかーし、どうやら四年生きた位じゃ運命の人に出会いないみたいだな、無念。

 そんなんで、いないならまあそれでもいいやとゲームをピコピコやって、幼稚園の途中から転入だし、友達いねえしつまんねえなあって母さんの引っ越しの作業を横目で見ていた。
 人見知りなどはしない、なぜならオレが人を知る必要などないからだ! 貴様がオレを知れ!

 母さんは「初めが大事よ! 楽しい家族だってアピールしなきゃ」って、意味不明なギャグを何通りも考えていた。
 新しいもん好きだからな、いつになくワクワクしてるよ。

 オレは新しい幼稚園や小学生になったら今度こそ運命の人が現れるのかなってそんくらい、つっても実際現れたとしても何すんのか、具体的なもんは考えないまま引っ越しの日が来てしまった。

 残念な事に良く晴れた気持ちのいい朝だった、「なんて美しい船出! お日様が私達の味方をしてくれてるわ」って母さんがうるせーうるせー。
 引っ越し業者の後を車で付いていって地方から都心へ。

 午前中には到着して荷解だ。新品の家はピカピカで新築の家の匂いに正直オレも胸を躍らせていた。
 一度だけ内覧に来た事があって、まさかその時は本当に引っ越すなんて思わなかったから、ずっと端っこで恐竜の図鑑見てたんだよなあ。

 うちの隣は左は道路で、右が民家。
 隣の家にはオレを同じ年の子供がいるんだって、内覧の時は特に挨拶もしなかったし、母さん達だけで先に家具を置きに来た時は旅行中でいなかったらしい。

 トラックから降りて、三人で新居を見上げてこれからここに住むのか……と変な気持ちだった。
 で、隣の家を見たら新井の表札の下に漢字が並んでて(多分両親や家族だろうが、すまんがまだ読めない)
 一番下に読めそうなのがあった。


「んーと……は、い、じ?」

「あら、翔! もうカタカナはマスターしたの?」
「読めないのもあるけど……」

 頭撫でられて、そうかハイジであってるのか、ハイジ……ハイジ?


 何だか胸がズキンってした。


 だってハイジってハイジだろ? アルプスに住んでるアイツじゃないの?
 あの元気で大体裸足でヤギと遊んでる、あのハイジか?
 平成の? しかも東京都豊島区にそんな無邪気な女子がいるのかよ、あ、柿の木あんじゃん、え? あーゆー木にもよじ登って柿取っちゃうみたいな?
 ふ、ふーん? へえ、ハイジちゃんか……会ってみたいな。

 なんて、僅かな好奇心のような訳のわからない感情が生まれて初めての胸に渦巻いて家に入ってからもソワソワした。

 ここが翔の部屋よ、と開け放たれた二階の真っ白いフローリングの部屋には、もうベッドが届いてて勉強机は小学校に上がってから選ぼうって、床にはオレの大好きな図鑑や絵本が入った段ボールや服が置かれていた。
 自分じゃできないだろうから、後で母さんとやろうねって言われて、ありがとうって抱きついておく。

 で、段ボールの中身が気になって開けたりして、そうだそうだこれ大好きな飛行機の模型入れたんだって出してベッドからびゅーんってジャンプして遊ぶ。
 そっか、もうアパートじゃないから、飛び跳ねても怒られないぞ!
 部屋の中で一頻り走り回って遊んで、不意に足を止めた。
 もしかしてそのうち、ここでハイジちゃんと遊ぶのかな、なんて思ったんだ。
 確か幼稚園一緒らしいぞ、行きも帰りもバスだって、隣に座ったり……すんのかな。

 飛行機じっと見つめて、そっかこういうんじゃなくて、幼稚園の女子達はプリキュアごっこしていた気がするな、と思い出して飛行機を箱の中にしまっておいた。

 硬いベッドに寝っ転がって、うーん……急に一人で寝るのは無理だなあ、後で枕を父さんのベッドに持っていくかと電気を眺めていたら、下から声がした。

「翔ー? 一段落ついたからお隣にご挨拶に行くわよー」
「わ、わかった!!!!」

 飛び起きて、つ、ついにキタ!!
 ハイジちゃんにご挨拶だって!

 勝手に足が駆け足になって階段を降りて、玄関で急ブレーキ!
 おっきな鏡の前で少し体を見たりなんかして、母さんも緊張してる。

「怖い人だったら、どうしようかしら。何度か来てるんだけどいつも会えなくて、今日が初めましてなんて緊張するわね。ねえ父さん、挨拶はやっぱり畏まってがいい? それともお道化る感じ? この千疋屋のゼリー感じ悪くないかな?!」
「大丈夫だよ、同じ年の子を持つ親同士きっとうまくいくよ、そのままの君が一番だとオレは思うよ」
「オレは何て言えばいいの?」
「未来を翔る、翔です!! なんてどう?!」
「絶対言わない」

 よくわかんないけど、なんか格好悪いから絶対いやだ! ああもう! いつも母さんは緊張して変な事言うから心配なんだよな。
 父さんは、初めにやらかしとけば、もう恥ずかしいことなんてないだろう、ていうけどそういうもんかな、オレはいつでも恥かしいぞ。

 で、ハイジちゃんの家の前に立って中々母さんがインターホン押さないもんで、父さんが代わりに押す、隣に引っ越してきた沖田ですって言えば、女の人が【い、今直ぐ行きます!!】って慌てた声で返してきた。

 時間は昼前だったな、母さんは緊張マックスでオレの手を握ってきて手汗が凄かった。
 で、玄関から出て来た女の人は「ごめんなさーい!! 昨日色々夜更かししてたもんで!!」
 とまさかのパジャマ姿で出て来たのだ。

「お待たせするのも悪いから、このまま来たんですけど、また改めて挨拶しに行きますからね!! もう昨日家族で遊んでて休みだからそのまま寝坊してグダグダで……」

 眼鏡にパジャマ姿の新井君お母さんも衝撃的だったが、そうかならハイジちゃんもパジャマ姿……?!!
 お父さんらしき人も、お恥ずかしいです~って照れながら出てきて、次はハイジちゃんか!?
 と思った所で母さんがオレの手を掴んで頭上に上げると、変なポーズ取って。

「今起きた?! の沖田です!」
「え、母さん……何それ」

 何かオレまでしてるみたいになってるし、止めてくれよ。
 って言う前に、出会いの舞!! ってやり出しでいつも以上にテンションが空回りしてるぅうう!! 父さん止めて! 
 これにはパジャマ姿の新井夫婦も目が点だ、いやオレ達も凍り付いたよ、そしたら「あははははははは」って一際高い笑い声が辺りに響いた。
 玄関を見れば、そこにはボサボサ頭でパジャマ着た奴が一人立ってた。
 何か、バカそうなヤツ。

 そんで新井さんちのお母さんは言った。




「ほらハイジ! 早くこっち来なさい」

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