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9、鞘
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メシルが顔を近づけてきて、お互い顔が真っ赤で鼻息だって恥ずかしい位に荒い、でもキスしたい胸の中おかしくなってる。
またメシルとキスしたい、きっと彼女も同じ気持ちなんだと思う、口をムズムズさせてる、僕も口の中が疼いてる、さっきの細くて小さい舌を今度は甘噛みしたいって思ってる。
いいのか、人でもなさそうだし彼女でもない、何の病気を持ってるか分からない。こんな得体の知れない人としたらもしかしたら死んじゃうんじゃないのかとか、色んな考えが頭を巡るのに、頭の中はセックスしたいって股間も痛い位反応してる。正直できなくてもいいから、熱く溜まってるもの吐き出したい。
「メル……」
「たろちゃん」
とんって僕の胸に頭を預けてきて、メシルは乱れた熱い息を落ち着かせようとしてる、【したい】と彼女は言ったんだから、今のこのメシルを鎮める方法は【する】しかないんだ。
体の準備は出来てると言うのに、ここにきて不安すぎて金髪の髪を撫でるだけにとどめている。
そう、その原因は何を隠そう美奈子さんで僕に対する不満の中でセックスが下手、という点があったからだ。
あれは凄く傷付いたし、それを公言してたかと思うと居たたまれなくなった。
そもそも、僕の初めては彼女だったんだ、何から何までリードされて、ガッツクというか少しでも興奮する素振りでも見せようものなら「ふふっ」と上から目線で「可愛い」って笑われて、初めは恥ずかしさと大人の女性の態度に身を任せていたものの。
段々とその「子供なんだから」とか「これが好きなんでしょ」な感じがちょっと違うなって思えてきて、セックスに対して消極的になっていったのは確かだった。
美奈子さんの家に招かれた時に本棚に【年下童貞の彼氏が毎晩迫ってきて困ってます!!】的なTL漫発見してしまい、そういうのが本当に嫌なのか、それともプレイ的に興奮してるのかと思ったら、ますます引けてきて、誘われなければしないでおこうと、自分からは行かなくなった。
例えば、もっと煽る様な言葉言いたくても、「またまた強がっちゃってー」なんてはぐらかされて言われると冷めるんだ、セックスマウント? わからんけど、尊敬はしてたけど、何でも自分が優位に立とうとする彼女に正直萎えていた。
僕はもっともっと、と言いなりになるまで犯したかったんだ、でもそれが現実では異常なのかってわからないし、そういう傾向を見せれば、無理しないのって言われるし、セックスが苦痛だった。
だが、自分のこの大人し眼鏡で隠していた、本心の加虐的な所を見せて、引かれるのもバカにされるのも嫌で何も言えなかった。
溜息ついて眼鏡を直していたら、突然メシルがバッと僕の視界を塞いで、というか膝に対面で座ってきた。
「超ムカツク」
「え」
「たろちゃん今他の女の人の事考えてるでしょ!」
「あッ……」
その通りで、視線を逸らしたら、ぎゅっと抱き締めてきて、柔らかい体がまとわりついてくる、メルって呼べば顔をフルフルした女神様の髪は甘いい香りがした。
「女の子の前で他の子考えるのサイテーなんだ!」
「ごめん」
「謝れば許されると思ってるの嫌いー女神だって女の子に変わりないんだからね!」
「ええっとね、好きな人を考えていた訳じゃない、トラウマみたいな、そういうのが横切ってた」
「トラウマ? って何?」
「怖い過去みたいなもの」
「それを今考えてどうなるの」
「ん?」
僕の胸にグリグリ額を押しつけていた金髪が上を向いて、真っ直ぐな蒼い瞳が言う。
「あなた達はそういう意味のない事ばかり考えるね。過去の恐怖とか未来の不安とか他人の目とか世間体」
「ああ……」
「一番大事なのは今なのに、トラウマがあるなら克服するしかないのに、なかったかのように後ろめる、隠す、見ないようにする、押し込める、蓋をする。でもその先に希望はないよ。逃げたってまたこうやってでてくるじゃん。わかってるんでしょ? たろちゃんは臆病で愚かで弱い、脆いね? でもそれが人間。私はそれを導く女神」
「そっか」
「私は何も怖くない」
ふわっと眼鏡にかかる前髪が風もないのに揺れた、洗礼された蒼に射抜かれて、真の心が痛かった。
苦しい、少女なのに、そっか少女に見えるけど、本当にこの人は女神なのかって思ってしまった。
そんなのわかってるけど、怖いよ。それはそうなんだ、僕はこのまま逃げるつもりなのかって、男性だけの職場を選んでもう彼女なんて作らないってした、でもいずれ、また壁に当たるってわかってた。
メシルの細い指が、両の耳に伸びてくるきゅって淡い力で掴まれて、誘導されるように顔を下げる。
幼い顔が近付いて、薄くメシルの唇が開いた。
「虎太郎」
「メシル」
抱き寄せて、名前が響き合って思考が狂う、生まれて初めて見たビー玉のような透き通った蒼い瞳と見つめ合ってキスをした。
溜まった熱が弾けて、わざと二人で舌が擦れ合う所を見て興奮を高めて、くちゅくちゅ卑猥な音がする、もっと激しくディープキスの音が聞きたい、でも【そういうのAVみたいのが好きなの?】って言われて、しなくなったんだ。AVの妄想を抱くなって言われてるような気がして。止めた。
涙が出そうになる、僕がしたかったセックスってなんだったんだろうって、キス一つでこんな苦しい。
もっと体が擦れる音を感じたい、この人と交わるって証を刻みたい。
小さな顔を動けないようにガッシリ掴んで口付けして、何度も向きを変えながら口を食む。
メシルはあんっと蕩けるような声を出して、体にしがみ付いてきて、捩じ込んだ舌に濡れた舌を絡ませてくる。
甘いって言っていた唾液が二人の口にまみれて、こんなキスした事なくて、でも止まらない。
呼吸苦しくなって、見つめあう。
「胸、痛いね? 虎太郎」
「うん、痛い。好きって言っていいのかな」
「うん?」
「僕は君の事何も知らないけど」
「そうだね、私も今回は何も知らずにここまで来たよ」
細い背中を撫でて反対の手で張りのある瑞々しい頬を撫でる、親指で瞼をなぞればメシルは気持ち良さそうに目を瞑る。
「僕の体にはアイテムが入ってるから、君にこんな欲情して、愛しいような気持になるでしょう。そんな気持ちでメシルは抱かれていいの。したことないって言ってた」
聞けば、メシルは瞬きした。
瞬きして、少し悲しいそうな、瞳をする。
「虎太郎のバカ、さっき言ったじゃない。大切なのは今でしょって」
「うん」
「じゃあ、あなたは今が私が付き合ってる女の子だったら絶対に安心するの? 違うでしょ? それはそれでまた不安や不満が出てくるんでしょう? じゃあ何が大事なの?」
処女で少女な女神に諭すように言われて、頷いた。
「メシルが大事だよ、でもこれが、この感情がアイテムの力だったら悲しいかなって思っただけ」
「…………そっか、そうかたろちゃんいい子?」
「うん、君を本心で好きって言わないとって申し訳ないなって」
抱き締め合って、どうにもできない。息の置き場。
「好きじゃダメかなたろちゃん」
「好きでいいかメル」
そんなん可笑しいけど、可笑しいとこなんて今始まった事じゃないし、またキスして額を合わせた。
そしたら、メシルが下半身に手を伸ばして、僕の唇を舐めながら。
「でも、鞘って言っても、体のとは決まってない気がするんだよね」
「うん?」
メシルは硬くなった下半身を躊躇なくぎゅっと握り締めてきて、突然の刺激に腰が浮く。
僕の反応を見て、ぞくっとメシルは震えると、また体温を上げた。
下から唇を押しつけてきて、口を開けば小さな舌が動いてる、僕の舌を甘噛みしながら、スーツの上から擦ってきて、唾液の糸を引かせながら言う。
「鞘って言ってもこっちかもしれないです」
「鞘?」
「もしかしたら、お口が鞘かも? ここでいけるかもしれません」
またメシルとキスしたい、きっと彼女も同じ気持ちなんだと思う、口をムズムズさせてる、僕も口の中が疼いてる、さっきの細くて小さい舌を今度は甘噛みしたいって思ってる。
いいのか、人でもなさそうだし彼女でもない、何の病気を持ってるか分からない。こんな得体の知れない人としたらもしかしたら死んじゃうんじゃないのかとか、色んな考えが頭を巡るのに、頭の中はセックスしたいって股間も痛い位反応してる。正直できなくてもいいから、熱く溜まってるもの吐き出したい。
「メル……」
「たろちゃん」
とんって僕の胸に頭を預けてきて、メシルは乱れた熱い息を落ち着かせようとしてる、【したい】と彼女は言ったんだから、今のこのメシルを鎮める方法は【する】しかないんだ。
体の準備は出来てると言うのに、ここにきて不安すぎて金髪の髪を撫でるだけにとどめている。
そう、その原因は何を隠そう美奈子さんで僕に対する不満の中でセックスが下手、という点があったからだ。
あれは凄く傷付いたし、それを公言してたかと思うと居たたまれなくなった。
そもそも、僕の初めては彼女だったんだ、何から何までリードされて、ガッツクというか少しでも興奮する素振りでも見せようものなら「ふふっ」と上から目線で「可愛い」って笑われて、初めは恥ずかしさと大人の女性の態度に身を任せていたものの。
段々とその「子供なんだから」とか「これが好きなんでしょ」な感じがちょっと違うなって思えてきて、セックスに対して消極的になっていったのは確かだった。
美奈子さんの家に招かれた時に本棚に【年下童貞の彼氏が毎晩迫ってきて困ってます!!】的なTL漫発見してしまい、そういうのが本当に嫌なのか、それともプレイ的に興奮してるのかと思ったら、ますます引けてきて、誘われなければしないでおこうと、自分からは行かなくなった。
例えば、もっと煽る様な言葉言いたくても、「またまた強がっちゃってー」なんてはぐらかされて言われると冷めるんだ、セックスマウント? わからんけど、尊敬はしてたけど、何でも自分が優位に立とうとする彼女に正直萎えていた。
僕はもっともっと、と言いなりになるまで犯したかったんだ、でもそれが現実では異常なのかってわからないし、そういう傾向を見せれば、無理しないのって言われるし、セックスが苦痛だった。
だが、自分のこの大人し眼鏡で隠していた、本心の加虐的な所を見せて、引かれるのもバカにされるのも嫌で何も言えなかった。
溜息ついて眼鏡を直していたら、突然メシルがバッと僕の視界を塞いで、というか膝に対面で座ってきた。
「超ムカツク」
「え」
「たろちゃん今他の女の人の事考えてるでしょ!」
「あッ……」
その通りで、視線を逸らしたら、ぎゅっと抱き締めてきて、柔らかい体がまとわりついてくる、メルって呼べば顔をフルフルした女神様の髪は甘いい香りがした。
「女の子の前で他の子考えるのサイテーなんだ!」
「ごめん」
「謝れば許されると思ってるの嫌いー女神だって女の子に変わりないんだからね!」
「ええっとね、好きな人を考えていた訳じゃない、トラウマみたいな、そういうのが横切ってた」
「トラウマ? って何?」
「怖い過去みたいなもの」
「それを今考えてどうなるの」
「ん?」
僕の胸にグリグリ額を押しつけていた金髪が上を向いて、真っ直ぐな蒼い瞳が言う。
「あなた達はそういう意味のない事ばかり考えるね。過去の恐怖とか未来の不安とか他人の目とか世間体」
「ああ……」
「一番大事なのは今なのに、トラウマがあるなら克服するしかないのに、なかったかのように後ろめる、隠す、見ないようにする、押し込める、蓋をする。でもその先に希望はないよ。逃げたってまたこうやってでてくるじゃん。わかってるんでしょ? たろちゃんは臆病で愚かで弱い、脆いね? でもそれが人間。私はそれを導く女神」
「そっか」
「私は何も怖くない」
ふわっと眼鏡にかかる前髪が風もないのに揺れた、洗礼された蒼に射抜かれて、真の心が痛かった。
苦しい、少女なのに、そっか少女に見えるけど、本当にこの人は女神なのかって思ってしまった。
そんなのわかってるけど、怖いよ。それはそうなんだ、僕はこのまま逃げるつもりなのかって、男性だけの職場を選んでもう彼女なんて作らないってした、でもいずれ、また壁に当たるってわかってた。
メシルの細い指が、両の耳に伸びてくるきゅって淡い力で掴まれて、誘導されるように顔を下げる。
幼い顔が近付いて、薄くメシルの唇が開いた。
「虎太郎」
「メシル」
抱き寄せて、名前が響き合って思考が狂う、生まれて初めて見たビー玉のような透き通った蒼い瞳と見つめ合ってキスをした。
溜まった熱が弾けて、わざと二人で舌が擦れ合う所を見て興奮を高めて、くちゅくちゅ卑猥な音がする、もっと激しくディープキスの音が聞きたい、でも【そういうのAVみたいのが好きなの?】って言われて、しなくなったんだ。AVの妄想を抱くなって言われてるような気がして。止めた。
涙が出そうになる、僕がしたかったセックスってなんだったんだろうって、キス一つでこんな苦しい。
もっと体が擦れる音を感じたい、この人と交わるって証を刻みたい。
小さな顔を動けないようにガッシリ掴んで口付けして、何度も向きを変えながら口を食む。
メシルはあんっと蕩けるような声を出して、体にしがみ付いてきて、捩じ込んだ舌に濡れた舌を絡ませてくる。
甘いって言っていた唾液が二人の口にまみれて、こんなキスした事なくて、でも止まらない。
呼吸苦しくなって、見つめあう。
「胸、痛いね? 虎太郎」
「うん、痛い。好きって言っていいのかな」
「うん?」
「僕は君の事何も知らないけど」
「そうだね、私も今回は何も知らずにここまで来たよ」
細い背中を撫でて反対の手で張りのある瑞々しい頬を撫でる、親指で瞼をなぞればメシルは気持ち良さそうに目を瞑る。
「僕の体にはアイテムが入ってるから、君にこんな欲情して、愛しいような気持になるでしょう。そんな気持ちでメシルは抱かれていいの。したことないって言ってた」
聞けば、メシルは瞬きした。
瞬きして、少し悲しいそうな、瞳をする。
「虎太郎のバカ、さっき言ったじゃない。大切なのは今でしょって」
「うん」
「じゃあ、あなたは今が私が付き合ってる女の子だったら絶対に安心するの? 違うでしょ? それはそれでまた不安や不満が出てくるんでしょう? じゃあ何が大事なの?」
処女で少女な女神に諭すように言われて、頷いた。
「メシルが大事だよ、でもこれが、この感情がアイテムの力だったら悲しいかなって思っただけ」
「…………そっか、そうかたろちゃんいい子?」
「うん、君を本心で好きって言わないとって申し訳ないなって」
抱き締め合って、どうにもできない。息の置き場。
「好きじゃダメかなたろちゃん」
「好きでいいかメル」
そんなん可笑しいけど、可笑しいとこなんて今始まった事じゃないし、またキスして額を合わせた。
そしたら、メシルが下半身に手を伸ばして、僕の唇を舐めながら。
「でも、鞘って言っても、体のとは決まってない気がするんだよね」
「うん?」
メシルは硬くなった下半身を躊躇なくぎゅっと握り締めてきて、突然の刺激に腰が浮く。
僕の反応を見て、ぞくっとメシルは震えると、また体温を上げた。
下から唇を押しつけてきて、口を開けば小さな舌が動いてる、僕の舌を甘噛みしながら、スーツの上から擦ってきて、唾液の糸を引かせながら言う。
「鞘って言ってもこっちかもしれないです」
「鞘?」
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