【R18】黒猫彼女を溺愛中【著 CHIYONE】

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ネネ

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「タツミ?! タツミ、大丈夫?!」
「俺は……寝てた、のか」

 朝、声を聞いたはずなのに、タツミの声が懐かしいぐらいに感じて、髪を梳く指先に涙が出そうだ。

「泣いてる? ネネ、どうした」
「タツミがもう目を開けてくれないんじゃないかって怖くなって」
「…………」

 硬くて優しい胸板に抱き付いて、額を擦りつけるタツミは荒い息のまま私の頭の天辺にキスしてくれた。
「俺も怖かった」
「うん」
「自分が突然内側から壊れそうな感覚に陥って、目の前が真っ暗になった。色んな声にうなされて堕ちそうだったけど、ネネの声で戻ってこれた」

 タツミを見れば、虚ろな瞳で、弱弱しい力で顔を撫でてくれる、笑ってくれるけど何でか本当に消えてしまいそうで、また涙が零れてしまう。

「タツミ死んじゃうの?」

 私は言葉を包んで言えないから、思った事が口にでて、大丈夫だよって言って欲しかったのに、タツミは笑ったけど、私にキスして安心させてはくれなかった。

「ごめん、わからない」

 って、
「わからないの? わからないくらい、どこかが痛いの?」
「うん痛い、不安で不安でたまらない」
「どこが痛いの?」
「……」
「ねえ、どこ?」

 タツミは私を抱き締めて、私はごめんって言った。
 だってそうだ、頭が痛いって言われても私にはどうする事もできないのに、どうにもならなくて焦って空回りしてる。
 こんな時でもタツミは落ち着いてと私の荒ぶった心を抱いて諭してくれる。

「ネネ」
「死んじゃいや」

 タツミは、うっ、と息を詰まらせて、何かの痛みに堪えるように私の背中に回っている手が震えてる。
「ネネ、少し話してもいい?」
「ん?」
 タツミは大きく息を吸って、私の背中を叩きながら、

「眼鏡のお陰で俺とドロは呪いを抑える事に成功した」
「うん」
「潰したはずの目が復活し皆驚いていた、この眼鏡あれば絶対に人を殺さないと、証明した俺は表立って騎士団長に就任した。それは異例の事態で力を恐れて敬遠する国もあれば、また呪いは本物かと疑ってこの目を見に来る者もいた。そんな中で俺の1歳の誕生日祝賀会が行われた」
「私と会う少し前だね」
「そう、そこには帝国では確認できていなかった小さな島の王がいた。そして祝いにと彼に小さな小箱を渡されたんだ。どこで俺の誕生日を知ったのかは知らないが、隣島と小競り合いが続いていて帝国の後ろ盾が欲しかったんだと思う、賄賂だ」
「わいろ」
「俺に味方になってほしくて、金品を持って来たって事」
「タツミを物で釣ろうとしたのね?」
「そう、それでその小箱には何が入っていたと思う?」
「…………お金?」

 答えれば、タツミは額に汗を滲ませた顔を横に振る、私の顔を持って自分の方に向かせてきて、




「黒猫だった」








「クロ……猫……」
「そう、豪華に飾られた木箱の中には高級な真っ白な綿が敷かれ宝石が散りばめられていた、その真ん中に薬で眠らされた黒猫がいた」


 それは……見た事がある光景で、何も言えない、何も答えられない。

「俺はそれが初め何なのか分からなかった、小箱の入っている黒猫、箱の下には【chiyo】と書かれていた。意図が理解できず、王を見れば下卑た口元で、【先週人型を覚えた上玉です。何でもいう事聞きますよ】と気味悪く笑い、意味を悟った。そしてこれは受け取れないと躊躇していたら、王は何かに気付いた。その猫の尾の辺りに白い毛が混じっていたんだ。王は俺がその箱を受け取らない理由を毛並みの揃わない猫のせいだと勘違いして……」
「うん」
「ちょうどその時、外気に触れた猫が目を覚まして少し首を上げると俺に向かって鳴こうと口を開いていた」
「うん」
「王は【申し訳なかった、こんな粗悪品を献上して、直に新しい物を持ってくるから気を悪くしないでく】れ、と言う所で持っていた箱を容赦なく魔法で燃やした。木箱も宝石も…………黒猫諸共……圧縮された業火に焼かれ猫は苦しみ泣き叫び灰になった」
「ごめん、タツミ……その話」
 聞かないといけないのに、聞けなくて口を塞ごうと思ったら、タツミは口に伸ばした私の手を掴んで続ける。

「その時、祝賀会だから何もないだろうと、たまたま眼帯を外していたドロの瞳が暴走した。焼かれた黒猫の苦しみ怒り恨み悲しみ、それに便乗したこの世の悲憤慷慨がドロの目の乗り移り、王の脳漿を粉砕した。一瞬の出来事だった、倒れた彼の頭は原型を留めていなかった。和やかだった祝賀会は一変、悲鳴が続き、阿鼻叫喚を極めた。俺はドロを隠した、見ただけで人を殺せる呪いの力は世界を震撼させた」

 私の手を掴むタツミの手が震えてて、もちろん体も熱くってその唇を舐めに行く、分かんない、分からないけど私は怖くないって言いたかった。

「もちろん戦争だ。けれど戦力が違い過ぎるし、双方血を流さずに済ませた。むしろもう俺に口を出すものはこの世に存在しない。悲しい、絶対的な力は大きすぎれば孤立させる。皆死にたくない、だから誰も俺に指図する者はいない」
「私は一緒にいるよ」
「ありがとう、そしてまた俺に供物のように小箱が届けられた」
「また猫?」
「うん、死んだ王と敵対していた国の王だ。【うちは完璧な黒猫です、必ずお気に召します】と、もう死なせないと受け取った小箱には【keima】と書かれていた【雄の方が避妊の必要もないし、ちゃんと出来るように躾けてある】その王もまた下品な笑いで反吐が出た。平等な交友関係で手を打って、その黒猫を保護しようと思ったけれど、彼はとても体が弱かった。それでも自分はどうなってもいいから、兄弟を助けて欲しいと涙ながらに訴えてきた。玩具になるよう躾けられ出来ない物は殺される。助けて下さい何でもしますと泣く彼に、このままにしてはいけないと、俺はそのブリーダーの居所を突き止めた。簡単だ、その王にもっと購入したいと聞けばいいだけだ。そしてそれは人が住めないと言われている帝国領土の奥地に結界を張った小さな村だった。なんの因果か、俺が住んでいる地域、この家の直ぐ側だったんだ。違法薬物の大量投与に魔法を使った禁止令遺伝子組み換え、非合法な手術と人権を無視した虐待、この世の悪の巣窟だった。直に編成を組んで乗り込んだ。奴らは口々に【需要があるから供給したまでだ、自分達を取り締まるなら買う方も罰っしろ】と食って掛かってきた。命はそんなものではない、と説得しても聞く耳は持たなかった。そこにはたくさん動物が飼われていて実験台にされていたた大半は瀕死の状態で生かせるものは俺が引き取った」

「廃村になった村って……聞いた。うちに一番近い村は騎士団に制圧されたって」

「そう、俺が解体した。その村を摘発してる中、一台の車が村に入って来た。村に変わりように驚いていた猫人は黒耳だった。困惑する彼女に俺達は騎士団でブリーダーを逮捕にしに来たと告げると、泣きながら【この先の丘に我が子を捨ててきたから助けて下さい】と膝をついて頭を下げた。【商品価値がないと殺されてしまう、だからブリーダーの目を盗んで売れない子供は野原に逃がしていた。例え生きていけなくても、あそこに死花が咲いている。死花は幻影と共に痛みのないまま死に誘う花。その命がまた花となるから寂しくない筈だ】と。ブリーダーは母猫を縛り付ける為、不要と判断した猫をその手で殺させていた、母猫は殺したフリをして猫を逃がしてた」
「そっか」

「それで聞いた、今逃がした猫はどんな猫かと、母猫は【可愛い黒猫、少し目が茶色かったから人目につかないように、産毛のままわざと隅に追いやった。昨日人になれるようになってしまって人間に乱暴される前に捨ててきた】と【情が移ると別れられなくなるから名前も呼べなかった】」

「うん」



「【娘の名はネネ、花を見る前に、どうかお助け下さい】と俺に縋りついてきた」

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