パウパウは今日も元気

松川 鷹羽

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23.パウパウのキラキラとお友達 9

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 ハイエルフの「ネコの宴フェリシ・イク」は子供の遊びだ。
 
 ルールは単純で、同時に魔力を流してネコを呼び、集まってきたネコに魔力を込めた餌を投げて与え、自分の魔力に惹かれて、餌を食べたネコの多い者が勝ち。
どのネコが誰の餌を食べたかは、そのネコの目が一時的に、その者の魔力の色に変わるので判定できるし、そもそも、魔力に惹かれたネコ達は、その持ち主の周りに集まるので自ずと分かるのだ。
 対象は砂漠オオネコ以外にも、山ネコや草原ネコでも行われる。
すべてネコ系の魔獣で行うので、水ネコや雪ネコの事もある。
 
 このゲームの楽しいところは、必ずしも目的のネコが来るばかりではないことで、
「ふっふっふ、ワシに勝てる者など無い!なぜなら、かつてネコの宴フェリシ・イク人面獅子マンティコラを呼び出した伝説を持つからのっ!」
「なんて、嫌な伝説なんだ」とミっちゃんは眉を寄せ、
「マンテ…それ、なぁに?」
ワクワクとした顔でパウパウがグーリシェダを見る。
「おぉ、体は大きな獅子でな」
乗せられて、グーリシェダが得意げに話を続ける。
「うんっ、それで?」
「顔はじゃったっ!」
「言い方が酷い」
「オッサン…なんだか可哀そう」

 益体もない話をしながらネコが来るのを待つのだが、砂漠の夜は暗い。星の光と月明かりでは心もとなく、パウパウには岩場の様子は見えなくなってしまった。
オオネコが警戒しないように、火は灯せない。

「ミっちゃん、暗くてパウ、何にも見えない」
「あ~そっかぁ。じゃぁパウパウ、自分におまじないしてみようか?」
ミっちゃんが膝を付いて、パウパウの両手を手に取り
「目をつぶって、手を目に充てて。頭の中でおまじないを掛けようね””って、出来る?」

「は?」と怪訝そうにグーリシェダが呟いたが、パウパウには見えないし、聞こえない。

「ん。やってみるね」
パウパウは言われたとおりに両手を夫々の目に充て、頭の中で
『ぼくの目、暗いところも見えるようにな~れ』と、おまじないしてみた。

「出来た?じゃあ、手はそのままで目を開けて、それから、そぉっと手を外してごらん」
パウパウはミっちゃんの言うとおりに、そっと手を外してみる。

「どう、出来た?見えるようになったかな?」
パウパウはコクコクと頷いて
「見える。おまじない、すごいねぇ」と笑う。
「私もね、小さい時にそうやって暗いところが見えるようになったんだよ」

グーリシェダが何故か口を押えながら
「そ、そうか。パウパウのおまじないは凄いのう」と言ってくれたのが嬉しくて、またパウパウは、ヘニャリと笑った。

「よし、これでオオネコが来たら、しっかり見えるね」
ニコニコと幼子と一緒に笑う孫を見て、こ奴、!と、叫びたい気持ちを抑えるグーリシェダだ。

 今のは身体強化のだ。おまじないなどではなく、初歩ではあるが、だ。
人族は真名が無ければ、体内魔力の制御できないため魔法は使えないとされている。

だが、パウパウは”おまじない”で使って見せた。

そして、グーリシェダが叫びそうになったのは、パウパウが体内の使のが見えたからだ。

見間違いかもしれん。今一度、なにか”おまじない”を…と考えていると

「あ、来た!」
岩場の陰から、ぴょこりとオオネコが顔を覗かせた。
”おまじない”のお陰で、さっきの夕暮れ時くらいには見えている。

「しー、逃げちゃうから静かにね」
慌ててパウパウは、自分の口を両手で押さえて、コクコクと頷く。

 そして、これからのやり方を問うように、グーリシェダを見上げる。
「あ、あぁ、ではパウ坊。餌を用意するんじゃ、袋に入れたじゃろ?」
言われたパウパウはナイナイ袋から、餌を取り出した。
20個の生肉団子だ。

「よし、これにの、魔力を流して…あぁ、いや、ウルシェド、どう説明するかの」
「そうだねぇ。うん、パウパウ、餌に触って”美味しいよ”って頭の中で思ってみようか」
コクンと頷き、地面に置いた肉団子、一つずつに”美味しいよ”とやっているらしいパウパウを見て
「いまは魔力が…流れておるの」

 今度は、しっかりと幼子の体の魔臓腑を通して、魔力が流れているのがグーリシェダの目に見て取れる。
「どういうことじゃ。訳が分からん……」

「私も小さい時にね、うまく魔力を流せなくて、ネコの宴のときにさ…」
話しつつもミっちゃんは自分の団子に魔力を流す。

 三人の周りには砂漠オオネコが遠巻きに集まって来る。
「だから、美味しいよ~って言いながら投げてたんだよね」

 一匹に向かってミっちゃんが生肉団子を投げた。
オオネコが見事に飛んで、餌を咥える。「よしっ一匹目」
「あ。ウルシェド、先走りじゃぞ、ほれ、パウ坊も!」
グーリシェダが投げた肉団子も、別なオオネコが素早く走ってきてバクンっと咥えた。

「うん!」パウパウも負けられないと振りかぶって団子を投げる。

「いっくよ~」
 ぺちょっ
すぐ目の前に落ちた。

「う…?」パウパウは諦めない。

上投げがダメなら、下からだと、掬うように団子を投げる!

 ぺしょっ
前のと同じような所に落ちた。
ある意味コントロールがいい。

「あ~」「う~む」
 もともと、パウパウを楽しませるつもりで始めた遊びだ。彼が参加できないのでは、本末転倒だろう。
どうしようか、二人のハイエルフが思案しているうちにも

 「えいっ」ぺちょん
 「たぁっ」ぺっしょん
 「てやっ」べちっ

 健闘むなしく、四才児の4、5m位先に肉団子が溜まっていく。

近いオオネコでも10mは離れた場所にいる。飛距離が伸びる気配はない。
「むぅ」
パウパウは、少し頬をプっと膨らませて、肉団子へ近づいて
ムズっと掴んだ団子を上に掲げて
「美味しいよ~、」と

 ハイエルフ二人が止める間もなく、声に乗った
「うわっ、パウパウ!」「ナ゛アゴ」「ミ゛ア゛~ン」「ギャウ」
「ニァァン」「おぉっ」「ミッ」「ウミャァゴ」
岩場のあちこちから声が聞こえる。トトトと駆け下りてくる。

「ウルシェド、まずい、なにか肉を出すのじゃっ」
 グーリシェダが自分の収納から、食料の肉を出す。肉団子だ、魔力だ、等と言っている場合ではない。
岩石砂漠に光る、無数の青い目、青い目、青い目

今までのネコの宴で見たこともないような数の砂漠オオネコ。

「待って、待って、なんだコレ」
 ミっちゃんも、慌てて肉を取りだし始めた。
出汁用に用意していた仔牛の塊肉を、慌てて”風刃”の魔法で切り始める。
先日、マールが召喚した鳥の半身揚げも、どさくさ紛れに処分だ。

「わぁ!すっごい、いっぱいだぁ」一人、状況が分かっていない、キャッキャと喜ぶ幼児。
慌てふためき肉を出す、二人のハイエルフ。
 そんな三人を取り巻く、オオネコ、オオネコ、オオネコの仔ネコ、オオネコ……

 そこら辺りのオオネコ、全てが集まったかのような、ネコの大宴会フェレシ・ホロイークが始まった。

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