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123.ミッちゃんのレトケレス探し19
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オルドーは、溜息を吐く。
「ならば、西門から外へ出て、パシュチャの商人の倉庫を先に確認した方がいい。効率的だろう」
城壁都市の外、門前町に倉庫があるのだという。
軍人二人に案内をされたウルジェドは通用門をオルドーの強権で抜けさせてもらう。
少し門から離れると、上から魔道騎士6機が城壁を跳び越えて、音も無く後ろに立った。
「…防御機構とかを全く無視してくれる」
「ありがとう」
「今、どこに褒められた部分がありましたかね」
サピヤーに尋ねられたがオルドー判るわけもなく、眉をひそめるに留めた。
城壁都市の広さから溢れた新参者は、こういった門前町に商会などを建てるのだろう。
逆に、荷の出し入れの税が掛からずに、安くなるという利点もあるのだそうだ。
「なるほど。それで、このような穀物倉庫場が出来るわけだ」
ふと、思い出したウルジェドが続けて
「南門には、こういった外の町は無かったようだが」と、問うた。
「昔からダグシナとの取引は余りしていないようでな。あそこは海の交易でパシュチャか帝都へ直行することが多い」
頷きながら、黒い塊にしか見えない何棟もの倉庫に対して探査をするように、魔道騎士に命じる。
ここは、先ほどのリヨスアルヴァの商会倉庫と異なり、人の気配がしない。
総石積みの倉庫もあるが、新しい作りの石の土台の上に木造と漆喰で出来ている物も見受けられる。
「ここらに人が多く集まっている気配はないな。巡回をしている自警団が歩いているだけだ」
「……便利な魔法だな、うちにも欲しい能力だ」
大して欲しくなさそうな口調でオルドーが呟いた。
「では、商会の店舗を一応、確認するか?この時間に人が起きていたら、まぁ、怪しいと思っていいだろう」
「あぁ、サピヤー」
「はい!隊長、こちらです」
なんだか嬉しそうにサピヤーが先頭に立って案内をし始める。
この辺りは、城壁内と違って道も広く、建物の間もゆったりとしている。
「こちらですね。テヌイス商会」
民家より少し大きい程度の、こじんまりとした店舗をサピヤーが指した。
当然、戸板が嵌っていて正面口は閉っている。
魔道騎士が探知を掛ける。
「皆、休んでいるな……ふふっ」
ウルジェドが笑ったので、不審に思ったサピヤーが「何かありましたか?」と尋ねた。
「いや、小さな子が用を足したくて、隣の子を無理やり今、起こしている」
それは探知ではなくて透視ではないだろうか。
そんな些末な事すら判るにかと、オルドーはゾッとするが、その表情は夜に紛れている。
「さて、ではミズラウの商会だな。なんという店だ?」
「フラウド商会だ。東門の外にある」
「あぁ、そうか。失敗したな、少し待ってくれ」
この都市に最初に来た時に、転移座標を把握しておけば良かったと、後悔をしながらウルジェドは眷属を呼ぶ。
レトケレスを見て、キノコを届けるだけだと軽く考えていた。
まさか、ここまでリヨスアルヴァと付き合う事になるとは、思ってもいなかったので、仕方がない。
「チチチ……」
「アオメ、東側の門を急ぎで見つけてくれるかい」
「チィ!」
夜の中、アオメが飛び立った。
小鳥の形をしていても魔物だ。闇を苦にはしない。
「今のは眷属か?」
「うん、可愛いだろう?あれでも中々に強いんだよ」
眷属からの報告を待つ間、ウルジェドは自分達の周りに結界を張る。
6機の魔道騎士が、周辺を警戒しながら佇んだ。
「オルドー隊長は、インテゲル宰相から何か聞いているかい?支障がない範囲で教えてくれると有難いのだが」
「……そうだな。私が受けた命令は、おま…貴方に便宜を図れだ。それも、有難いことに夕餉のときに呼び出されて突然だ。サピヤーは、ハイエルフの女人に拉致されて消えるし、全くもって光栄な任務でございますよ」
道理で最初から非友好的なわけだ。と、ウルジェドは納得する。
「突然で申し訳ないとは思う。が、子供の命が掛かっているのでな」
子供どころか、下手をしたら最悪、両国間での戦闘行為も有り得るだろうと、オルドーは渋い顔をする。
なにせ、隠された公子だ。
アフィニタス家──メリウス卿の細君の実家──が、人身売買に関わり、もしも、それに妻女のコールタ様が噛んでいたとしたら、今春に生まれた若君にも火の粉は飛ぶだろう。
そうなったとき、隣国にいる10歳の子供が跡継ぎとして、担ぎ出される道が出来てくる。
もしもミズラウ国の賢君が子供の後ろ立てに付いたら?
プールヴァの神龍人、ベネ・ウオレオが動いたら?
互いに帝国の属国と直轄領なので、当然、戦闘行為は本来、禁止されている。
となれば、裏仕事でネチネチと泥仕合だ。
そんな考えを巡らせて、オルドーはゲンナリした。
暗い中で表情など見えない筈なのに、ハイエルフはオルドーの赤みの強い瞳を覗き込んで、首を振った。
「本当はね、勝手にやろうと思ったのだけれど、リストの場所が突然、更地になったら、怒られるだろう?」
「怒られるで済む話ではないな」
「そうか。難しいものだな、いっそナイナイしてしまえば楽だろうに」
心底、面倒くさいという響きを込めて、そう話したウルジェドに、今度はオルドーが首を振る。
「それで済むなら、俺たち治安維持部隊は要らん」
その言葉にハイエルフは、目が覚めたように瞬きをした。
「…あぁ、そうか。うん、そうだな」
そうして、何故だか嬉しそうに微笑むのを、月の光が照らす。
「あ、東の門に辿り着いたようだね」
少し顎を上に向けて、何かを見ながらウルジェドが呟いた。
「では、行こうか」
簡単に転移できてしまう、ハイエルフの能力に再び恐怖を覚えながらも、その案に乗らせてもらう二人。
得体のしれない男だが、時間は大切だ。と、無理やりに自分を納得させるオルドーだ。
あっさりと東門のそばに転移をして、後は西門と同じ行程で外へと出た。
こちらの門前町は西側とは異なって建物が少ない。
というよりも、一つの商会が独占しているようで、石造りの倉庫が5棟と、中々に大きな店構えの商会が建っていた。
「おぉ!これは当たりかな」
魔道騎士に探知をさせていたウルジェドが嬉しそうに笑う。
「どうした?」
「あの大きな倉庫2つに、随分と人が居るねぇ。片方の倉庫の人達は、拘束されているのかな?じゃあ、オルドー隊長にサピヤー、向こうの倉庫に私は行くから、君たちは、その隣の倉庫の人達を助けてくれ」
収納から突剣を出しながらウルジェドが嬉々として言う。
「いやいや、まてまて。何を勝手なことを言ってる」
「さっきの倉庫では君たちの要望を聞いてあげたからね。こっちは、私のモノだろう?」
その表情に殺意や闘気などは全くない。
まるで、届いた贈り物の包を開こうとする子供の瞳で、ハイエルフはオルドーを見た。
「大丈夫、殺害はしない。私も聞きたいことがあるからね。それに、魔道騎士の連携訓練をしたかったんだよ」
止める間もなくウルジェドは、指示を出し始める。
「魔道騎士陸、商家を含めて結界、外へ逃がすな」
「魔道騎士壱は、そこなる軍人の補佐。拘束されている者を人質にされないように」
そう言うと、黒い魔道騎士はサピヤーの斜め後ろに素早く移動した。
「おい、こら、やめ……」オルドーの声など聞こえないふりでウルジェドは駆けだす。
「魔道騎士弐、参、肆は制圧。殺すな」
「魔道騎士伍、突き破れ!」
いきなり魔道騎士は厚い木の扉を蹴破った。
轟音と共に内側へと割れた扉が弾け飛ぶ。
黒い魔道騎士5機が、倉庫の一つに突入した。
「あぁぁぁ!やりやがったっ!」
オルドーは一人先走ったハイエルフに腹立ちながら、隣の倉庫へと突入する。
幸運なことに、こちらの騒ぎが聞こえたのか、扉が開こうとしていた。
「あ~!すまんが、そこの魔道騎士。扉を開けてくれ!」
剣を抜きながら、サピヤーの後ろの魔道具に向けて指示してみると、微かに開きかけた扉を、ガッっと掴んで力任せに開けてくれた。
ベキリっという音がして、蝶番ごと毟り取られた扉を魔道騎士は、片手で後ろに放り捨てる。
小さな魔道燈が数カ所、ぶら下る暗い倉庫に軍人二人と黒い魔道騎士が突入する。
「うわっ!なんだテメェら!」扉を毟り取られたネブローらしき男が声を上げた瞬間、魔道騎士に制圧された。
何をしたのか、オルドーには全く見えない速さでだ。
「誰だ、てめぇ!」見張り番らしい男が怒鳴る。
「帝国治安維持部隊、部隊長オルドー=シャティ・ガィルィだ。この場を改めさせてもらう!」
サピヤーが素早く動いて、もう一人の見張りの後ろに回り、短剣の柄で殴って意識を刈り取る。
「ぐっ」
ガシャっと金属音をさせて崩れ落ちた男の腰にぶら下った、鍵束を取ると光の届かない奥の暗がりへと向かった。
「【光源】」
術名を呟いて、光の魔法で辺りを照らすように、柔らかい照明を天井に打ち上げる。
倉庫の奥には、サピヤーの推測したとおり、檻があった。
「へっ、帝国の何でも屋かよ。生憎と、俺らは捕まってもな、すぐに出れるんだぜ、なんせ俺らの後ろ立ては御立派な方だからなぁ」
手入れの良くないショートソードで身構えたネブローは、なかなか、腹立たしい事を言う。
「ほぅ…そうか」
どうして愚かな小物に限って、こういう事を言うんだろう。
散々、聞き飽きているオルドーは、内心でゲンナリしている。
「残念だったなぁ~何でも屋ぁ!」
まったく腰の入っていない腕だけの振りでショートソードを振り回しながら叫ぶ男の剣を叩き落として、ついでに、ガラ空きの腹に蹴りを入れる。
ショートソードを拾い上げて、壁まで吹っ飛んだネブローに歩み寄ると
「おぅ、毎日、牢から出て来いよ。そしたら、毎日、牢にブチ込んでやるからなぁ」
そう言って、ヒィと鳴く男の鳩尾に蹴りを入れて意識を刈り取ると、指示もしていないのに魔道騎士が魔力拘束を施してくれた。
「オルドー部隊長…」
沈んだサピヤーの声に奥を見て、
「糞ったれが」オルドーは、吐き捨てた。
「ならば、西門から外へ出て、パシュチャの商人の倉庫を先に確認した方がいい。効率的だろう」
城壁都市の外、門前町に倉庫があるのだという。
軍人二人に案内をされたウルジェドは通用門をオルドーの強権で抜けさせてもらう。
少し門から離れると、上から魔道騎士6機が城壁を跳び越えて、音も無く後ろに立った。
「…防御機構とかを全く無視してくれる」
「ありがとう」
「今、どこに褒められた部分がありましたかね」
サピヤーに尋ねられたがオルドー判るわけもなく、眉をひそめるに留めた。
城壁都市の広さから溢れた新参者は、こういった門前町に商会などを建てるのだろう。
逆に、荷の出し入れの税が掛からずに、安くなるという利点もあるのだそうだ。
「なるほど。それで、このような穀物倉庫場が出来るわけだ」
ふと、思い出したウルジェドが続けて
「南門には、こういった外の町は無かったようだが」と、問うた。
「昔からダグシナとの取引は余りしていないようでな。あそこは海の交易でパシュチャか帝都へ直行することが多い」
頷きながら、黒い塊にしか見えない何棟もの倉庫に対して探査をするように、魔道騎士に命じる。
ここは、先ほどのリヨスアルヴァの商会倉庫と異なり、人の気配がしない。
総石積みの倉庫もあるが、新しい作りの石の土台の上に木造と漆喰で出来ている物も見受けられる。
「ここらに人が多く集まっている気配はないな。巡回をしている自警団が歩いているだけだ」
「……便利な魔法だな、うちにも欲しい能力だ」
大して欲しくなさそうな口調でオルドーが呟いた。
「では、商会の店舗を一応、確認するか?この時間に人が起きていたら、まぁ、怪しいと思っていいだろう」
「あぁ、サピヤー」
「はい!隊長、こちらです」
なんだか嬉しそうにサピヤーが先頭に立って案内をし始める。
この辺りは、城壁内と違って道も広く、建物の間もゆったりとしている。
「こちらですね。テヌイス商会」
民家より少し大きい程度の、こじんまりとした店舗をサピヤーが指した。
当然、戸板が嵌っていて正面口は閉っている。
魔道騎士が探知を掛ける。
「皆、休んでいるな……ふふっ」
ウルジェドが笑ったので、不審に思ったサピヤーが「何かありましたか?」と尋ねた。
「いや、小さな子が用を足したくて、隣の子を無理やり今、起こしている」
それは探知ではなくて透視ではないだろうか。
そんな些末な事すら判るにかと、オルドーはゾッとするが、その表情は夜に紛れている。
「さて、ではミズラウの商会だな。なんという店だ?」
「フラウド商会だ。東門の外にある」
「あぁ、そうか。失敗したな、少し待ってくれ」
この都市に最初に来た時に、転移座標を把握しておけば良かったと、後悔をしながらウルジェドは眷属を呼ぶ。
レトケレスを見て、キノコを届けるだけだと軽く考えていた。
まさか、ここまでリヨスアルヴァと付き合う事になるとは、思ってもいなかったので、仕方がない。
「チチチ……」
「アオメ、東側の門を急ぎで見つけてくれるかい」
「チィ!」
夜の中、アオメが飛び立った。
小鳥の形をしていても魔物だ。闇を苦にはしない。
「今のは眷属か?」
「うん、可愛いだろう?あれでも中々に強いんだよ」
眷属からの報告を待つ間、ウルジェドは自分達の周りに結界を張る。
6機の魔道騎士が、周辺を警戒しながら佇んだ。
「オルドー隊長は、インテゲル宰相から何か聞いているかい?支障がない範囲で教えてくれると有難いのだが」
「……そうだな。私が受けた命令は、おま…貴方に便宜を図れだ。それも、有難いことに夕餉のときに呼び出されて突然だ。サピヤーは、ハイエルフの女人に拉致されて消えるし、全くもって光栄な任務でございますよ」
道理で最初から非友好的なわけだ。と、ウルジェドは納得する。
「突然で申し訳ないとは思う。が、子供の命が掛かっているのでな」
子供どころか、下手をしたら最悪、両国間での戦闘行為も有り得るだろうと、オルドーは渋い顔をする。
なにせ、隠された公子だ。
アフィニタス家──メリウス卿の細君の実家──が、人身売買に関わり、もしも、それに妻女のコールタ様が噛んでいたとしたら、今春に生まれた若君にも火の粉は飛ぶだろう。
そうなったとき、隣国にいる10歳の子供が跡継ぎとして、担ぎ出される道が出来てくる。
もしもミズラウ国の賢君が子供の後ろ立てに付いたら?
プールヴァの神龍人、ベネ・ウオレオが動いたら?
互いに帝国の属国と直轄領なので、当然、戦闘行為は本来、禁止されている。
となれば、裏仕事でネチネチと泥仕合だ。
そんな考えを巡らせて、オルドーはゲンナリした。
暗い中で表情など見えない筈なのに、ハイエルフはオルドーの赤みの強い瞳を覗き込んで、首を振った。
「本当はね、勝手にやろうと思ったのだけれど、リストの場所が突然、更地になったら、怒られるだろう?」
「怒られるで済む話ではないな」
「そうか。難しいものだな、いっそナイナイしてしまえば楽だろうに」
心底、面倒くさいという響きを込めて、そう話したウルジェドに、今度はオルドーが首を振る。
「それで済むなら、俺たち治安維持部隊は要らん」
その言葉にハイエルフは、目が覚めたように瞬きをした。
「…あぁ、そうか。うん、そうだな」
そうして、何故だか嬉しそうに微笑むのを、月の光が照らす。
「あ、東の門に辿り着いたようだね」
少し顎を上に向けて、何かを見ながらウルジェドが呟いた。
「では、行こうか」
簡単に転移できてしまう、ハイエルフの能力に再び恐怖を覚えながらも、その案に乗らせてもらう二人。
得体のしれない男だが、時間は大切だ。と、無理やりに自分を納得させるオルドーだ。
あっさりと東門のそばに転移をして、後は西門と同じ行程で外へと出た。
こちらの門前町は西側とは異なって建物が少ない。
というよりも、一つの商会が独占しているようで、石造りの倉庫が5棟と、中々に大きな店構えの商会が建っていた。
「おぉ!これは当たりかな」
魔道騎士に探知をさせていたウルジェドが嬉しそうに笑う。
「どうした?」
「あの大きな倉庫2つに、随分と人が居るねぇ。片方の倉庫の人達は、拘束されているのかな?じゃあ、オルドー隊長にサピヤー、向こうの倉庫に私は行くから、君たちは、その隣の倉庫の人達を助けてくれ」
収納から突剣を出しながらウルジェドが嬉々として言う。
「いやいや、まてまて。何を勝手なことを言ってる」
「さっきの倉庫では君たちの要望を聞いてあげたからね。こっちは、私のモノだろう?」
その表情に殺意や闘気などは全くない。
まるで、届いた贈り物の包を開こうとする子供の瞳で、ハイエルフはオルドーを見た。
「大丈夫、殺害はしない。私も聞きたいことがあるからね。それに、魔道騎士の連携訓練をしたかったんだよ」
止める間もなくウルジェドは、指示を出し始める。
「魔道騎士陸、商家を含めて結界、外へ逃がすな」
「魔道騎士壱は、そこなる軍人の補佐。拘束されている者を人質にされないように」
そう言うと、黒い魔道騎士はサピヤーの斜め後ろに素早く移動した。
「おい、こら、やめ……」オルドーの声など聞こえないふりでウルジェドは駆けだす。
「魔道騎士弐、参、肆は制圧。殺すな」
「魔道騎士伍、突き破れ!」
いきなり魔道騎士は厚い木の扉を蹴破った。
轟音と共に内側へと割れた扉が弾け飛ぶ。
黒い魔道騎士5機が、倉庫の一つに突入した。
「あぁぁぁ!やりやがったっ!」
オルドーは一人先走ったハイエルフに腹立ちながら、隣の倉庫へと突入する。
幸運なことに、こちらの騒ぎが聞こえたのか、扉が開こうとしていた。
「あ~!すまんが、そこの魔道騎士。扉を開けてくれ!」
剣を抜きながら、サピヤーの後ろの魔道具に向けて指示してみると、微かに開きかけた扉を、ガッっと掴んで力任せに開けてくれた。
ベキリっという音がして、蝶番ごと毟り取られた扉を魔道騎士は、片手で後ろに放り捨てる。
小さな魔道燈が数カ所、ぶら下る暗い倉庫に軍人二人と黒い魔道騎士が突入する。
「うわっ!なんだテメェら!」扉を毟り取られたネブローらしき男が声を上げた瞬間、魔道騎士に制圧された。
何をしたのか、オルドーには全く見えない速さでだ。
「誰だ、てめぇ!」見張り番らしい男が怒鳴る。
「帝国治安維持部隊、部隊長オルドー=シャティ・ガィルィだ。この場を改めさせてもらう!」
サピヤーが素早く動いて、もう一人の見張りの後ろに回り、短剣の柄で殴って意識を刈り取る。
「ぐっ」
ガシャっと金属音をさせて崩れ落ちた男の腰にぶら下った、鍵束を取ると光の届かない奥の暗がりへと向かった。
「【光源】」
術名を呟いて、光の魔法で辺りを照らすように、柔らかい照明を天井に打ち上げる。
倉庫の奥には、サピヤーの推測したとおり、檻があった。
「へっ、帝国の何でも屋かよ。生憎と、俺らは捕まってもな、すぐに出れるんだぜ、なんせ俺らの後ろ立ては御立派な方だからなぁ」
手入れの良くないショートソードで身構えたネブローは、なかなか、腹立たしい事を言う。
「ほぅ…そうか」
どうして愚かな小物に限って、こういう事を言うんだろう。
散々、聞き飽きているオルドーは、内心でゲンナリしている。
「残念だったなぁ~何でも屋ぁ!」
まったく腰の入っていない腕だけの振りでショートソードを振り回しながら叫ぶ男の剣を叩き落として、ついでに、ガラ空きの腹に蹴りを入れる。
ショートソードを拾い上げて、壁まで吹っ飛んだネブローに歩み寄ると
「おぅ、毎日、牢から出て来いよ。そしたら、毎日、牢にブチ込んでやるからなぁ」
そう言って、ヒィと鳴く男の鳩尾に蹴りを入れて意識を刈り取ると、指示もしていないのに魔道騎士が魔力拘束を施してくれた。
「オルドー部隊長…」
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