妹バレ→親バレ→精神的DV→家出してダンジョン行ったら大変な事になったんだけど、どうしたらいい?

松川 鷹羽

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こっちの世界

1.とにかく家を出る。

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 【親バレ□ゲイ】
 検索欄に打ち込み、エンターを押すことなく×で消した。

 こんなことして、ネットを見ても何の解決にもならないのは分かっている。

 何度も見た、勇気あるカムアウトをした人の体験談、バレたと思いますか?という相談。
 だけど俺が知りたいのは、そうじゃない。

 相談内容にするなら、【妹バレから、チクられて親バレ、そっから精神的DVなんだが、どうしたらいい?】だ。

 今も俺に聞こえるように、わざとに自分の部屋のドアを開けて、大声で誰かと電話している妹の声が響く。
って、笑えるって!キモイって!」

 ……顔が良くなきゃ同性を好きになれないのかよ。

「あんなのと兄妹なんてフコーよ、フコー」

 お、気が合うな。俺も、お前と兄妹でフコーだよ。不幸。

 スマホのマッチングアプリを目ざとい妹に見られてからの1ヵ月。

 限界だった。
 針のムシロな家の空気。
「気持ち悪いから出ていけ」と、妹に言われる日々。
 それをとがめない両親おや

 明日からの夏休み、隣の部屋で下品に猿みたいに笑って(猿に失礼か)、俺の性的嗜好をネタにする妹と同じ家になんぞ居られない。
 腫物か汚物でも見るような目で、もの言いたげに時折こっちを見てくる両親にだって、もう無理だ。

 ピーっと音がしたPCのメッセージに【OK】のエンターキーを押す。
 通信デバイスギルフォと財布をボディバッグに突っ込み、データ消去を始めたPCを放置して、逃げるように家を出た。
 親が買ってくれたスマホは昨日、解約した。
 どうせ学校の連絡くらいしか来ない。

 泊めてくれる幼馴染も、親しい友人もいない。
 きっと居たなら相談をして、解決しないでも心の澱を薄く出来ただろう。
 いや、無理か。
 流石に、俺、同性が好きなんだとは、相談は出来ないか。

 頼れる家族もなく、友達も居ない高校中退ホヤホヤ(予定)の俺の居場所は、結局ダンジョンだけだった。


 ダンジョンが世界に現れたのは40年ほど前だ。
 俺が生まれて物心ついたころには、ダンジョンは普通にあって、探索者とか冒険者を名乗る人も普通にいた。

 中学を卒業したら、余程でない限りは登録できる探索者に俺も登録をし、バイト程度の小遣いを得ている。
 ランクは最低の一つ上、Dランクだが一応は探索者だ。
 それにDランクまでは探索者協会の寮に入ることが出来る。
 俺は、そこの入寮許可を得ていた。

 コツコツ貯めていたお年玉や、祖父母からの小遣いは協会の探索者用口座に移した。
 しばらくは、これで食つなぐことが出来るだろう。

 俺は内緒で居住地から離れた探索者協会で登録をし、ソロ探索者をしていたので、家族が俺を探すのは苦労するはずだ。
 まぁ、探さないかもしれないが。

 なぜ、内緒かというと、猿以下の妹が俺の金を狙うのが目に見えていたからだ。
下手すると、親までが「お兄ちゃんに甘えているのよ、買ってあげたら」なんて、頭の中に〇ソしか詰まっていないような発言をするからだ。

 なんで、俺が命を危険にさらして稼いだ金を(大げさ)、猿にくれてやらねばならんのか、本気で意味がわからん。

 そんなわけで俺は、地方都市、T市の探索者協会、朝陽支部を拠点とするソロ探索者になった。

 かつては、隆盛を誇っていたらしいT市。
 その名残は電車を降りた駅前ロータリーの真ん中に立つ、なんともセンスのない石碑にある。
 黒い御影石に彫られた、【ダンジョン発祥の地】の文字を気に留めて見る人は居ない。

 それを横目に、運よく待機状態だった【朝陽駅→月夜山ダンジョン】行のバスに乗り、通いなれたダンジョンに向かった。

 交通量に対して、無駄に広い3車線の道路をバスは順調に進む。
 なにせ、乗客は俺と、いかにも地元住民ってカンジのおば……マダムが3人だ。
 途中で乗って来る人もいない。

 朝陽支部の月夜山ダンジョン。
 かつて、世界で初めてダンジョンが発見された場所。

 そこは、調査されつくして、カッスカスになった、死にダンジョン。
 俺みたいな、大したことない奴でも何とか活動できる、今では人気のないカスダンジョンなのだ。
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