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77、千春、母に応援される
しおりを挟む『ちーちゃん』
ああ、クソ……ッ
『ちーちゃん、ぼくね……』
また、あの夢か。
俺にたいへん都合のいい、妄想全開の夢。
もううんざりだ。
『ぼく、ちーちゃんのことが……』
「やめろっ!!」
叫びながら、がバッと布団を撥ねのけて飛び起きた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
朝から懲りない妄想だ。
もう望みはないはずなのに、毎朝毎朝鬱陶しい。
それがたとえ、好きな人の夢でもだ。
本物のすずは、あんなことは言わない。
どんなに俺が好きでも、絶対に言わないのに……。
「千春、どうしたの!? ゴキ○リでも出た!?」
急にスパンと激しく襖が開けられて、そこには母が立っていた。
「か、母さん? おはよう、いつ出張から帰って来たの?」
「昨日の夜中よ! それより今怒鳴ってなかった!?」
「い、嫌な夢を見たんだ。嫌っていうか……嬉しいんだけど、全然嬉しくない夢……」
「一体どっちなのよ!」
すずに告白される。
嬉しいのか嬉しくないのかといったら嬉しい。
けど、すごく虚しくなる。
夢で告白されることで、余計に現実では有り得ないのだと突きつけられているようで……。
「……なにか悩みでもあるの?」
「ん、少し……」
「誰か相談する人はいる? 別に私や父さんたちでもいいけど、それは千春が嫌でしょ?」
「血縁には非常に言いにくい系……」
「ははあ、恋愛がらみか~」
「!?」
母はエスパーだったのか。
それとも、思春期の男子高校生の思考なんて読めて当たり前か。
それでも母に相談するのは恥ずかしすぎる。
「千春もそんなお年頃なのねぇ、ま、若いときの恋愛なんて当たって砕けろよ! それしかないの!」
「もう砕けたんだが……そもそも当たってないけど」
恥ずかしいのだが、話してしまう俺はマザコンだろうか。
いや、普段あまり顔を合わせることのない親子なので、単にコミュニケーションが取りたいだけだ。
そういうことにしておこう。
「え!? 告白せずに振られちゃったってこと? ……じゃあもうその人のことは諦めるか、好きでいつづけるか、別の恋を探すしかないわねぇ」
「……」
ふと、急に田上珠洲子さんのことを思い出した。
すずにも言われたのに、いまだに返事を返していない。
そろそろ手紙を貰って一週間経つというのに。
「恋の傷は新しい恋でしか癒せないものよ。がんばってね、千春。お母さんは応援してるから」
「……ありがと」
母親に恋愛相談とか、なんだか自棄になってる気がする。
でも、相手が男だとバレたわけじゃないからいいか……。
「ちなみにその子って、高校の同級生?」
「うん」
「……」
ハッ!?
慌てて母の顔を見ると、にんまりと笑っていた。
し、しまった。ついノリで答えてしまった。トーガクは男子校なのに……。
この顔は、完璧にバレたな。
「お母さんは応援してるわよ」
「……アリガト……」
お礼を言うか、言わざるべきか。
とりあえず皮肉を交えつつ礼を言うことにした。
というか、息子が同性を好きなことにはツッコまないのか。
こっちの方が拍子抜けするんだが。
じろりと睨んだ俺の意図が分かったのか、母は苦笑した。
「千春には小さい頃から随分さみしい思いをさせてきたから、今更マトモな母親ヅラする気はないのよ。千春が幸せなら、私はそれでいいの」
「息子の幸せを願ってくれる母親の、どこがマトモじゃないんだよ」
「やめて、泣いちゃう! てかもう泣くわ」
「早い早い」
母にティッシュを与えていると、階下から祖母の声がした。
「千春! 千秋! もう起きてるの? 朝ご飯できてるわよー!」
「はぁーい! あ、いけない千春のお弁当作んなきゃ!」
いつも弁当は祖母が作ってくれるが、たまに家に帰って来た日の朝は必ず母が弁当を作ってくれる。
「もう遅い時間だし、無理しなくていいけど……途中でコンビニもあるし」
「嫌よ、私がいる日は絶対千春のお弁当作るって決めてるんだから!」
忙しい母の作ってくれる弁当の中身はほとんどが冷凍食品だが、それでも俺は嬉しかった。
オール手作りの祖母は、少しだけ残念な顔をするけど。(どっちにしろ俺が喜ぶのが複雑らしい)
俺は幸せ者だな、と思った。
休み明け、すずの顔が見れないと思ったけどなんとか頑張れそうだ。
そして今日中に、田上さんへ返事をしよう。
「いってらっしゃーい! 頑張るのよ千春! 勉強と部活とその他諸々青春活動を!!」
「そんなの今更言われなくても、千春は全部頑張ってるわよねぇ~」
「ま、まあ……青春活動はぼちぼちかな……」
母と祖母に見送られながら、俺は学校へ出発した。
祖父は庭いじりをしていたので、庭から送り出してくれた。
久しぶりに母の元気そうな顔を見れたこともあり、思っていたよりも明るい気持ちで学校に行けそうだ。
満員電車を無の感情で乗り過ごした。
すずやのんさんが電車通学だったら間違いなく痴漢されていただろうから、二人が寮生でホッとした。
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