猫田くんと犬塚くん

すずなりたま

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 理音はずっと俺にくっついていた。物理的にというか、まるで金魚のフンのように。(実際陰ではそう言われていたようだ)
   小学生の遠足のときも、クラスが違っていようが構わず、毎年俺と一緒に弁当を食べた。そして必ずこう言うんだ。

『俺がいっしょじゃないとコーヘイがさみしいだろ?』
『え、ふつうだけど』
『さみしーって言えよ、ばか!』

 くっついているのはあくまで俺のため、らしかった。俺も別に嫌じゃないし、むしろ嬉しかったから何も言わなかった。
 中学にあがり、俺がバレー部に勧誘されて入部した時も、理音は運動が苦手なくせにやはりバレー部に入ってきた。勿論くっついて入ったなんてことは一言も言わないが。

『ぐ、偶然だな!俺もバレーに興味あったんだよ、昨日テレビでかーちゃんが見ててさ!』
『昨日やってたのサッカーだったぞ』
『うるせぇ!!バレーもやってたんだよ!!』
『何チャンネルだよ』
『知るか―!!』

 それから、高校受験のときも。俺が受けると言った近所の高校を理音も受けると言ったときは正直びっくりした。理音はまぁ……勉強も苦手だったから。でもそれを聞いて嬉しいと思う反面、正直困った。俺は既に理音を恋愛対象として見ていたから。自分の気持ちに気付いたのは小学校の高学年の時だったろうか。

『犬塚って、好きなやついる?』
『は?』

 修学旅行の夜、好きな女子の話で盛り上がったが、俺はどうも興味がわかずつまらなかった。なので次々と女子の名前をあげるクラスメイトにどうしてその子が好きなのか理由を聞いたら、全員が『顔が可愛いからだよ!』と言った。
 俺が一番可愛いと思ってるのは理音だ。理音より可愛い女子なんていない。じゃあ俺は理音が好きなのか。……うん、好きだ。
   でも、こんなのはおかしい。俺は変だ。幼なじみで男の理音にこんな気持ちを抱くなんて。

『コーヘイ、……昂平』

   綺麗な理音をこの手で汚してやりたい、と思うなんて。

『昂平、宿題教えろよぉー』

   誤魔化さないといけない。忘れないといけない。理音に気付かれる前に。

『昂平、遊びに行こうぜ!』

   理音も俺のことが好きだと思う。でもその『好き』は、きっと俺とは違う『好き』だ。
   例えば家族として。幼なじみとして。親友として。

『昂平、なんかだんだん仏頂面になってきたよなぁ』

   この気持ちは理音に対する裏切りだ。理音は俺がこんな気持ちを抱いてると知ったらきっと泣くだろう。いや、むしろ怒るだろうか。それだけならいい。
   きっと理音は俺から離れていく。それだけは嫌だ。理音に嫌われるなんて絶対に耐えられない。だから俺は戻らないといけない。ただの幼なじみだった、あの頃に。

   ……あの頃っていつだ?   俺は最初から、ガキの頃から理音を恋愛対象として見ていたじゃないか。戻れる過去なんてない。だから高校では離れて忘れようと思っていたのに、理音は、俺の志望校に合格を決めた

 別に理音が同じところに合格したっていい。俺は他の高校も滑り止めで受験していたからそっちに行けば済む話だ。何も絶対、そこに行きたかったわけじゃないし。ただ家が近かっただけだから。

   でも。

『昂平、おれ、合格したよっ……!これで昂平とまた三年間一緒に居られる!良かった、ほんとに良かったぁ……!!」

 理音は泣きじゃくりながら俺にそう報告して、抱きついてきた。きっとその言葉は本心から出た言葉だろう。いつも素直じゃなくてひねくれたことばかり言う理音がそんな態度をとるものだから、可愛すぎて目眩がした。その場でキスして押し倒そうかと思った。
    理性を総動員して押し倒すのはとどまったが、理音を引き離すのは無理だった。そして俺自身も、理音と離れるのがこんなに嫌だったなんてその時まで気付かなかった。理音への想いが、ここまで大きくなっていたなんて。

『良かった……おめでとう、理音!』

 俺は理音を思いっきり抱き締め返した。合格発表の場だ、同性で抱き合ってても不自然じゃない。たぶん。
   それに、こんな風に抱き締めれるのはきっとこれが最初で最後だ。そう思って、きつくきつく抱き締めた。

『ちょっ、昂平……離せばか!!痛い!』

 その後、我に返った理音に剥がされたけど……自分から抱きついてきたくせに。
   首まで真っ赤になっていたのは、俺に抱き締められたからじゃなくて自分の行動が恥ずかしすぎたからだろう。素直な理音なんて、一体何年ぶりに見たことか。
   あの時の感触……いや、感動は忘れない。忘れられない。俺は、理音が好きだ。誰よりも好きだ。壊したいくらいに……。

   どうして一瞬でも離れようと考えたんだろう。
 俺が理音から離れるなんて、もう無理なのに。
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