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23 ふたりきり
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家にキヨを連れて帰ったら母は突然のことに驚いていたけど僕の予想通り喜んで、張り切って夕食を作らなきゃ! と買い物に出掛けた。
今から買い物に行くということは、今夜は家にあるもので何か適当に作る予定だったに違いない。
「なんかおばさんに悪いなぁ」
母がいなくなったリビングを見つめながら、キヨが申し訳なさそうな顔で言った。
「キヨのおかげで豪華な夕食が食べられそうだから、僕は嬉しいけど」
「だって俺がこないだミチオに食べさせたのはただのカレーだよ? 全然ありあわせのものでよかったのに」
「そんなのキヨが気にしなくていいんだよ、お母さんが好きでやってるんだから。それより数学教えてくれない? 僕明日当たりそうなんだ」
キヨに教えて欲しい課題があったというのは本当だ。
部屋に誘われたのを誤魔化すためだけじゃない。
そもそも別に誤魔化したりしなくても、僕が嫌だと強く言えばキヨは何もしないに決まってるんだけど。
前回のアレはきっと、僕の嫌がり方が足りなかったのだろう。
「ミチオって本当数学苦手だよね。いいよ、夕飯まで教えてあげる」
「ありがとう、キヨ! じゃあ僕、何か飲み物持って行くから先に部屋に行っててくれる?」
「分かった。ミチオの鞄も一緒に持って行くね」
「ありがとう。飲み物はアイスコーヒーでいい?」
「なんでもいいよ」
僕、部屋の片付けしてたっけ……まあいいか、キヨに見られてまずいものは何も置いてない。
昨日の夜読んだマンガと、今朝脱ぎ散らかした服がベッドの上に散乱してるくらいだ。
そういえばこの間キヨの部屋に行ったとき、いきなり行ったのにキヨの部屋はとても綺麗に整理整頓されていたのを思い出した。
きっとキヨはいつ誰が突然訪ねて来てもいいように、いつも綺麗にしているんだろう。
幼い頃は気にしたことがなかったけど、なんだか高校生になっても変わっていない自分が少しだけ恥ずかしくなった。
(……あ)
お盆なんてものがどこにあるか分からないから、僕は両手にアイスコーヒーを持っていた。
部屋の前まで来てようやくドアが開けられないことに気付き、キヨを呼ぼうとしたらタイミングよくドアが開いた。
「よく僕がいるって分かったね、キヨ」
「なんとなく、ミチオの気配がしたからね」
「そうなの? 足音とかした?」
「だから、なんとなくだよ」
キヨはなにかと勘がいい。
昔からだけど、現在は人付き合いや部活でも大いにその勘の良さを発揮している。
人よりも少し――いや、だいぶ?
鈍感な僕は、そんなキヨが時々ものすごく羨ましくなる。
キヨは僕の手からアイスコーヒーを受け取ると、散らかっている勉強机の上に置いた。
「あ、僕テーブル持ってくる!」
「いいよ、ミチオは自分の机に座って。俺は横に立って教えるから」
「え、そんなの悪いよ」
「そう? 家庭教師みたいでちょっとよくない?」
何がいいのかよく分からないけど、キヨがそれでいいなら……と、僕はそれ以上反対しなかった。
ちなみにこれまでキヨに勉強を教わっていたときは、前もって用意していた折り畳み式のテーブルに二人で並んで座っていた。
だから今日こうやって突然キヨを家に招くのは――しかも夕飯時に――僕も初めてのことだと今更ながら気が付いた。
……だからどうってわけじゃないけど。
今から買い物に行くということは、今夜は家にあるもので何か適当に作る予定だったに違いない。
「なんかおばさんに悪いなぁ」
母がいなくなったリビングを見つめながら、キヨが申し訳なさそうな顔で言った。
「キヨのおかげで豪華な夕食が食べられそうだから、僕は嬉しいけど」
「だって俺がこないだミチオに食べさせたのはただのカレーだよ? 全然ありあわせのものでよかったのに」
「そんなのキヨが気にしなくていいんだよ、お母さんが好きでやってるんだから。それより数学教えてくれない? 僕明日当たりそうなんだ」
キヨに教えて欲しい課題があったというのは本当だ。
部屋に誘われたのを誤魔化すためだけじゃない。
そもそも別に誤魔化したりしなくても、僕が嫌だと強く言えばキヨは何もしないに決まってるんだけど。
前回のアレはきっと、僕の嫌がり方が足りなかったのだろう。
「ミチオって本当数学苦手だよね。いいよ、夕飯まで教えてあげる」
「ありがとう、キヨ! じゃあ僕、何か飲み物持って行くから先に部屋に行っててくれる?」
「分かった。ミチオの鞄も一緒に持って行くね」
「ありがとう。飲み物はアイスコーヒーでいい?」
「なんでもいいよ」
僕、部屋の片付けしてたっけ……まあいいか、キヨに見られてまずいものは何も置いてない。
昨日の夜読んだマンガと、今朝脱ぎ散らかした服がベッドの上に散乱してるくらいだ。
そういえばこの間キヨの部屋に行ったとき、いきなり行ったのにキヨの部屋はとても綺麗に整理整頓されていたのを思い出した。
きっとキヨはいつ誰が突然訪ねて来てもいいように、いつも綺麗にしているんだろう。
幼い頃は気にしたことがなかったけど、なんだか高校生になっても変わっていない自分が少しだけ恥ずかしくなった。
(……あ)
お盆なんてものがどこにあるか分からないから、僕は両手にアイスコーヒーを持っていた。
部屋の前まで来てようやくドアが開けられないことに気付き、キヨを呼ぼうとしたらタイミングよくドアが開いた。
「よく僕がいるって分かったね、キヨ」
「なんとなく、ミチオの気配がしたからね」
「そうなの? 足音とかした?」
「だから、なんとなくだよ」
キヨはなにかと勘がいい。
昔からだけど、現在は人付き合いや部活でも大いにその勘の良さを発揮している。
人よりも少し――いや、だいぶ?
鈍感な僕は、そんなキヨが時々ものすごく羨ましくなる。
キヨは僕の手からアイスコーヒーを受け取ると、散らかっている勉強机の上に置いた。
「あ、僕テーブル持ってくる!」
「いいよ、ミチオは自分の机に座って。俺は横に立って教えるから」
「え、そんなの悪いよ」
「そう? 家庭教師みたいでちょっとよくない?」
何がいいのかよく分からないけど、キヨがそれでいいなら……と、僕はそれ以上反対しなかった。
ちなみにこれまでキヨに勉強を教わっていたときは、前もって用意していた折り畳み式のテーブルに二人で並んで座っていた。
だから今日こうやって突然キヨを家に招くのは――しかも夕飯時に――僕も初めてのことだと今更ながら気が付いた。
……だからどうってわけじゃないけど。
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