サッカリンワールド~ヤンデレな幼なじみに激しく執着溺愛されています~

すずなりたま

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 今日は家に帰ること自体が遅かったから、夕食のあとにキヨに呼び出されることもなく──今日はおばさんが家にいるのだろう──僕は自分の部屋からワタルくんに連絡した。
 サッカー部の連絡網、まだ捨ててなくて良かった。
   入部した時に自宅とスマホの番号を書かされた時は、 今どき連絡網なんて……と思っていたけど、まさか役に立つときが来るなんて。
 実際、部に所属していた時は連絡網なんて一度も使ったことなかったから。
 キヨ以外のひとに電話をする機会なんてほとんどないから──キヨにだって最近はLINEばかりなのに──僕はワタルくんのスマホに直接電話を掛けたけど、本人が出るまでの間は妙に緊張してしまった。

『もしもし?』
「あ、ワタルくん?   えぇっと僕、小林ミチオだけど」
『分かってるよ、どもりすぎだっつの。それより水沢はうまくごまかせたか?』
「う、うん。なんとか……ちょっと怪訝そうな顔はしてたけど、しつこく聞いて来たりはしなかったよ」
『ほんとかよ……。まあいいや、作戦会議するぞ。今時間大丈夫か?』
「だいじょうぶ」

 キヨに黙ってキヨに関することをキヨ以外の人と相談するなんて、なんだか悪いことをしているみたいでドキドキする。
 それほど僕にとってキヨは大きな存在だけど、このままズルズルと今の関係を続けていきたくはないから。
   僕がキヨの奴隷というのはあまり認めたくはないけど、傍からはそう見えるくらいに僕らの関係はいびつなんだろう。
 そして僕は、僕の言い分を唯一信じてくれたワタルくんに助けを求めた。
 だからこの電話は、悪いことでもなんでもない……。
 僕は胸の辺りをぎゅっと抑えつけながら、自分にそう言い聞かせた。

『とりあえず、最初に録られた動画がネックなんだよな。おまえ水沢の部屋とかしょっちゅう行ってんだろ?   あいつがトイレとか行った隙に消せねえのかよ』
「え、こっそり消すの?」
『当たり前だろ!   消してくれって頼んで素直に消してくれる奴かよ』
「ううん。そうだよね……」

   それならとっくに消して貰っているのに、僕は何を言ってるんだろう。
 暫く沈黙があって、電話の向こうから溜め息が聞こえた。

『……しっかりしろよな。おまえ、水沢と離れたいんだろ?』

 え……?

 キヨと、離れる?

「離れたいっていうか、また友達に戻りたい。その、セックスとかしない関係に」
『はあ!?   なに言ってんだよ、今更友達になんか戻れるわけねーだろ!   もし水沢が女だったとして、別れたあとまた友達になりたいなんておまえ言えるか?』
「でも、キヨは女の子じゃない、し」
『そーゆーことを言ってんじゃねぇよ! とにかく、友達に戻りたいなんて甘い考えは今すぐ捨てろ。戻れるわけねーから』
「……どうしても?」
『だって水沢はお前のこと、最初からダチだなんて思ってなかったんじゃねえのか』

 あ……
 そうだった。何回も言われたのに……。

「そう……だよね。何言ってるんだろうね、僕……」
『ほんとに何言ってんだよ。都合のいい女みたいなことやってるくせに都合のいい男みたいなこと言いやがって』
「ふふ、ワタルくんってすごいね。僕そういうの全然分からなくて……」

 少し考えたら分かりそうなことでも、僕は考えない癖が付いてしまったみたいだ。
 何も考えずに過ごした半年間が、長いようでひどく短く感じたように。

『ふん、俺にはうるせー姉貴がいるからな。よく振っただの振られただのどうでもいいことを弟の俺に愚痴ってくるんだよ、まじウゼぇけど勉強にはなる』
「いいねぇ」

 僕には兄弟がいないから、キヨやワタルくんが少し羨ましい。でもキヨの場合は、キヨが僕のお兄さんぶってくれていたからそんなに羨ましく思ったことはない……か。
   キヨが毅くんと話しているところも、あまり見たことがないし。

『とにかく、録られた動画を消す方法を考えようぜ。つってもおまえが自分でなんとかする以外に手はねぇんだけどさ』
「だよね……」

 さらりと言われたけど、それはきっと簡単なことじゃない。
 僕らは暫し黙り込み、とりあえず口頭でメールアドレスを交換して、また後日相談することにして今日のところは電話を切った。
 もし電話をしている間にまたキヨからLINEや電話が来ていたら、今度こそとことん怪しまれるだろうから。
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