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92 確信犯
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当然といえば当然だが、僕は谷山さんとの約束の時間より30分も遅刻してしまった。
少し遅れると事前にLINEはしていたものの、やはり申し訳なくてとうとう嫌われてしまったかな――と、デート中はそればかりを考えていた。
あと、キヨとその彼女のことを。
(あのふたり、すごく仲良さそうだったなあ……)
毎日一緒に帰っているみたいだし、もうお互いの家を行き来したりもしているのだろうか。
キヨの家は家族がいない時の方が多いので、彼女のことも遠慮なく呼べるだろう。
僕のときみたいに。
(もう、セックスもしたのかな……)
いきなりそんな下世話なことを考えてしまい、顔がカッと熱くなった。
自己嫌悪で頭を壁にぶつけたくなったけど、今はそんなことが出来る状況じゃないからとにかく表情筋に力を込めて、谷山さんに悟られないように我慢した。
はあ、何を想像してるんだよ、僕は……。
今更キヨが誰と寝ようと、僕には全然関係ないじゃないか。
でも、でも……
「ミチオくん、どうしたの?」
「あっ、何が?」
「なんか今、すごく怖い顔してたよ?」
「えっ……とその、ちょっとお腹がすいたなあって……思って」
僕は慌ててお腹を押さえて誤魔化した。
いまは、谷山さんと町の商店街を特に当てもなくぶらぶら歩いているところだったのだ。
僕の高校と谷山さんの高校はそこまで離れた距離ではなくて、ちょうど間辺りにあるこの商店街――本屋やコンビニ、カフェなどはひととおりあって地元民で栄えてある――が、僕らの定番デートコースになっていた。
……まだ、二回目だけど。
「なあんだ、びっくりした! それなら早く言ってくれたらよかったのに。うち今日両親の帰りが遅いんだけど、晩御飯私が作るからよかったら食べに来ない?」
「えっ?」
「ミチオくんが良ければ、だけど。好きなものとか教えてくれたら、私頑張って作るよ!」
谷山さんは右手で力こぶを作るようなポーズをして、僕にばちっとウインクをした。
僕は谷山さんの明るいオーラに少し圧倒されながら、なんとなく食べたいものをぽろりと口にした。
「い、いいの? あ、じゃあ、カレー……とか」
「そんなものでいいの? もっと色々作れるけど、ミチオ君遠慮してない? それか、勉強ばっかりしてるからそれくらいしかマトモに作れないだろーって思ってるの?」
「ま、まさか! そんなわけないよっ!」
疑るような顔をされて、僕は両手を振るジェスチャー付きで大袈裟に否定した。
別に他意はないしカレーが大好物なわけでもないけど、なんとなく頭に浮かんだから言っただけなのだ。
「ふふっ、冗談だよ! ミチオ君、カレーが好きなんだね。やっぱり男の子って感じ!」
「そう?」
「うん! ……まあ、ミチオ君は男の子だもんね。ごめんね? 変なこと言って」
「ううん」
僕も谷山さんの発言には少し違和感を覚えたけれど、深くは突っ込まなかった。
彼女も別に深い意味があって言ったわけではないだろうし。
っていうか、いきなり家にお邪魔してもいいのだろうか……いくら両親の帰りが遅いって言っても……ん?
「谷山さんってきょうだいはいるの?」
「いるよー、お兄ちゃんが二人。でも二人とももう就職して家出ちゃってるから、今は私しかいないの」
「そうなんだ……」
ってことは……ふたりきり!?
なんてことだ、最初に言われていたのに今更そのことに気付いた!
誰もいない家に呼ばれるなんて、女の子とふたりきりだなんて、その、世間的にやばいのでは……!?
いや、僕らは正式に付き合っているんだから別におかしくはない、と思うけど!!
僕に谷山さんを襲う度胸などがあるわけもないし……。
でも……。
急に僕が焦りだしたのを見て、確信犯だったのか谷山さんはいたずらっ子のような顔でくすっと笑った。
まるで小悪魔のようなその笑みに、僕は不覚にもドキッとさせられたのだった。
少し遅れると事前にLINEはしていたものの、やはり申し訳なくてとうとう嫌われてしまったかな――と、デート中はそればかりを考えていた。
あと、キヨとその彼女のことを。
(あのふたり、すごく仲良さそうだったなあ……)
毎日一緒に帰っているみたいだし、もうお互いの家を行き来したりもしているのだろうか。
キヨの家は家族がいない時の方が多いので、彼女のことも遠慮なく呼べるだろう。
僕のときみたいに。
(もう、セックスもしたのかな……)
いきなりそんな下世話なことを考えてしまい、顔がカッと熱くなった。
自己嫌悪で頭を壁にぶつけたくなったけど、今はそんなことが出来る状況じゃないからとにかく表情筋に力を込めて、谷山さんに悟られないように我慢した。
はあ、何を想像してるんだよ、僕は……。
今更キヨが誰と寝ようと、僕には全然関係ないじゃないか。
でも、でも……
「ミチオくん、どうしたの?」
「あっ、何が?」
「なんか今、すごく怖い顔してたよ?」
「えっ……とその、ちょっとお腹がすいたなあって……思って」
僕は慌ててお腹を押さえて誤魔化した。
いまは、谷山さんと町の商店街を特に当てもなくぶらぶら歩いているところだったのだ。
僕の高校と谷山さんの高校はそこまで離れた距離ではなくて、ちょうど間辺りにあるこの商店街――本屋やコンビニ、カフェなどはひととおりあって地元民で栄えてある――が、僕らの定番デートコースになっていた。
……まだ、二回目だけど。
「なあんだ、びっくりした! それなら早く言ってくれたらよかったのに。うち今日両親の帰りが遅いんだけど、晩御飯私が作るからよかったら食べに来ない?」
「えっ?」
「ミチオくんが良ければ、だけど。好きなものとか教えてくれたら、私頑張って作るよ!」
谷山さんは右手で力こぶを作るようなポーズをして、僕にばちっとウインクをした。
僕は谷山さんの明るいオーラに少し圧倒されながら、なんとなく食べたいものをぽろりと口にした。
「い、いいの? あ、じゃあ、カレー……とか」
「そんなものでいいの? もっと色々作れるけど、ミチオ君遠慮してない? それか、勉強ばっかりしてるからそれくらいしかマトモに作れないだろーって思ってるの?」
「ま、まさか! そんなわけないよっ!」
疑るような顔をされて、僕は両手を振るジェスチャー付きで大袈裟に否定した。
別に他意はないしカレーが大好物なわけでもないけど、なんとなく頭に浮かんだから言っただけなのだ。
「ふふっ、冗談だよ! ミチオ君、カレーが好きなんだね。やっぱり男の子って感じ!」
「そう?」
「うん! ……まあ、ミチオ君は男の子だもんね。ごめんね? 変なこと言って」
「ううん」
僕も谷山さんの発言には少し違和感を覚えたけれど、深くは突っ込まなかった。
彼女も別に深い意味があって言ったわけではないだろうし。
っていうか、いきなり家にお邪魔してもいいのだろうか……いくら両親の帰りが遅いって言っても……ん?
「谷山さんってきょうだいはいるの?」
「いるよー、お兄ちゃんが二人。でも二人とももう就職して家出ちゃってるから、今は私しかいないの」
「そうなんだ……」
ってことは……ふたりきり!?
なんてことだ、最初に言われていたのに今更そのことに気付いた!
誰もいない家に呼ばれるなんて、女の子とふたりきりだなんて、その、世間的にやばいのでは……!?
いや、僕らは正式に付き合っているんだから別におかしくはない、と思うけど!!
僕に谷山さんを襲う度胸などがあるわけもないし……。
でも……。
急に僕が焦りだしたのを見て、確信犯だったのか谷山さんはいたずらっ子のような顔でくすっと笑った。
まるで小悪魔のようなその笑みに、僕は不覚にもドキッとさせられたのだった。
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