運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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117 榛名一行、食事に舌鼓を打つ


 榛名たちが部屋に戻りそれぞれ寛いでいると、部屋のドアがノックされた。
 榛名が出ると、仲居が「そろそろお食事の用意をさせて頂いてもよろしいでしょうか」と聞いてきたので、お願いすることにした。
 大きな座卓に、あっというまに所狭しと料理が並べられていく。

「わあ、美味しそう!」
「すごーい豪華ー!!」
「へえ……どれも旨そうだなぁ」

 仲居が出て行ったあと、それぞれ感想を口にした。
 新鮮な海の幸や山の幸、小田原名物の蒲鉾など、どれも綺麗に盛り付けられており美味しそうだ。
 榛名は早速瓶ビールを開けて霧咲とお酌しあい、亜衣乃はオレンジジュースを持って三人で乾杯をした。

「暁哉、何度も言うけど誕生日おめでとう」
「アキちゃん、おめでとう!」
「えっ……あ、そうか、この旅行って俺への誕生日プレゼントでしたね。ありがとうございます。でも亜衣乃ちゃんのケーキもすごく嬉しかったよ」
「あのケーキ事件のことは忘れて、アキちゃん……」
「(事件?)いやいや。食べる前に写真を撮っておけばよかったなぁって。あっ! この料理も食べる前に写真撮っておこうっと」

 榛名はスマホを出して料理の写メを撮り始めた。時に霧咲や亜衣乃も被写体に入れて。
 そんな榛名を見て、霧咲が苦笑しながら言った。

「きみって、たまに女の子がするようなことをしたがるよね」

 榛名は少しムッとしたが、事も無げに答える。

「高校の頃から女性に囲まれて過ごしてるからじゃないですか? でも撮っておくと案外いいもんですよ、あとから見返すと楽しいし」
「まあ、それはそうだろうけど。君の場合はブログにアップするとかそういう目的でもないしね」
「SNSとか興味ないですし。さ、食べましょう!」

 榛名が撮り終ったのを見て、霧咲と亜衣乃も箸を持った。
 別に待ってもらわなくても良かったのにと思ったが、どうやら2人は榛名に一番最初に食べて貰いたかったらしい。

「いただきます……ん! このお刺身美味しい! 2人も食べてみて」
「いただきまーす! ……あ、ほんとう! 身がプリップリしてる~! 美味しい~!」
「亜衣乃、食べきれなかったらおじさんが食べてあげるから遠慮せずに言いなさい」
「食べれるもん! まこおじさんがお刺身沢山食べたいだけでしょ? ぜーったいあげないからね!」
「あははっ」

 そういえば霧咲の好物は刺身だった。
 姪をからかいつつ酒を飲み、箸を進める霧咲をなんだか微笑ましい目で見てしまう。
 とても平和で、幸せだ……と榛名は思った。



「もー食べれない……」

 最初にギブアップしたのは亜衣乃だった。
 やはり大人と同じ量は多すぎたのか、箸を置いてごろんと後ろに倒れてしまった。

「こら亜衣乃、食べてすぐ横になったら逆流性食道炎になるからやめなさい」
「はぁーい」
「普通は牛になるとかって注意しません?」

 榛名がくすくす笑いながら突っ込む。
 逆流性食道炎などと病名を出したところで、亜衣乃が理解できているかどうかも怪しい。
 けれど亜衣乃は霧咲の言葉に素直に起き上がり、酒を飲みつつちまちま食べている大人たちを見つめた。

「ねえ、お酒ってそんなに美味しいの?」
「大人にとってはな。子供は飲むなよ」
「子供にとってはただの苦い水ですよね……ビールとか特に」

 二人はもうビールは止めて、日本酒を飲んでいる。
 値段が少々お高い為、榛名が遠慮すると思って霧咲が先に大吟醸を1本頼んでいたのだ。

「暁哉、お酒を飲み始めたのは何歳だった?」
「えっ……俺、学生の時ですね。高校生……いや、中学だったかな?」
「え、いけない子だなぁ、不良じゃないか」
「家で親と一緒の時だけですよ。父親が晩酌しながら俺にも無理矢理飲ませてくるんですもん。でも案外いけましたね……それに田舎ってそういうの緩いじゃないですか」
「土地柄のせいなの?」
「さあ、多分ですけど……」

 緩いのは自分の家だけなのかもしれないが、榛名は適当に返事をした。
 ちなみに榛名家は全員酒が強い。

「俺は普通に大学の時からだったなぁ。けどなかなかビールは飲めなかったよ、君の言う通りただの苦くてマズイ水だと思ってた。周りの奴らを見て、よくこんなものが一気できるなって呆れてた」
「それもなんだか意外ですね」

 ビールを飲んでしかめっ面をしている若い霧咲を想像すると、なんだか笑えてくる。

「今でも焼酎は少し苦手だけどね」
「まあ、こっちではあまり馴染みないですよね。九州じゃ日本酒の方が馴染みないですけど……」
「そうそう、おかげで二宮さんに嫉妬したしね」
「え……あはは……」

 わざわざ蒸し返さなくてもいいのに、と思った。
 霧咲が二宮に嫉妬した職場の飲み会はたった二か月前の出来事なのに、なんだかすごく前のことのように思えた。
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