運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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118 露天風呂にて


 榛名が食事に集中し始めると霧咲もそれにならい、ゆったりとした食事は21時には終わった。

「お腹いっぱい、ですね……」
「だね。満足した?」
「はい、とっても」
「それは良かった」

 榛名の言葉に、霧咲も満足げに笑った。
 すると亜衣乃がすっと立ち上がり、榛名の横に来るとぴったりとくっついて座った。

「亜衣乃ちゃん? どうしたの」
「なんだか眠くなってきちゃった……」
「今日色々と疲れたもんね、お布団用意してもらおっか」

 榛名の言葉にコクンと頷く亜衣乃。
 榛名の腕を掴みながら既にうつらうつらとしていて、横になったらすぐに眠ってしまいそうだ。
 そんな亜衣乃を見て、霧咲が言った。

「昨日の夜、楽しみすぎてあまり眠れなかったみたいだしな」
「そういえば朝もむちゃくちゃ早起きでしたねぇ」
 
 霧咲は立ち上がると、布団を敷いてもらえるようフロントに電話し始めた。
 亜衣乃は榛名の横で頑張って睡魔と闘っているようだが、既に半分は負けている。
 榛名はそんな亜衣乃を抱き上げると、そのまま自身の膝の上に乗せて抱っこした。
 ゆるく抱きしめて、ぽん、ぽん、と一定のリズムで背中を叩く。
 まるで小さな子どもにするみたいに。
 ぎゅ、と細い腕が榛名の背中に回された。

「アキちゃん、あったかーい……」
「お布団の用意まだだから、このまま寝ていいよ。おやすみ」
「うん……」

(可愛いなぁ……)

 自分の腕の中で寝息を立て始める亜衣乃を抱きしめたかったが、起こしてしまうので同じようなペースで優しく背中を叩いた。
 そんな榛名と亜衣乃を見て、霧咲が苦笑している。

「……なんですか?」
「君、本当はどこかで母親業やってたんじゃない?」
「意味がわかんないです」

 榛名はただ、自分自身が幼い頃に母親にされていたことを亜衣乃にしているだけだ。
 亜衣乃の歳の頃だと、もうそんなに甘えることは無かったが。

「もしかして、妬いてます?」

 さっきもふと思ったことを聞いてみた。

「亜衣乃にか?」
「いや、俺に」
「……まあ、今までは俺の方に来てたからね、ちょっとさみしい気もするけど」

 でもそれは、霧咲の他に甘えさせてくれる大人が居なかったからで。

「お役目、俺が取っちゃってすいません」
「いや、いいよ」

 自分以外にも亜衣乃が自然に甘えられる相手が出来たのは、素直に喜ぶべきことだ。
 少し淋しいけど、妬いているわけではない。
 亜衣乃に選択肢が増えたということなのだから。

「それに俺は君を抱っこしなきゃいけないからね。亜衣乃の抱っこは任せるよ」
「な、なんか俺が抱っこをせがんでるみたいな……」
「何かおかしいかな?」
「普通におかしいでしょ」

 寝具の用意をしてきた仲居がドアをノックしてきたので、二人の会話は途切れた。
 座卓を片付けて貰い、敷かれた布団にそっと亜衣乃を寝かせると、霧咲と榛名は掘りごたつのあるスペースへと移動することにした。
 しかし、飲み直す前に……

「誠人さん、俺ちょっと露天風呂に入ってきてもいいですか?」

 榛名はずっと部屋の外にある露天風呂が気になっていたのだった。
 朝にでも入れるのだが、せっかくなのでできるだけ回数多く入っておきたくてソワソワしていた。
 我ながら貧乏性だと思うが、それは仕方ない。

「ん? ああ、もちろんいいよ」
「良ければ一緒にどうですか? エッチなことはしませんけど」
「えー、さっきは積極的だったのに残念だなぁ」
「だって今激しく揺さぶられたら吐きそうなんですもん、満腹だから」
「成程ね。でも君のことだから亜衣乃が寝てるから、って言うと思ったのに」

 霧咲にもっともなことを言われて、榛名はつい赤面してしまった。
 亜衣乃が既に熟睡してるからとはいえ、途中で起きてくる可能性などは正直頭になかったのだ。

「と、とにかく入ってきますから!」
「俺も後から行くよ」
「はーい」
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