運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
241 / 322

125 堂島、墓穴を掘る


   夜勤は何事もなく終わりそうだった。
   あとは残すところ患者2人の回収が終われば、明日の透析の準備をして今日の仕事は終わりだ。
   もちろん、患者を全員帰してしまっても、スタッフは定時になるまでは帰れないが。
   夜勤メンバーの堂島、有坂、若葉は空いた時間にそれぞれ別の作業をしていたが、堂島がふう、と一息ついたところで有坂に声をかけられた。

「……で、ほんとのところはどうしたんですかぁ? 堂島くん」
「え、まだその話すんの? 有坂っち」
「だって気になるじゃないですかぁ。ねえ、ついに榛名主任に告白して振られたんでしょう?」
「はぁ? ……あのさぁ別に俺、榛名くんのことそういう意味で好きじゃないからね? そりゃ前はちょっかい出してたけどさ、それは榛名くんの反応が面白かったからで、今は霧咲先生が怖いからそんなんする気も起きねーっつーの」

   あの飲み会の一件から、榛名とは一応普通の関係に戻ったのだが――榛名がだいぶ譲歩したのだが――霧咲とは何の交流もないままだった。
   MEは毎日2~3人は透析室で勤務しているので、霧咲が機械について何か相談したいことがあれば、堂島以外のMEに声を掛けていた。
   それならもう堂島なんか最初から居ないものとして扱ってくれればいいのに、同じ空間に居る時は未だに無言のプレッシャーを掛けてくるのだ。
   もう榛名にちょっかいを出す気など、堂島には皆無だというのに。

(全面的に俺が悪いんだけどさ、ホンット大人気ねぇと思うわ、あのセンセイ)

   榛名は霧咲と付き合っていることはひた隠しにしているようだが、今や透析室で2人の関係を知らない者は居ない。

(たとえばだけど、霧咲先生に俺と二宮先輩のこと話したりしたら、安心したりすんのかな……)

 ちらりとそんな考えが頭を掠めたが、やはり誰かに話すのはリスクが高すぎると思ってヤメた。
 霧咲は同性愛者なのだから、バラしたところでなんのリスクがあるだろうとも思ったけれど。

(大体、バレたくねぇのは俺だけじゃねぇし)

 二宮は何も言わないけれど、きっと堂島とのことは周囲には絶対にバレたくないだろう。
 考えなくても分かる、自分もそうだからだ。
   でも、2人の間だけで勝手に始まって、更に勝手に終わるとしたら、結局後に残るものは何も無い。
   そんな関係、最初から何も無かったのと同じじゃないか、それはそれで嫌だ――と、堂島の中では矛盾が発生している。
 そのせいでここ最近ずっと、モヤモヤしているのだ。
   もちろん、他にも理由はあるけど。
   更に山本に合コンに誘われて、誘われた要因の二宮があっさり承諾したこともモヤモヤの原因の一つなのだった。
   有坂は思案にくれる堂島を暫し見つめて、急にため息をついた。

「ふぅぅん、堂島くんてばオトナになっちゃったんですねぇ。つまんないですぅ~」
「有坂っち。俺の方が二つくらい年上だったよね?」
「三つですぅ」
「ああそう……三つも歳上の成人男性を子供扱いすんのヤメてくれない?」
「だって堂島くんって、おっきな子どもみたいなんですもん」
「……」

   自分の一体何処が……と思って考えたら、結構当てはまる節が多いことに気付き黙った。
 しかしこのまま黙って引き下がるのは少し面白くない。

「有坂っちだってその年でそのぶりっ子口調は痛いと思うんだけど? 子どもっぽさは俺とどっこいどっこいじゃね?」
「有坂ちゃんのは、キャラだからいいのよ」
「そうですぅ~」
「……」

   別の作業をしていた若葉に援護射撃とばかりに横から突っ込まれ、とうとう堂島は黙らざるを得なくなった。 
   悔しいが、あまり女性陣に逆らうとろくなことが無いのでおとなしく引き下がる。

「ちぇ、どぉーせ俺はガキですよ……つーか男はいつまでも夢見る少年なんだから、ガキのままでもいいんですよ!」
「こんな仕事に就いててよく自分を夢見る少年だとか寝言が言えるわね、堂島くん」
「若葉さん辛辣ぅ!!」

   さすがに年上の若葉には敵わないと思い、もうつまらない言い訳を述べるのもやめにした。

「ねぇねぇ堂島くん、誤魔化されちゃいましたけど何か悩み事があるなら聞きますよぉ? もしかして恋愛系の悩みですかぁ?」
「えっ……!?」 
「ビンゴね」
「ビンゴですぅ」
「ちょっと! 俺まだ何も言ってないでしょーよ!!」
「あ、もしかして院内で好きな人ができちゃった感じですかぁ?」
「はあ!?」
「またビンゴね」
「ビンゴですぅ~」
「ちょっ……! その連携攻撃、ヤメて!!」

   これ以上、何を喋っても墓穴を掘る。
   しかし、完全に暇を持て余している――榛名がいれば怒られるのであろうが生憎不在である――有坂と若葉がこのまま他の話題に移るとも思えない。
   これはもう、下手なことを言う前に観念するしかない、と思った。
 もちろん、二宮とのことは絶対に言わない方向で。
感想 7

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。