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130 二宮、告白される
周りの何か期待しているような空気を二宮も薄々感じてはいたものの――山本がなんとなく自分をロックオンしているということも――分かったところで自分には何もできないと思った。
なのでとりあえず対処法を考えようとトイレに立ったはいいが、これは悪手だったかもしれない。
もし自分が誰かを誘おうと思ったら……
「二宮さん」
「……山本主任」
「ごめんなさい、待ち伏せとかしちゃって」
相手が一人になった時を狙って、落としに行くからだ。
案の定、山本はトイレを出たすぐのところで二宮を待っていた。
「ええと……あの、俺今から煙草吸いに行くんですが」
「付き合います!」
トイレに行ったはいいが、具体的な対処法は何も考えていなかった。
せいぜい堂島に頼んで席替えをして貰おうとか、そのくらいだ。
しかし相手ははっきりと『待ち伏せ』と言ったのだから、『山本主任もトイレですか?』などと言って逃げることもできない。
その上、喫煙者かどうか分からないが喫煙所まで付き合うと言う。
とりあえず話を聞くしかないか……と観念し、二宮は黙って喫煙所のある一階のフロント前まで降りて行った。
「ところで二宮さん、甘いものとかってお好きですか?」
山本も喫煙者だったらしく(喫煙所で遭遇したことはないので知らなかった)、二宮が吸い始めたら自分も煙草を出して吸い始めた。
別に女性が喫煙することに、二宮はなんの抵抗もない。
歴代の彼女は皆非喫煙者だったが。
「いいえ。何故ですか?」
「あ、好きじゃないんですか……じゃあ、いいです。その、今日バレンタインデーじゃないですか。だから一応用意してたんです、チョコレート」
「そうですか。……えっと、俺にですか?」
「そうです」
「あー……せっかく用意して頂いたんなら、受け取ります」
「え、いいんですか!?」
いいんですかというか、そこまで言われて受け取らないのも鬼だろうと思ったのだ。
別にチョコレートを受け取るくらいなんでもないことだ。ホワイトデーに礼をすればいい。
それに自分はそこまでなくても、堂島はチョコレートが好きだ。
「酒のツマミにしますよ。確かワインとかに合いますよね」
「二宮さん、ワイン好きなんですか!? 私も実はお酒はワインが1番好きなんです! あの、良かったらこのあと二人で飲みにいきません? そこでチョコレート食べてもいいですし」
山本の勢いに、思わず身体を反ってしまう。
「えっと……すいません。社交辞令でした。実は洋酒はあまり得意ではなくて……」
「あ、そうですか……」
(き、気まずい……気まずすぎる)
慣れない社交辞令など言わなければ良かったと思ったが、もう後の祭りだ。
さっきまで一応アルコールを摂取していたのに、この状況で全部とんでしまった。
これならまだ苦手なハイボールやウイスキーの類を飲んで酔っていた方が良かったのではないか……と一瞬思ったが、それは多分堂島に迷惑をかけると思うので避けていた。
そうこうしている内に、煙草も吸い終わろうとしている。
山本の方も同じだったので、気まずい空気の中二宮の方から声をかけた。
「えっと……そろそろ戻りましょうか」
「あの、二宮さん」
「はい?」
山本は、急に何かを決心したような顔で二宮に向き合った。
「もう分かってらっしゃると思うのではっきりとお聞きしますけど……お付き合いを前提に、私とお友達になってもらうことは可能でしょうか?」
さっきも思ったが、山本は外科病棟の看護主任だけあってなかなか潔い女性だ。
その性格は好みではないが、決して嫌いではない。
さっき酔っていたのも演技だったようだし、もし二宮がフリーだったならば勢いで『いいですよ』と言ってしまいそうな……
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