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〃
後に着いたエレベーターから矢沢が降りてきて、堂島のコートとバッグを渡してくれた。
その時、そっと耳元で囁かれた。
「堂島、元気出せよ! 世界には女だってあと35億いるんだからな……!」
「はい?」
「35億」
(何が?)
矢沢に肩を抱かれて、おもむろに慰められている。
もしかして矢沢は、堂島が二宮に失恋したことに気付いたのだろうか。
だとしたら非常にマズい。
「あ、あのさ矢沢……」
「分かってる、後は俺に任せとけ。男どもにはさっきLINEで伝えた」
「は!?」
(俺が二宮先輩にフラれたことを参加者の男全員が知ってる!? 何で!?)
「ヤケ酒、全員で付き合うからな!」
「いや、ちょっ、何してくれてるんスかマジで、えっ? いやマジで意味わかんないんだけど」
堂島が矢沢の言動に焦っていると、グイッと反対側から強く腕を引かれた。
堂島を矢沢から引き離したのは、二宮だった。
予想以上に強い力で引かれたため、堂島はよろめいて二宮に抱き着くような態勢になってしまい、慌てて離れようとした。
「せ、先輩? すんませ──おわっ!」
が、足が縺れてまた抱き着いてしまった。
「いいからジッとしてろ。……矢沢さんすいません、うちの堂島が何かご迷惑お掛けしましたか?」
「え? いや、別に……」
「コイツを誘ってくれてるみたいですけど、ウイスキー飲んで気持ち悪そうだし今日は俺が連れて帰ります。また誘ってやってください」
「え? 二宮くん、これから山本主任と二人で飲みに行くんじゃ……」
「は? 行きませんけど。何故ですか?」
「だ、だって、二人は付き合うんじゃないんですか!?」
「ははは……いやいや……」
二宮が頭を抱えて苦笑すると、遠くから山本の声が飛んできた。
「ちょっと矢沢くん! そこんとこあんま深く突っ込まないでよね~!! せっかく二宮さんが黙っててくれてんのに~!!」
「え!? あの、それってどういう」
「とにかく、俺と堂島はこれで失礼します。楽しかったです、誘ってくれてありがとうございました。それと山本さん、チョコレートどうもありがとうございました」
「どぉいたしましてぇ~……ああ、二宮さん帰っちゃうのね……堂島くんのせいね全く、先輩に迷惑かけて……さ、じゃあ行ける人は三次会に行くわよ~!!」
「は~~い!!」
どうやら会計はもう終わったみたいで、山本に続いてナース達が全員カラオケ屋を出ていく。
男性陣は少し困惑気味な顔をしていて、放射線技師の一人が矢沢に尋ねた。
「矢沢、さっきLINEでこれから男だけで飲んで堂島を慰めるとかなんとかいうのはどうなったんだ?」
「あ、ああ。なんか俺の勘違いだったみたいで……じゃあ二宮くん、堂島のことは任せていいの?」
「はい。皆さんは三次会楽しんで来てください」
堂島の身体を支えたまま、二宮は愛想良く言った。
「堂島、あんまプライベートでは先輩に迷惑掛けんなよ! じゃあな、お疲れ~」
「うぃっす……お疲れ様っした……」
そしてその場には、堂島と二宮だけが残されたのだった。
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