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133 堂島、別れを切りだす
堂島と二宮は黙って外に出た。
楽しそうに喋りながら去っていく山本達の姿が見えなくなるまで、二人で眺めていた。
そして、気が付いたように堂島が言った。
「あ、俺カラオケの金出してねぇ……」
「お前がトイレ行ってる間に集めたんだよ。お前の分は俺が出しといたから」
「あー……いくらでした? 払います」
「いいよ、あれくらい。俺一人で結構飯食ったから多目に出しただけだしな」
「どーもっス………」
また、会話が途切れた。
というより、意図的に口を噤んでしまってるのは堂島だけで、二宮の態度はいつもと変わらないように見える。
そう見えるだけ、であるが。
でも、堂島はそんな二宮のわずかな変化に気付いていない。
さっきまで本気で二宮に振られたと思っていたし、まともに顔も見れていないからだ。
なのでつい、可愛くないことも言ってしまう。
「二宮先輩、俺別にひとりで帰れるからまだ飲みたかったら矢沢さん達に合流してきていいッスよ」
「あ? 冗談言うなよ。お前をダシにして抜けれたのに」
(は? ダシって……ひどい)
そう思ったけど、突っ込まなかった。
何だかんだ言って、二宮が自分を心配してくれて、一緒に帰ると言ってくれたことは嬉しかったから。
でも、まだモヤモヤは残っている。
ずっと堂島の胸の中で燻っている、薄暗い感情。
それはもはや自分ひとりの中には仕舞い込めないくらい、増大していた。
「……二宮先輩は山本主任と付き合うことにしたんだって、俺も勘違いしてました」
「えぇ? 他の奴が面白がって誤解すんのはまだいいとして、なんでお前が勘違いするんだよ」
抑えきれなくて、無意識に言葉が口をついて出て行ってしまう。
「ほんとは、女の方がいいんじゃないかと思って」
(あ……やばい)
「あ?」
思わず指先で唇に触れたけれど、出て行った言葉はもう二度と戻せない。
自分が何をしているのか──言ってはいけないことを言っているのは分かっている。
けど、止まらなかった。
ずっと思っていたことだったから。
「二宮先輩も俺も男だし、やっぱり女の方がいいに決まってるっスよね。あのー、俺があの日先輩に責任取れっつったの覚えてます? あれ、もういいです。今日限りで無効にします。だから、これ以上無理に俺に付き合って貰わなくていいです」
「……おまえ、さっきから何言ってんだ?」
「だって二宮先輩、ほんとは俺の事なんか全然好きじゃないっしょ? だからもう、いいんです」
「いいんですってお前……」
(付き合ってんのにエッチもしないなんて、セフレ以下だろ。うん、悔しいけどそれは認めよう。あー、なんか泣きそう。でもまだ泣くな俺、もうすこしだ)
「だから別れましょ、サクッと。ね」
(せめて、一人になってから泣きたい……)
「あの時のことは、犬に噛まれたとでも思って忘れますから」
二宮に重たい奴だと思われたくないし、自分でも思いたくない。
堂島は今の職場を辞めるつもりはないので、恋人としての付き合いをやめたとしても、MEの先輩後輩という関係はこれからも続いていくのだ。
二宮の方が職場を変えない限り。
だから、出来るだけ重たい空気を作りたくない。
来週の勤務から、また普段通り今までと同じように話せるように。
そうするのは簡単だ、いつもみたいに軽くてチャラい感じで別れればいい。
その簡単なことが、今はとても難しいのだけど……
「だから、二宮先輩も……」
「堂島」
「な、なんっスか」
(やべ。ちょっと声震えたし……)
「ちょっと来い、ちゃんと話そう」
「え!?」
いきなりガッと左手を強く握られて、二宮に引きずられるように歩きだした。
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