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〃
堂島がシャワーを浴びている間、二宮はベッドの端に座ってぼんやりと思案していた。
……まさか、あの堂島がそんな可愛い理由で拗ねていた――別れ話まで持ち出すほどに――なんて、想像もしていなかった。
(あいつにあんな可愛い面があったなんてな……)
全然、知らなかった。
普段の、後輩として接してきた堂島とも、付き合い始めたあとの堂島とも、あまりにもギャップがありすぎる。
しかもそれは、確実に自分の好みをピンポイントで突いてくるギャップだった。
その場で数秒間、口を抑えて悶えてしまう程に。
(参った……マジで……)
堂島は、第一印象は軽薄で手のかかりそうな後輩だと思っていたのに、仕事はわりと真面目だったり(しかも穿刺は自分より上手い)浮気性で飽きっぽいのかと思いきや意外と一途だったりと、二宮にとっては元々ギャップの激しい男だった。
けれど、ここまで激しいとは想像していなかった。
何故自分が堂島に惹かれたのか、何故付き合って責任を取るということをあっさり受け入れてしまったのか――付き合い始めたのち、自分でも不思議に思うことが何度かあった。
堂島は仕事仲間でさえなければ決して仲良くしたいタイプじゃないし、何より同じ男だ。
そういう対象として見るなんて、二ヶ月前まではありえないことだった。
でも、手を出したのは自分の方が先らしいのでその辺りは何も言えない。
しかしここに来て、自分はなんとなく堂島に惹かれていたわけではなくて、本能的に惹かれる理由があったのだと二宮はやっと思い知った。
(あいつって意外とタチ悪ぃんだな……いや、俺が言うなって感じだけど……)
二宮は、堂島に手を出したくなかったから出さなかったわけではない。
付き合い始めてまだ一ヶ月程度だし、いくら一度抱いていると言っても始まりが最低だったからこそ、大事にしようと思っていたのだ。
『責任を取れ』と言われた言葉通りに。
酔って堂島を抱いたことは(残念ながら?)全く覚えていないし、過去にもそういったことは……あるにはあるのだが、それもまた覚えていないし――二宮はここで、俺って結構最低だったんだなとまた思い知った――だから意識して男を抱こうとしてるのは今回が初めてなので、抵抗が無いわけではなかった。
二宮はゲイではないので、男を抱きたい、もしくは抱かれたいという欲求は全くない。多分。
しかし記憶にないセックスをした翌朝の堂島は何故だか非常に可愛く見えて、こいつなら抱けそうだな、と思った。
抱かれたいとは思わないが。
早く抱いてしまって、その感覚を確かなものにしたいとも。
しかし、堂島も二宮と同じく元々ノンケだ。
顔を真っ赤にして『責任を取れ!』と言うぐらいだから嫌われてはいないのだろうけど、やらかしてしまった手前、自分本位でセックスになだれ込むなんて真似は出来なかったし、したくなかった。
二宮は、交際相手には常に誠実でありたいと不倫して出て行った父親の反面教師で常々思っている。
彼のポリシーと言ってもいいくらいだ。
ウイスキーを飲むとそんなポリシーも記憶も遥か彼方へ吹っ飛ぶが。
だから相手が男であろうと付き合っている以上は大事にしようと思っているし、堂島にはタイミングを見計らってもう一度許しを請い、そして抱こうと思っていた。
なのに、二宮が抱かないことで堂島があんなに思い詰めていたなんて、考えもしなかった。
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