運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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 桜の五人乗り用の乗用車に、運転席は霧咲、助手席には榛名、そして後部座席には母、亜衣乃、桜が乗って出発した。
 車にはナビも付いて一応目的地までの設定もしているが、霧咲は昨日車で通った道をわりと覚えているようで、まるで自分の地元のようにスムーズに運転していた。

 桜と母は霧咲が運転するのを見て、「霧咲さん、運転本当に上手~!」だとか「やっぱり男の人の運転だと安心やねえ~」だとか浮かれ気味だ。榛名はわざと少しふてくされて「俺も男だけどペーパーですいませんね」と言った。
 そんなことを言ったものだから、亜衣乃に「アキちゃん、ペーパーってなあに? 紙?」と突っ込まれて、免許を持っているのに運転ができない、という情けない説明を自らすることになってしまったのだった。

「昨日あんたたち夜中にデートしちょったっちゃろ? どこで飲んでたと?」
「あそこだよ、駅前の……なんとかってバーあるやん」
GLASSYグラッシーじゃなかった?」
「あ、なんかそういうやつ……」

 霧咲はそう言ったが、正直榛名は店の名前など見てはいなかった。むしろ見て憶えていた霧咲がすごい、と思った。それを聞いて桜は「へ~え、あそこそんな名前やったと」と言った。適当な姉弟である。

 車内では榛名がわざわざナビをせずとも、母と桜が観光案内と言わんばかりに「あそこは私が腰を悪くしたときに通ってた病院!」だの「ココこないだ潰れてまた新しいお店ができたとよ、あ、霧咲さんそこ右~」だのと榛名が知らないことも同時にベラベラ喋りながら教えてくれるので、正直助かった。
 有料道路を通った際は少し海が見えて、亜衣乃が「わあ、海! すごい、水平線だぁ!」と喜んでいた。天気がいいので、今日は海が綺麗に見える。

「誠人さん、運転大丈夫ですか? 目的地までまだ結構ありますけど……昨日夜遅かったし」
「ん? 余裕だよ。遅かったけど、結局6時間も寝かせてもらったしね」
「それもそーですね」

 家族といると気が抜けるのか、榛名の態度もいつもよりフラットというか、少し子供っぽいというか、少年のような感じがする。それが霧咲にはなんだか可笑しくて、可愛かった。彼はここでは「弟」なのだ。

「それにしても、道路脇に並んでるこのヤシの木? を見ると本当に南国って感じだよね、宮崎って。昨日も思ったけど」
「ワシントニアパームですよ。ふふ、そういう演出なんです」

 榛名たちが今向かっているのは鵜戸神宮うどじんぐうだ。日南海岸沿いにある主に安産祈願の神社で、海沿いの断崖の岩窟の中に本殿がある。場所も非常に珍しいため、宮崎では有名な観光地だ。行く途中に亜衣乃が観たがっていた景勝地――『鬼の洗濯岩』もよく見える。

 一時間半ほどが経過し、ドライブコースが日南海岸に入ると真横に大きく海が見えて、霧咲と亜衣乃のテンションは爆上がりした。

「わあ海だ海ー! すごい、めちゃくちゃきれい!」 
「亜衣乃ちゃん、もうすぐ鬼の洗濯岩が見えるわよ~」
 
 桜がそう言うと、すぐに波状岩――鬼の洗濯岩が姿を現した。

「うわあ、うわあすごい! 本当に岩が洗濯板みたいな形してるー!! なんでこんなギザギザになるの? すごいすごい! 不思議~!!」
「不思議よねえ、何万年もかけて砂や岩が固まって、波に洗われて出来上がるんやって」
「あ! ねえ、あれってもしかして青島?」

 亜衣乃が指さした先には、縁結びで有名な青島神社のある青島が見えた。木がわさわさと生えていて、緑の塊のようだ。榛名は幼い頃に家族で行ったことがあるというものの、全く覚えていない。

「青島は今度夏休みに行ってみようか。波状岩の上も歩けるみたいだよ」
「えー! うんうん、行きたーい!!」
「青島神社は縁結びで有名やとよぉ。亜衣乃ちゃん、今クラスで好きな男の子とかおらんと~?」

 桜がからかうように言ったが、亜衣乃は一瞬キョトンとしたあと、「そんなのいないよ、同い年の男子なんてバカでイジワルな子ばっかりだもん!」と憤慨した。桜は「あらあら」と可笑しそうに笑ったが、榛名は以前に睨まれたあの男子を思い出して、また勝手に気の毒に思ったのだった。

「亜衣乃ちゃん、あとでサンメッセにも行ってみる? モアイ像があるとよ」
「あ、それもガイドブックで見た! 行きたーい!」
「じゃあ鵜戸神宮に行ったあとお昼ご飯食べて、それから行こうか」

 榛名の提案に特に反対意見はなく、霧咲はもはやナビではなく道路標識を見ながら鵜戸神宮の駐車場を探し、運転を終えたのだった。

「誠人さん運転お疲れ様です、ありがとうございます」
「ふふ、最高のドライブコースで運転してる方も楽しかったよ」
「それは良かったです」
「君はナビゲーターの仕事を途中から放棄していたけどね」
「うっ……俺だってこの辺は幼い頃の記憶しかないからよくわかんないんですよ、すいません……」
「全然いいよ、言ってみただけ」
「もう!」

「アキちゃーんまこおじさーん、イチャイチャしてないで早く来てよ~!!」

 亜衣乃の声に顔を上げると、女性三人は既に駐車場から出るところだったので、榛名と霧咲は慌てて後を追いかけたのだった。
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