運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
322 / 322

18

 浴室を出て、堂島はベッドにどっかりと腰を下ろし、二宮は備え付けの化粧台の椅子に座り、堂島に向き合った。

「――で、なんなんスか結婚て。ていうかまだ日本は同性婚認められてないですよね!? 海外脱出でもする気っすか?」
「いや……そんな形式的なモンは別にどうでもいいけど、つまり一緒に住んで……ずっと一緒にいようぜっていう約束?」
「ああ、そういうことっすか……」

 堂島は全身から力が抜けて、ベッドにぽすんと後ろ向きに倒れた。しかし結婚というのは二宮の言う『形式的なモン』という部分がもっとも大事なのではないだろうか。
 それは今はまだ無理として、それにしても――。

「……なんで急に結婚とか言い出したんですか?   マジでこないだ結婚式に行ってから価値観変わったんですか? 二宮先輩、結婚願望は無いとか言ってたじゃないですか……」
「そうだけど……それは一般論というか」
「よくわかんねぇんスけど。俺にも分かるように説明してください!」

 二宮は内心(プロポーズに解説とかいるか?)と思ったが、スッと立ち上がると堂島の横に座り、投げだされていた右手を握った。ぴくっと堂島の身体が反応する。

「――俺はこれから先、もうお前以上に好きになる奴はできねぇと思うんだ」
「は……?」
「お前にもそうであってほしいし、……無理かもしんねぇけど、繋ぎ止めておきたいと思った。だから、結婚したいなって。結婚てそういうモンじゃねぇのか? 他に理由がいるか?」
「………」
「お前は全然そんなこと思ってなくて、俺だけが暴走してんなら悪かった、としか言いようがねぇけど。でも俺、お前に対して責任取らなきゃだしな」
「!」

 堂島は思わず首だけを起こして二宮を見る。悪そうな顔で笑っている二宮と目が合い、顔が熱くなった。

「なあ、どうなの? ずっと一緒に居たいって思ってんのは俺だけか?」
「そりゃ……俺だって、できることなら」
「できるだろ、結婚すれば」
「いやだから結婚っつー制度が……! あ、いや、制度自体はどうでもいいんですっけ、先輩は」
「どうでもよくはないけどな。紙切れ一枚がすげぇ大事なことは分かってるよ」

 堂島の言い方に二宮は苦笑した。さっき自分が言った言葉は少し誤解を生んでいたのかもしれない。

「なんか、好きならあんまり難しく考える必要はねぇのかな、って思ってさ」
「……」

 堂島は二宮の腕を引っ張るようにして、ゆっくりとベッドに座り直すと、今度は二宮の鎖骨辺りに凭れかかった。

「……俺は結婚って言われてもあんま想像つかねぇっつーか、正直めちゃくちゃ戸惑ってますよ。先輩のことは好きだけど……」
「うん」

 堂島は戸惑ってはいるものの、『先輩のことは好き』とサラッと口にしたことが二宮にはかなり嬉しかった。
   また押し倒して激しくキスしたかったが、さすがに空気を読んで話の続きを聞く。

「だって結婚したら職場の人らとか、家族にも言わなきゃいけないんですよね!? そこまでの覚悟はちょっと、今すぐには無理っつーか……! って二宮先輩、何ニヤニヤしてるんですか? もしやこれドッキリじゃないでしょうね」

 だったらブッとばしますよ――と言われる前に、二宮は堂島を抱き締めた。

「違ぇよ!   ……ただ、お前が真剣に考えてくれてるのが嬉しいんだって」
「そりゃそうでしょ。ぶっちゃけ場所と空気は全然読めてねぇけど、冗談だとは思ってませんから」
「場所に関しては、正直悪かった」
「もういいっすよ……既に面白いし」
「………」

 何も言い返せなくて、とりあえず二宮は抱きしめる手に力を込めた。

 ――正直、二宮は自分の発言に自分でも驚いていた。堂島の言ったとおり、結婚願望なんてなかったはずなのに。
 仁科の結婚式を見ても、素直に『おめでとう』と思う以外、何の感情も湧かなかった。
   山下の子どもを見ても、勿論可愛いとは思うが『自分も欲しい』とは思わなかった。

 ただ、堂島に言ったのは本当の気持ちだ。
 この先これ以上好きになれる人間が現れるとは思えないし、ずっと一緒にいたい。だからその証が欲しい。ただそれだけ。

「──別にそういうカミングアウト的なことは望んでねぇよ。ゲイ婚つーか、養子制度のこともよく分かってねぇしな。俺はただ純粋に、これからもお前と一緒に居たいだけ」
「……それなら、俺もそうですよ……?」

 堂島は二宮の身体からそっと離れると、間近で視線を合わせた。目を丸くしている堂島とは対照的に、二宮は目を細めて堂島を見つめ、ふ、と笑った。

「――お前、次のアパートの更新契約すんなよ。俺もしねぇから」
「え?」
「とりあえず同棲しようぜ、手始めに」
「……ルームシェア、っすね」
「いや、同棲だろ?」
「同棲っつーと恥ずいんで、ルームシェアです!!」

 言い方は変えても内容は一緒なのに、何故そんなに恥ずかしがるのか情緒の無い二宮には理解できない。が、とりあえず可愛いのでよしとした。

「……で、プロポーズの返事はイエスってことでいいんだよな? 同性同士の場合、一緒に住むことが一区切りっつーか結婚するのと同義らしいけど。手続きうんぬんは置いといて」
「!?」

 堂島の顔がまたカーッと赤くなった。本当に、ずっと見ていても飽きない。
    行動や表情がいちいち可愛くて、一瞬も目を離せない。
 さっき見ていた夜桜も、目を離せないくらい綺麗だったけれど……

「……俺はこっちの方が、もっと見ていたいかな」
「は? 何言ってんすかいきなり……何が見たいって?」
「何でもねぇよ」

 眉間に皺を寄せてまだ何か言おうとする口を、キスで塞いだ。




番外編 二宮と過去の人【了】




ここまで読んでくださりありがとうございました!
少し時間を置いてから第二部を更新していく予定ですので、本棚はそのままにして頂けるとありがたいです。

すずなりたま
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

飴
2025.06.28

先日『よぞらと太陽』ですずなり様を知ってから、
他の作品も読ませていただきズブズブすずなり沼にハマっております。

特にこの作品、めちゃくちゃ好きです!!!!!
お仕事BLとしても興味深い大人のラブ!!!!!

アキちゃんを絡め取る霧咲さんの執着にドキドキしてましたが、物語が進むにつれてアキちゃんの形勢逆転というか。
アキちゃんの可愛いところに翻弄される霧咲さんがまた可愛く…
可愛さのインフレが起きてますね♡

一気に読んでしまい、更新に追いついてしまいましたが、これからはリアルタイムに続きを楽しみにしております。
連載頑張ってください。

2025.06.29 すずなりたま

飴さんこんにちは!
もうもう超嬉しい感想をありがとうございます~~!!
すずなり沼(笑)にハマって頂けて本当に嬉しいです!!
あほな話がちょっぴり多目ですが!!笑
運命のひと、気に入って頂けて嬉しいです!まだ終わってないのですが、エブリスタの方では二部更新中なので、もしよろしければそちらでもどうぞ~❁

解除
パンちゃん1号
2025.06.19 パンちゃん1号

今リピしてさらに楽しく読ませていただいています。最高です👍👍

2025.06.24 すずなりたま

リピ読みありがとうございます‼️✨✨🙇‍♀️

解除
パンちゃん1号
2025.06.19 パンちゃん1号

毎日楽しみに更新待っています…が、いつも、夜中に読み疲れ、寝てしまい💦💦❤❤❤❤❤が押せてなくて💦💦すいません。たま様のワールドにハマってました🤭霧咲様う~んだんだん若い時からの過去がちらちら見えてくると、アキちゃんでないですがびっくり(・・;)することばかりで、奥深い〜すごすぎる経歴と過去をさらっと普通のように流すところもすごすぎる〜〜🙀話に引き込まれてしまって、先の予測が不可能です。アキちゃんの過去も、今友達からの話でわくわく読ませていただいています。ミスコン🤭🤭🤭個人的には霧咲さんに耳打ちしたい!写真みせてあげたい!でも、アキちゃんも、男性にモテる要素が高校生から、すでにあったんですね〜うんうん!うなずけます。ますます楽しみです。アキちゃんと実家の方や、友達の事など、色々これからも、盛り沢山な内容期待しています。もちろん、2人の甘々イチャイチャ溺愛は、必須でよろしくお願い🙇フフフ🤭楽しみです。

2025.06.24 すずなりたま

パンちゃん1号さん、いつもお読み頂きありがとうございます‼️
ハートのことも気にして頂いて恐縮です💦💦
ハマって頂けて嬉しいです💕💕
霧咲さんの過去は明るくはないのでサラッと流しました笑
榛名の過去は逆パート的な感じで読んでもらえると…笑笑
エブリスタの方にも来てくださってありがとうございます!休載してますが地味に続いてるので、これからも宜しくお願いします✨✨

解除

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕