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〃
「奢らせるにはちょっと恩着せがましすぎない?」
「別に奢らせる気なんてないって! 俺は純粋に榛名君とデートがしたいだけー」
「はいはい、じゃあ次は麻生さんの穿刺お願いしまーす」
「榛名君つれねーなー……ってまたフクザツ血管の大物だし!」
「みんな避けて行ってないから、ヨロシク」
堂島を軽くあしらいながら外来患者の穿刺状況を見て、病棟の患者を電話で呼び出そうとした。すると。
「あの、主任さん」
患者の横井氏に声をかけられた。
榛名はすぐに横井氏の枕元で中腰になり、「どうしましたか? 横井さん」と返事をした。
横井氏は少し困ったような顔で笑うと榛名に言った。
「有坂さんをあんまり怒らないであげてね、僕が刺して良いって言ったんだから」
「え?」
「だって主任さんも堂島くんも休みだったら、僕の血管に刺せる人ってあんまりいないでしょ? 他の人は最初から諦めて来てくれないけど、有坂さんは一応来てくれるから嬉しいんだよね……」
「……」
こんなふうに言ってくれる患者はそう多くない。
暗に『新人のための練習台になってもいい』と言ってくれているのだ。
榛名が新人の頃は、穿刺に失敗すると『もうアンタは刺しに来ないで、下手くそ!』などと怒鳴られたものだ。
有坂はまだ榛名の知る限り、患者に怒鳴られたことはない。
でもそれは普段からのコミュニケーションの賜物なのだろう、と榛名は有坂を少し羨ましく思った。
「……ありがとうございます、横井さん。じゃあ木曜日は有坂さんと一緒に刺しにきますね。僕が隣で指導しますから心配しないでください」
「はい、お願いします」
ついでに、榛名は横井氏の透析記録に目をやった。
「ところで横井さん。今日は体重の増えがかなり多いみたいですけど?」
「あ……、日曜日に外食してね、ついお酒をたくさん飲んじゃったんだ」
「今日は火曜日だから体重増加が激しいのは仕方無いですけど、今日は体重1キロ以上残りますからね? 横井さんは血圧もあんまり高くないんですから、除水速度も750以上は掛けれませんし……透析中気分が悪くなったらナースコールしてください。あと、次回は少し水分を控えてきてくださいね」
「はい、すみません気をつけます……」
一応最後には笑ってみせたが、横井氏はすっかり萎縮してしまったようだ。
榛名だってあまり患者にうるさいことは言いたくないのだが、看護師に怒られるのが嫌で節制する患者もいるので、患者のことを思うならば厳しくしなければいけないのも看護師の仕事だ。
榛名は一部の患者の間で、自分が苦手とされているのを知っている。
しかし、ある患者に『厳しいことを言ってくれる榛名さんだからこそ、信頼できます』と言われたことがあるため、榛名は自信をもって自分はこのスタイルで突き進んでいこう、と心に決めているのだった。
「榛名主任、次は誰の穿刺に行ったらいいですかー?」
「えーと、……じゃあ次は迫田さんに。結構待ってるから」
「はーい」
透析室に来た患者の順番をチェックして、次に穿刺する患者を他のナースに依頼するのもリーダーの仕事のひとつだ。
今日の穿刺終了も10時半を超えそうだな……と、榛名は時計を見て思った。
「別に奢らせる気なんてないって! 俺は純粋に榛名君とデートがしたいだけー」
「はいはい、じゃあ次は麻生さんの穿刺お願いしまーす」
「榛名君つれねーなー……ってまたフクザツ血管の大物だし!」
「みんな避けて行ってないから、ヨロシク」
堂島を軽くあしらいながら外来患者の穿刺状況を見て、病棟の患者を電話で呼び出そうとした。すると。
「あの、主任さん」
患者の横井氏に声をかけられた。
榛名はすぐに横井氏の枕元で中腰になり、「どうしましたか? 横井さん」と返事をした。
横井氏は少し困ったような顔で笑うと榛名に言った。
「有坂さんをあんまり怒らないであげてね、僕が刺して良いって言ったんだから」
「え?」
「だって主任さんも堂島くんも休みだったら、僕の血管に刺せる人ってあんまりいないでしょ? 他の人は最初から諦めて来てくれないけど、有坂さんは一応来てくれるから嬉しいんだよね……」
「……」
こんなふうに言ってくれる患者はそう多くない。
暗に『新人のための練習台になってもいい』と言ってくれているのだ。
榛名が新人の頃は、穿刺に失敗すると『もうアンタは刺しに来ないで、下手くそ!』などと怒鳴られたものだ。
有坂はまだ榛名の知る限り、患者に怒鳴られたことはない。
でもそれは普段からのコミュニケーションの賜物なのだろう、と榛名は有坂を少し羨ましく思った。
「……ありがとうございます、横井さん。じゃあ木曜日は有坂さんと一緒に刺しにきますね。僕が隣で指導しますから心配しないでください」
「はい、お願いします」
ついでに、榛名は横井氏の透析記録に目をやった。
「ところで横井さん。今日は体重の増えがかなり多いみたいですけど?」
「あ……、日曜日に外食してね、ついお酒をたくさん飲んじゃったんだ」
「今日は火曜日だから体重増加が激しいのは仕方無いですけど、今日は体重1キロ以上残りますからね? 横井さんは血圧もあんまり高くないんですから、除水速度も750以上は掛けれませんし……透析中気分が悪くなったらナースコールしてください。あと、次回は少し水分を控えてきてくださいね」
「はい、すみません気をつけます……」
一応最後には笑ってみせたが、横井氏はすっかり萎縮してしまったようだ。
榛名だってあまり患者にうるさいことは言いたくないのだが、看護師に怒られるのが嫌で節制する患者もいるので、患者のことを思うならば厳しくしなければいけないのも看護師の仕事だ。
榛名は一部の患者の間で、自分が苦手とされているのを知っている。
しかし、ある患者に『厳しいことを言ってくれる榛名さんだからこそ、信頼できます』と言われたことがあるため、榛名は自信をもって自分はこのスタイルで突き進んでいこう、と心に決めているのだった。
「榛名主任、次は誰の穿刺に行ったらいいですかー?」
「えーと、……じゃあ次は迫田さんに。結構待ってるから」
「はーい」
透析室に来た患者の順番をチェックして、次に穿刺する患者を他のナースに依頼するのもリーダーの仕事のひとつだ。
今日の穿刺終了も10時半を超えそうだな……と、榛名は時計を見て思った。
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