43 / 322
〃
「それで君は、俺への当て付けであの男に付いていこうとしたの?」
「はあ!? そんなわけないだろ!!」
榛名はバッと頭を上げて霧咲を見た。
切羽詰まったような必死な表情の榛名を見て、霧咲の顔が少し歪む。
「……ごめん、さっき君があの男に肩を抱かれていたから嫉妬したんだ」
「え……?」
(霧咲さんが、嫉妬?)
霧咲は、榛名をもう一度胸にぎゅう、と抱き締めた。
「榛名、俺は別に聖人君子でもなんでもないから、以前他の人に声を掛けられて付いていったこともあるよ」
「……」
(やっぱり、そうなんだ……)
榛名は霧咲のバスローブをぐっと握った。
「でも、あの日君に会って……俺は君のことしか考えられなくなった。自分から声を掛けたのはあれが初めてだったし、ナイトアフロディーテを飲ませたのも君が初めてなんだ。それは信じてほしい」
(あのカクテルが、なんだっていうの……?)
「それと確かに俺はローズの常連だけど、目的はリュートさんと話すことだ。下心なんかはないよ、彼はとても素敵だけど、俺にとってはそういう対象じゃない。それに彼には最愛の恋人がいるからね。さっきも常連客の中にいたよ」
「え、マスターの恋人が?」
それは意外な事実だった。
確かに仲の良さそうな常連客は何人かいたが、一体どの男があの美人マスターの恋人だったのだろう。
霧咲がローズに通うのは彼に会いに行くためだと堂々と宣言されても、榛名は全く妬かなかった。
それは、榛名もマスターに対しては霧咲と同じ気持ちだからだ。
「うん。俺と同じで年下の可愛い恋人。……いや、リュートさんにとっては年下のカッコいい恋人かな」
「はあ」
カッコいい人はたくさんいた気がする。
あと、やたらと可愛い子も。
「榛名、俺は君以外に恋人なんかいないよ。遊びだなんてとんでもない。結構熱烈にアピールしていたつもりだったのに今更そんな勘違いをされるなんて、俺の方が泣きたい気持ちだ。──俺が好きなのは、本当に君だけだよ。他にもいるだなんて、生憎だが外科医はそんな暇じゃない」
榛名は霧咲の言葉を、頭の中でゆっくり反芻していく。
(年下の、可愛い恋人……?)
(俺以外に、恋人はいない?)
(恋人?)
「コイビト!?」
榛名はバッと霧咲の胸から離れて顔を見上げた。
霧咲は『今更何を言ってるんだ』とでも言いたげな顔で、あっさりと答えた。
「君は俺の恋人だよ。だって君も俺のことが好きだろう」
はっきりと言われて、榛名は真っ赤になる。
「……っっ!」
「違うの?」
「違……わない、です」
そうか。好き同士だから……自分達はもう、恋人だったのだ。
『恋人になろう』とか『付き合おう』という言葉はなかったが、大人同士ならこんなものなのかもしれない。
そもそも、もう二回もセックスをしている。
一体どの時点で自分が霧咲の恋人になったのか榛名には全く理解できないが、とにかく遊び相手でなければいい。
榛名は安心して、身体中の力が一気に抜けていく気がした。
同時に、嬉しくて他に言葉が出てこない。
(自分が誰かの恋人っていうのがこんなに嬉しいなんて、初めてだ……)
今まで付き合ってきた女性のことを『恋人』だと思ったことはない。
付き合っているのだから恋人なのだろうけど、榛名は彼女に恋をしていたわけではないから、『恋人』と思う発想はなかった。
本当に最低だったと榛名は我ながら思うが、それはいつも繰り返されるヒドイ扱いや振られ方で相殺されている、とも思う。
榛名も霧咲の背中に腕を回して、強く抱きついた。
見えてはいないけれど、なんだか霧咲が笑ってる気がした。
「──まぁ、俺はさっきローズで君が俺を庇ってくれた時から既に恋人だと思ってたけどね」
「へ?」
「俺をあいつに渡さないって、大声で言ってたじゃないか」
「そ、それは……!」
そんな直接的には言ってないのだが、あの態度では榛名が霧咲を好きなことは明白で、榛名は思い出してますます赤面した。
よくよく考えれば、あの時点で霧咲に『好きです』と言っていたも同然なのだ。
しかも公衆の面前で。
なんで気付かなかったんだろう……と、榛名は穴があったら入りたくなるほど恥ずかしかった。
「はあ!? そんなわけないだろ!!」
榛名はバッと頭を上げて霧咲を見た。
切羽詰まったような必死な表情の榛名を見て、霧咲の顔が少し歪む。
「……ごめん、さっき君があの男に肩を抱かれていたから嫉妬したんだ」
「え……?」
(霧咲さんが、嫉妬?)
霧咲は、榛名をもう一度胸にぎゅう、と抱き締めた。
「榛名、俺は別に聖人君子でもなんでもないから、以前他の人に声を掛けられて付いていったこともあるよ」
「……」
(やっぱり、そうなんだ……)
榛名は霧咲のバスローブをぐっと握った。
「でも、あの日君に会って……俺は君のことしか考えられなくなった。自分から声を掛けたのはあれが初めてだったし、ナイトアフロディーテを飲ませたのも君が初めてなんだ。それは信じてほしい」
(あのカクテルが、なんだっていうの……?)
「それと確かに俺はローズの常連だけど、目的はリュートさんと話すことだ。下心なんかはないよ、彼はとても素敵だけど、俺にとってはそういう対象じゃない。それに彼には最愛の恋人がいるからね。さっきも常連客の中にいたよ」
「え、マスターの恋人が?」
それは意外な事実だった。
確かに仲の良さそうな常連客は何人かいたが、一体どの男があの美人マスターの恋人だったのだろう。
霧咲がローズに通うのは彼に会いに行くためだと堂々と宣言されても、榛名は全く妬かなかった。
それは、榛名もマスターに対しては霧咲と同じ気持ちだからだ。
「うん。俺と同じで年下の可愛い恋人。……いや、リュートさんにとっては年下のカッコいい恋人かな」
「はあ」
カッコいい人はたくさんいた気がする。
あと、やたらと可愛い子も。
「榛名、俺は君以外に恋人なんかいないよ。遊びだなんてとんでもない。結構熱烈にアピールしていたつもりだったのに今更そんな勘違いをされるなんて、俺の方が泣きたい気持ちだ。──俺が好きなのは、本当に君だけだよ。他にもいるだなんて、生憎だが外科医はそんな暇じゃない」
榛名は霧咲の言葉を、頭の中でゆっくり反芻していく。
(年下の、可愛い恋人……?)
(俺以外に、恋人はいない?)
(恋人?)
「コイビト!?」
榛名はバッと霧咲の胸から離れて顔を見上げた。
霧咲は『今更何を言ってるんだ』とでも言いたげな顔で、あっさりと答えた。
「君は俺の恋人だよ。だって君も俺のことが好きだろう」
はっきりと言われて、榛名は真っ赤になる。
「……っっ!」
「違うの?」
「違……わない、です」
そうか。好き同士だから……自分達はもう、恋人だったのだ。
『恋人になろう』とか『付き合おう』という言葉はなかったが、大人同士ならこんなものなのかもしれない。
そもそも、もう二回もセックスをしている。
一体どの時点で自分が霧咲の恋人になったのか榛名には全く理解できないが、とにかく遊び相手でなければいい。
榛名は安心して、身体中の力が一気に抜けていく気がした。
同時に、嬉しくて他に言葉が出てこない。
(自分が誰かの恋人っていうのがこんなに嬉しいなんて、初めてだ……)
今まで付き合ってきた女性のことを『恋人』だと思ったことはない。
付き合っているのだから恋人なのだろうけど、榛名は彼女に恋をしていたわけではないから、『恋人』と思う発想はなかった。
本当に最低だったと榛名は我ながら思うが、それはいつも繰り返されるヒドイ扱いや振られ方で相殺されている、とも思う。
榛名も霧咲の背中に腕を回して、強く抱きついた。
見えてはいないけれど、なんだか霧咲が笑ってる気がした。
「──まぁ、俺はさっきローズで君が俺を庇ってくれた時から既に恋人だと思ってたけどね」
「へ?」
「俺をあいつに渡さないって、大声で言ってたじゃないか」
「そ、それは……!」
そんな直接的には言ってないのだが、あの態度では榛名が霧咲を好きなことは明白で、榛名は思い出してますます赤面した。
よくよく考えれば、あの時点で霧咲に『好きです』と言っていたも同然なのだ。
しかも公衆の面前で。
なんで気付かなかったんだろう……と、榛名は穴があったら入りたくなるほど恥ずかしかった。
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
魔性の男
久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕