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〃
「榛名主任ー!」
月に一度の主任会議へ向かう途中、外科病棟の主任看護師・山本に後ろから声を掛けられた。
山本はなかなかの美人だが36歳独身、夜な夜な合コンに繰り出しているという派手な女性で、榛名は彼女が少々苦手だった。
自意識過剰かもしれないが、なんとなく独身で歳の近い自分も彼女のストライクゾーンに引っかかっているというか、会うたびにアピールされているような気がしていたからだ。
──以前は。
「どうも、お疲れ様です」
「お疲れ様です! 今から会議ですよね?
会議室まで一緒に行きましょう!」
「はい……」
一緒に行きたくはないが、目的地が同じだから仕方がない。
榛名はふう、と深呼吸するようにため息をついた。
彼女が何故自分と一緒に行こうと言ったのか、その明確な理由が今なら分かるからだ。
「あの、透析室に助っ人に来てらっしゃる霧咲先生、独身だって本当ですか?」
(そら、きた……)
「え……さあ、そういう話はしたことがないので分かりませんが」
「ええ? 透析の近藤師長に、榛名主任が一番霧咲先生と仲良しだから聞いてみろって言われたんですけど。なぁんだ、何も知らないんですね~」
「お力になれず、すみません」
榛名は心にもないことを言い、わざと苦笑してみせた。
山本は以前透析室に入院患者を送って来た際、回診をしている霧咲を見て一目惚れしたらしい。
霧咲は医局と透析室と食堂くらいしか行かないので、その存在を知っている者は院内では意外と少ないのだ。(PTAをするようになったのでオペ室の看護師は知っているが)
けれど、やはりどこからか『超イケメンの医師が透析室に助っ人に来ている』と病院中で噂になり、大した用事もないのに透析室に来る看護師や医療事務職員が増えたのである。
これが現在榛名が抱える最大のストレスだった。
「じゃあ今度聞いててくれません? あと、できれば合コンなんかもしたいなって思ってて……榛名主任も独身ですよね? なんとか霧咲先生を誘ってこれませんか!? うちの病棟の若い子何人か連れて行きますから! よければ独身のMEさんも誘って頂いて」
「うちのMEは簡単に誘えますけど、さすがにK大の先生を気軽に合コンには誘えませんよ」
失礼すぎるだろ、と思ったが口には出さなかった。
「ええ、どうしてです? 独身だったらいいじゃないですか、なんとか誘うだけ誘ってみてくれませんか? ダメ元でいいのでお願いします!」
「はぁ……ダメ元でいいなら、いいですよ……」
「やった! お願いしますね!」
「期待はしないでくださいね?」
ちょうど会議室に着き、山本主任はもう合コンが成功したような浮かれた足取りで先に会議室へと入って行った。
本当に腹立たしい。
何故自分の恋人を狙う合コンに、恋人である自分が誘わないといけないのか……。
榛名は会議室に入る前に、小さく舌打ちをした。
月に一度の主任会議へ向かう途中、外科病棟の主任看護師・山本に後ろから声を掛けられた。
山本はなかなかの美人だが36歳独身、夜な夜な合コンに繰り出しているという派手な女性で、榛名は彼女が少々苦手だった。
自意識過剰かもしれないが、なんとなく独身で歳の近い自分も彼女のストライクゾーンに引っかかっているというか、会うたびにアピールされているような気がしていたからだ。
──以前は。
「どうも、お疲れ様です」
「お疲れ様です! 今から会議ですよね?
会議室まで一緒に行きましょう!」
「はい……」
一緒に行きたくはないが、目的地が同じだから仕方がない。
榛名はふう、と深呼吸するようにため息をついた。
彼女が何故自分と一緒に行こうと言ったのか、その明確な理由が今なら分かるからだ。
「あの、透析室に助っ人に来てらっしゃる霧咲先生、独身だって本当ですか?」
(そら、きた……)
「え……さあ、そういう話はしたことがないので分かりませんが」
「ええ? 透析の近藤師長に、榛名主任が一番霧咲先生と仲良しだから聞いてみろって言われたんですけど。なぁんだ、何も知らないんですね~」
「お力になれず、すみません」
榛名は心にもないことを言い、わざと苦笑してみせた。
山本は以前透析室に入院患者を送って来た際、回診をしている霧咲を見て一目惚れしたらしい。
霧咲は医局と透析室と食堂くらいしか行かないので、その存在を知っている者は院内では意外と少ないのだ。(PTAをするようになったのでオペ室の看護師は知っているが)
けれど、やはりどこからか『超イケメンの医師が透析室に助っ人に来ている』と病院中で噂になり、大した用事もないのに透析室に来る看護師や医療事務職員が増えたのである。
これが現在榛名が抱える最大のストレスだった。
「じゃあ今度聞いててくれません? あと、できれば合コンなんかもしたいなって思ってて……榛名主任も独身ですよね? なんとか霧咲先生を誘ってこれませんか!? うちの病棟の若い子何人か連れて行きますから! よければ独身のMEさんも誘って頂いて」
「うちのMEは簡単に誘えますけど、さすがにK大の先生を気軽に合コンには誘えませんよ」
失礼すぎるだろ、と思ったが口には出さなかった。
「ええ、どうしてです? 独身だったらいいじゃないですか、なんとか誘うだけ誘ってみてくれませんか? ダメ元でいいのでお願いします!」
「はぁ……ダメ元でいいなら、いいですよ……」
「やった! お願いしますね!」
「期待はしないでくださいね?」
ちょうど会議室に着き、山本主任はもう合コンが成功したような浮かれた足取りで先に会議室へと入って行った。
本当に腹立たしい。
何故自分の恋人を狙う合コンに、恋人である自分が誘わないといけないのか……。
榛名は会議室に入る前に、小さく舌打ちをした。
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