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30 報告と新たな出逢い
榛名は長くて退屈な主任会議の途中、暫し回想に耽っていた。
今から一か月半ほど前に、再びローズを訪れた日のことを。
それは、榛名と霧咲が晴れて恋人同士になった二週間後の土曜の夜。
霧咲は榛名との経緯をマスターに報告するため、榛名は騒ぎを起こしたことをマスターに謝罪するために再びローズを訪れていた。
今度は榛名が妙なナンパなどをされぬよう駅で待ち合わせをして、二人でそのドアを開けた。
「いらっしゃいませ……あ、霧咲さん! それと――」
「こんばんは、リュートさん」
「こ、こんばんは」
榛名は霧咲の少し後ろから、少しオドオドとした態度でマスターに挨拶をした。
マスターはニコニコと笑って出迎えてくれているが、榛名は『きっと迷惑な客がまた来たと思われてるに違いない……』と思い込み、絶望的な顔をしながらその場でバッと頭を下げた。
「あ、あのマスター、この間はお騒がせして本当にすみませんでした!」
「えっ?」
「その、変な騒ぎおこしちゃって、バーの雰囲気を壊しちゃったっていうか! 他のお客さんにもご迷惑を……」
「ああ! 別に謝らなくていいですよ、慣れてますから。それにあの後、お客さんたちも大盛り上がりでしたし」
「へ?」
榛名が顔を上げると、既にカウンターに座っていた客――確か先週も来ていた常連のような若者二人組――の内の一人が、榛名を見ていきなり「あ、あの時の姫だ!」と言った。
まだ早い時間帯だったので、先客はその二人だけだった。
「ひ……、姫ぇ?」
そう言ったのはとても可愛らしい顔立ちをした青年だったので、榛名は(いやいや、むしろ姫はそっちでしょうに)と心の中で思ったが、吃驚して言葉が出てこなかった。
すると、榛名を『姫』と呼んだ可愛らしい青年の連れ――こっちは爽やかな好青年――が、
「広川、本人にいきなり姫なんて言ったらびっくりするだろ?」
と諌めた。しかし。
「あ、イケメンなヒーローもいる! こんばんは、こないだは見ててこっちまでドキドキしましたよ! まるでドラマみたいで。あの後お二人は無事に恋人同士になったんですか!?」
「おーい、聞けよ」
「え、えっと……!」
どうやら騒いだことは迷惑だとは思われてなかったみたいだが、いきなり姫と呼ばれたりヒーローと呼ばれたり(こっちは霧咲のことらしい)更にあの後のことを聞かれて、榛名は何から話せばいいのか分からずに混乱してしまった。
すると、横から霧咲が助け船を出してくれた。
「何やら光栄な呼び方で呼んでくれてありがとう、おかげで無事に姫を手に入れることができました」
「わぁー! おめでとうございますっ!」
ぱちぱちぱち、と拍手をしてくれる仕草も可愛らしい。
好青年の方も少し諦めたような顔で、一緒に拍手をしていた。
「ちょっと霧咲さん……誰が姫ですか、誰が」
「ノリだよ、ノリ。ほら榛名、まずはリュートさんに自己紹介でもしたら?
名乗ったことないだろう」
「あっ……」
マスターの方を振り返ったら、マスターも青年達と一緒に、嬉しそうに拍手をしてくれていた。
そして改めて、榛名はマスターと常連客の若者二人に向かって自己紹介をした。
「えっと、榛名暁哉と申します。看護師をしています」
「看護師さんなんですか。そうか、霧咲さんがお医者様だから……なるほどなるほど」
どうやらマスターは二人が再会した経緯は説明をせずとも、なんとなく分かってくれたようだった。
「あ、僕のことは良かったらリュートと名前で呼んでくださいね」
「いいんですか?」
「ええ、常連さんには名前で呼んでもらいたいですから。こちらは榛名さん、とお呼びしてもよろしいですか?」
「勿論です、嬉しいです」
榛名は何故か感激して泣きそうになった。
あの日は多大なる迷惑をかけたのに、マスターがこんな自分に優しく対応してくれるなんて思ってなかったのだ。
今から一か月半ほど前に、再びローズを訪れた日のことを。
それは、榛名と霧咲が晴れて恋人同士になった二週間後の土曜の夜。
霧咲は榛名との経緯をマスターに報告するため、榛名は騒ぎを起こしたことをマスターに謝罪するために再びローズを訪れていた。
今度は榛名が妙なナンパなどをされぬよう駅で待ち合わせをして、二人でそのドアを開けた。
「いらっしゃいませ……あ、霧咲さん! それと――」
「こんばんは、リュートさん」
「こ、こんばんは」
榛名は霧咲の少し後ろから、少しオドオドとした態度でマスターに挨拶をした。
マスターはニコニコと笑って出迎えてくれているが、榛名は『きっと迷惑な客がまた来たと思われてるに違いない……』と思い込み、絶望的な顔をしながらその場でバッと頭を下げた。
「あ、あのマスター、この間はお騒がせして本当にすみませんでした!」
「えっ?」
「その、変な騒ぎおこしちゃって、バーの雰囲気を壊しちゃったっていうか! 他のお客さんにもご迷惑を……」
「ああ! 別に謝らなくていいですよ、慣れてますから。それにあの後、お客さんたちも大盛り上がりでしたし」
「へ?」
榛名が顔を上げると、既にカウンターに座っていた客――確か先週も来ていた常連のような若者二人組――の内の一人が、榛名を見ていきなり「あ、あの時の姫だ!」と言った。
まだ早い時間帯だったので、先客はその二人だけだった。
「ひ……、姫ぇ?」
そう言ったのはとても可愛らしい顔立ちをした青年だったので、榛名は(いやいや、むしろ姫はそっちでしょうに)と心の中で思ったが、吃驚して言葉が出てこなかった。
すると、榛名を『姫』と呼んだ可愛らしい青年の連れ――こっちは爽やかな好青年――が、
「広川、本人にいきなり姫なんて言ったらびっくりするだろ?」
と諌めた。しかし。
「あ、イケメンなヒーローもいる! こんばんは、こないだは見ててこっちまでドキドキしましたよ! まるでドラマみたいで。あの後お二人は無事に恋人同士になったんですか!?」
「おーい、聞けよ」
「え、えっと……!」
どうやら騒いだことは迷惑だとは思われてなかったみたいだが、いきなり姫と呼ばれたりヒーローと呼ばれたり(こっちは霧咲のことらしい)更にあの後のことを聞かれて、榛名は何から話せばいいのか分からずに混乱してしまった。
すると、横から霧咲が助け船を出してくれた。
「何やら光栄な呼び方で呼んでくれてありがとう、おかげで無事に姫を手に入れることができました」
「わぁー! おめでとうございますっ!」
ぱちぱちぱち、と拍手をしてくれる仕草も可愛らしい。
好青年の方も少し諦めたような顔で、一緒に拍手をしていた。
「ちょっと霧咲さん……誰が姫ですか、誰が」
「ノリだよ、ノリ。ほら榛名、まずはリュートさんに自己紹介でもしたら?
名乗ったことないだろう」
「あっ……」
マスターの方を振り返ったら、マスターも青年達と一緒に、嬉しそうに拍手をしてくれていた。
そして改めて、榛名はマスターと常連客の若者二人に向かって自己紹介をした。
「えっと、榛名暁哉と申します。看護師をしています」
「看護師さんなんですか。そうか、霧咲さんがお医者様だから……なるほどなるほど」
どうやらマスターは二人が再会した経緯は説明をせずとも、なんとなく分かってくれたようだった。
「あ、僕のことは良かったらリュートと名前で呼んでくださいね」
「いいんですか?」
「ええ、常連さんには名前で呼んでもらいたいですから。こちらは榛名さん、とお呼びしてもよろしいですか?」
「勿論です、嬉しいです」
榛名は何故か感激して泣きそうになった。
あの日は多大なる迷惑をかけたのに、マスターがこんな自分に優しく対応してくれるなんて思ってなかったのだ。
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