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32 彼について*
霧咲に求められながら、榛名は考えていた。
「ンッ、ぁっ……」
自分は霧咲のことをほとんど知らない。
出身地や家族のこと、どうして医者を目指そうと思ったのか。
いつから同性が好きだと自覚したのか。
過去の恋人とはどうして別れたのか、など――。
「あ、霧咲さんっ……あン……ッ」
最初は興味がない、と思っていた。
一緒にいることが重要で、本人が話したくないならそんなことは知る必要がない、聞かない方がいいとも。
「あ、やっ、そこ……! だめ、だめえ……」
霧咲の好きな食べ物は豚骨ラーメンとお刺身。焼酎よりも日本酒を嗜む。
好きな飲み物はブラックコーヒー。それとカクテル、カミカゼ。
好きなものはクルマ。(それときみ、と言われた)
嫌いなものは紅生姜とらっきょう――沢庵以外の漬物はあまり食べられない。
苦手なものは小動物と雨。誕生日は8月11日、血液型はAB型。
――そんな、単純なことは知っているけど。
「霧咲さ……ぁっん……っはっ、んん……」
些細な情報を一つ知るたび、もっと霧咲のことを知りたくなる。
何でもかんでも知りたくなって、知りたくないことまで知りたくなる。
「あ、もっとさわって……! ぁっ! んっ」
「可愛いよ、暁哉……もっと感じて、啼いてくれ」
「ああっ、んぅっ、ふあぁ!」
(もっと貴方のことを教えて、霧咲さん。俺は貴方の全てが知りたい。過去のことも。そしてこの先……俺はいつまで貴方の隣にいられるんだろう?)
榛名は自分のことを女々しいと思ったことは何度もあるが、それは環境のせいだと思っていた。
けれど、榛名は抱くよりも抱かれる方が好きだったし、今はもう女性を抱ける気がしない。
もしそんな状況になったとしても、もう勃起すらしないだろう。
そんなカラダになってしまって、この先霧咲に捨てられでもしたら、自分はいったいどうなるのだろう。
好きだから、家族よりも友人よりも霧咲を優先したくてこういう関係になった。
全て榛名が望んだことだ。
けど、もしものことを考えると恐い。
そんな残酷な未来を受け止める自信も覚悟も、今の榛名には無いのだ。
「ほら……暁哉、もっと腰を振って。俺のことも気持ちよくしてくれ」
「はぁっ、あ、あ、んんっ! こう、ですかっ?」
「そう……あぁ、凄く気持ちいいよ。持っていかれそうだ……!」
霧咲の首にしがみついて、騎乗位で激しく腰をくねらせた。
気持ちよさそうな霧咲の顔がたまらなくて、榛名はその唇に思いきり吸い付いた。
「ンッンッ、チュッ! チュプッヂュプッチュウウゥッ」
「ぁあ、暁哉! そろそろイキそうだ!」
「あん……イッて! 霧咲さん、イッて……! 俺のナカに出して!」
「暁哉……!」
(ずっと、貴方の隣に居たいよ。俺だけがそう願ってるんじゃないよね?)
腹の中で霧咲の熱いものを感じながら、榛名も絶頂に達した。
*
「……何か考え事をしていたね」
情事が終わり、二人で向き合うようにしてベッドに横たわり息を整えていた。
そして霧咲は、榛名の髪を撫でながらそんなことを聞いた。
「何のことですか?」
榛名は霧咲の手が気持ち良くて、目を閉じて自ら頭を霧咲の手に擦り付けるような動きをした。
まるで飼われた猫のようなその仕草に、霧咲は思わず笑みがこぼれたが質問をすることはやめない。
「榛名、君は嘘を吐くのが下手だと前に言っただろう」
「……セックスの最中に考えることなんて、相手のこと以外何がありますか?」
榛名は目を開けると霧咲を睨みつけた。
その顔は赤く染まっていて、別段嘘ではなさそうだが、霧咲は何か引っかかる。
それでもその回答が可愛くて、もう一度言わせたくなった。
「じゃあ、ずっと俺のことを考えてたの?」
「だから、そう言ってるじゃないですか……」
「俺の何を考えてたの?」
少し具体的になった質問に、榛名の表情が少し硬くなった。
じっと榛名の顔を見ていた霧咲はその変化にすぐ気付いて、もう一度聞こうとした。
榛名が何か霧咲に関することで悩みを抱えていることは一目瞭然だった。
「それは……」
いきなり遠くからスマホの震える音がして、榛名の言葉は遮られた。
それはいつも邪魔をする霧咲のものではなくて、珍しく榛名のものだった。
榛名はけだるげな仕草でゆっくりと身体を起こすと、立ち上がってリビングへ行き、スマホを手に取った。
すると、いきなり榛名の動きがピタリと止まった。
「ンッ、ぁっ……」
自分は霧咲のことをほとんど知らない。
出身地や家族のこと、どうして医者を目指そうと思ったのか。
いつから同性が好きだと自覚したのか。
過去の恋人とはどうして別れたのか、など――。
「あ、霧咲さんっ……あン……ッ」
最初は興味がない、と思っていた。
一緒にいることが重要で、本人が話したくないならそんなことは知る必要がない、聞かない方がいいとも。
「あ、やっ、そこ……! だめ、だめえ……」
霧咲の好きな食べ物は豚骨ラーメンとお刺身。焼酎よりも日本酒を嗜む。
好きな飲み物はブラックコーヒー。それとカクテル、カミカゼ。
好きなものはクルマ。(それときみ、と言われた)
嫌いなものは紅生姜とらっきょう――沢庵以外の漬物はあまり食べられない。
苦手なものは小動物と雨。誕生日は8月11日、血液型はAB型。
――そんな、単純なことは知っているけど。
「霧咲さ……ぁっん……っはっ、んん……」
些細な情報を一つ知るたび、もっと霧咲のことを知りたくなる。
何でもかんでも知りたくなって、知りたくないことまで知りたくなる。
「あ、もっとさわって……! ぁっ! んっ」
「可愛いよ、暁哉……もっと感じて、啼いてくれ」
「ああっ、んぅっ、ふあぁ!」
(もっと貴方のことを教えて、霧咲さん。俺は貴方の全てが知りたい。過去のことも。そしてこの先……俺はいつまで貴方の隣にいられるんだろう?)
榛名は自分のことを女々しいと思ったことは何度もあるが、それは環境のせいだと思っていた。
けれど、榛名は抱くよりも抱かれる方が好きだったし、今はもう女性を抱ける気がしない。
もしそんな状況になったとしても、もう勃起すらしないだろう。
そんなカラダになってしまって、この先霧咲に捨てられでもしたら、自分はいったいどうなるのだろう。
好きだから、家族よりも友人よりも霧咲を優先したくてこういう関係になった。
全て榛名が望んだことだ。
けど、もしものことを考えると恐い。
そんな残酷な未来を受け止める自信も覚悟も、今の榛名には無いのだ。
「ほら……暁哉、もっと腰を振って。俺のことも気持ちよくしてくれ」
「はぁっ、あ、あ、んんっ! こう、ですかっ?」
「そう……あぁ、凄く気持ちいいよ。持っていかれそうだ……!」
霧咲の首にしがみついて、騎乗位で激しく腰をくねらせた。
気持ちよさそうな霧咲の顔がたまらなくて、榛名はその唇に思いきり吸い付いた。
「ンッンッ、チュッ! チュプッヂュプッチュウウゥッ」
「ぁあ、暁哉! そろそろイキそうだ!」
「あん……イッて! 霧咲さん、イッて……! 俺のナカに出して!」
「暁哉……!」
(ずっと、貴方の隣に居たいよ。俺だけがそう願ってるんじゃないよね?)
腹の中で霧咲の熱いものを感じながら、榛名も絶頂に達した。
*
「……何か考え事をしていたね」
情事が終わり、二人で向き合うようにしてベッドに横たわり息を整えていた。
そして霧咲は、榛名の髪を撫でながらそんなことを聞いた。
「何のことですか?」
榛名は霧咲の手が気持ち良くて、目を閉じて自ら頭を霧咲の手に擦り付けるような動きをした。
まるで飼われた猫のようなその仕草に、霧咲は思わず笑みがこぼれたが質問をすることはやめない。
「榛名、君は嘘を吐くのが下手だと前に言っただろう」
「……セックスの最中に考えることなんて、相手のこと以外何がありますか?」
榛名は目を開けると霧咲を睨みつけた。
その顔は赤く染まっていて、別段嘘ではなさそうだが、霧咲は何か引っかかる。
それでもその回答が可愛くて、もう一度言わせたくなった。
「じゃあ、ずっと俺のことを考えてたの?」
「だから、そう言ってるじゃないですか……」
「俺の何を考えてたの?」
少し具体的になった質問に、榛名の表情が少し硬くなった。
じっと榛名の顔を見ていた霧咲はその変化にすぐ気付いて、もう一度聞こうとした。
榛名が何か霧咲に関することで悩みを抱えていることは一目瞭然だった。
「それは……」
いきなり遠くからスマホの震える音がして、榛名の言葉は遮られた。
それはいつも邪魔をする霧咲のものではなくて、珍しく榛名のものだった。
榛名はけだるげな仕草でゆっくりと身体を起こすと、立ち上がってリビングへ行き、スマホを手に取った。
すると、いきなり榛名の動きがピタリと止まった。
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