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〃
「……榛名? どうしたの」
不審に思った霧咲もむくっと身体を起こした。
が、いきなり榛名がくるっと振り返り、妙に焦った顔で変なことを言い出した。
「霧咲さん、俺がいいって言うまで耳を塞いでてくれませんか」
「は?」
同じ空間にいるのだから、耳を完全に塞いでも榛名の声が全く聞こえなくなるわけもない。
それほど聞かれたくないのなら、普通はトイレに行くなり廊下に行くなりベランダに出たりするものだが、今榛名は真っ裸な上、11月の夜は寒い。
だから電話の内容を聞かれるのは嫌だとしても、そこまで拙い相手ではないのだろう。
友達だろうか?
いや、友達なら『聞くな』なんて言わないだろう、しかもあんな必死な顔で。
だとしたら、昔の彼女だろうか?
「早く!」
「はいはい」
おおかたそんなところだろうと予想して、それでも無視せずに電話に出る榛名が少し腹立たしくはあるが、霧咲は両手を耳に当てたポーズでため息を吐いた。
勿論本気で塞いではいないし、聞くなと言われて聞かないわけがない。
しかし榛名は霧咲が耳を塞いだのを確認すると、一度深呼吸をして電話に出た。
「も……もしもしお母さん? ……あー、今友達が来ちょっとよ」
背中を向けている榛名が喋りだした途端、霧咲は思わず噴きだしそうになった。
榛名が『耳を塞いでくれ』と言った理由もすぐに分かった。
思わず耳から手を離して片手で口を塞いだ。
こっちの方がよっぽど危ない。
案の定、榛名は霧咲を睨みつけた。
霧咲は笑って声を出してしまわないように必死だ。
しかし、友達が来てると榛名が言った以上、別に声が聞こえても構わないんじゃないのか? と思った。
そしてタオルケットを持って、風邪を引かぬように裸の榛名にそっと掛けてあげた。
「今何時と思っちょるとって、別に泊まるからいいとよ……違う、東京の友達、男に決まっちょるやろ。――は? 誰ってお母さんの知らん人! 彼女? 知らん、結構前に別れたし」
榛名が携帯を少し耳から離した。
するとまるで電話そのものが怒っているような怒号が、霧咲にも聞こえた。
『あんたまた彼女と別れたとね!? 結婚するのに一体何年掛けるつもりやと!? お母さん別にできちゃった結婚でも怒らんて言っちょるやろ、ちょっと慎重すぎるっちゃないと!? もう草食男子もそんなに流行っちょらんて職場の若い子に聞いたっちゃけど!!』
「~~っもう切るよ! 友達もおるとに恥ずかしいやろ!」
『その友達もどうせ結婚しちょらんっちゃろ! だからアンタも結婚せんちゃないと!?』
霧咲は自分の話題になり、思わずぷっと少し噴き出してしまった。
口を押えるのも忘れてしまっていた。
「確かにまだ結婚しちょらんけど、お母さんには関係ないやろ! 大体友達に失礼やし! ――もう寝る前やかい切るよ、俺のことはしばらくほっといて! もしここに彼女がおったとしても、お母さんがそんな態度やったら裸足で逃げ出すよ!」
『結婚できんのをお母さんのせいにすると!?』
「違うけど! ああもう頭痛い……」
『暁哉! 次彼女と別れたら強制的にお見合いさせるかいね!!』
「はいはい、おやすみ」
榛名は雑に画面をタップして電話を切った。
そのままソファーにズルズルと沈みこんで、盛大なため息を吐く。
「はあぁぁ……」
ソファーの後ろでは、霧咲がさっきから声を殺して爆笑していた。
不審に思った霧咲もむくっと身体を起こした。
が、いきなり榛名がくるっと振り返り、妙に焦った顔で変なことを言い出した。
「霧咲さん、俺がいいって言うまで耳を塞いでてくれませんか」
「は?」
同じ空間にいるのだから、耳を完全に塞いでも榛名の声が全く聞こえなくなるわけもない。
それほど聞かれたくないのなら、普通はトイレに行くなり廊下に行くなりベランダに出たりするものだが、今榛名は真っ裸な上、11月の夜は寒い。
だから電話の内容を聞かれるのは嫌だとしても、そこまで拙い相手ではないのだろう。
友達だろうか?
いや、友達なら『聞くな』なんて言わないだろう、しかもあんな必死な顔で。
だとしたら、昔の彼女だろうか?
「早く!」
「はいはい」
おおかたそんなところだろうと予想して、それでも無視せずに電話に出る榛名が少し腹立たしくはあるが、霧咲は両手を耳に当てたポーズでため息を吐いた。
勿論本気で塞いではいないし、聞くなと言われて聞かないわけがない。
しかし榛名は霧咲が耳を塞いだのを確認すると、一度深呼吸をして電話に出た。
「も……もしもしお母さん? ……あー、今友達が来ちょっとよ」
背中を向けている榛名が喋りだした途端、霧咲は思わず噴きだしそうになった。
榛名が『耳を塞いでくれ』と言った理由もすぐに分かった。
思わず耳から手を離して片手で口を塞いだ。
こっちの方がよっぽど危ない。
案の定、榛名は霧咲を睨みつけた。
霧咲は笑って声を出してしまわないように必死だ。
しかし、友達が来てると榛名が言った以上、別に声が聞こえても構わないんじゃないのか? と思った。
そしてタオルケットを持って、風邪を引かぬように裸の榛名にそっと掛けてあげた。
「今何時と思っちょるとって、別に泊まるからいいとよ……違う、東京の友達、男に決まっちょるやろ。――は? 誰ってお母さんの知らん人! 彼女? 知らん、結構前に別れたし」
榛名が携帯を少し耳から離した。
するとまるで電話そのものが怒っているような怒号が、霧咲にも聞こえた。
『あんたまた彼女と別れたとね!? 結婚するのに一体何年掛けるつもりやと!? お母さん別にできちゃった結婚でも怒らんて言っちょるやろ、ちょっと慎重すぎるっちゃないと!? もう草食男子もそんなに流行っちょらんて職場の若い子に聞いたっちゃけど!!』
「~~っもう切るよ! 友達もおるとに恥ずかしいやろ!」
『その友達もどうせ結婚しちょらんっちゃろ! だからアンタも結婚せんちゃないと!?』
霧咲は自分の話題になり、思わずぷっと少し噴き出してしまった。
口を押えるのも忘れてしまっていた。
「確かにまだ結婚しちょらんけど、お母さんには関係ないやろ! 大体友達に失礼やし! ――もう寝る前やかい切るよ、俺のことはしばらくほっといて! もしここに彼女がおったとしても、お母さんがそんな態度やったら裸足で逃げ出すよ!」
『結婚できんのをお母さんのせいにすると!?』
「違うけど! ああもう頭痛い……」
『暁哉! 次彼女と別れたら強制的にお見合いさせるかいね!!』
「はいはい、おやすみ」
榛名は雑に画面をタップして電話を切った。
そのままソファーにズルズルと沈みこんで、盛大なため息を吐く。
「はあぁぁ……」
ソファーの後ろでは、霧咲がさっきから声を殺して爆笑していた。
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