運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
68 / 322

35 霧咲の歓迎会

 霧咲の講演から2週間後の土曜日、今夜は霧咲の歓迎会だ。
 場所は新宿のとある居酒屋で、幹事は有坂と若葉だ。
 榛名はその日公休だったので、場所が分からないという霧咲と合流して一緒に行くことにした。
 日勤のスタッフ達は皆一緒に向かうとのことだった。

 歓迎会が始まるのは18時半からなので、榛名は新宿駅東口で18時に霧咲と待ち合わせをした。
 新宿自体あまり慣れていなかったので多少早く着いても構わなかったのだが、少々早く着きすぎたらしくまだ17時半だった。
 しかし時間を潰すにしても30分は微妙なところだったので、榛名は霧咲の指定した場所で待ってることにした。
 一人で突っ立っていると、様々なキャッチセールスに声を掛けられる。

「あのぉすいません、簡単なアンケートなんですけど~」
「急いでるので」

 宗教勧誘。

「貴方は神を信じますか?」
「間に合ってます」

 署名活動。

「世界平和のために署名をお願いします」
「お断りします」

 そのたびに少し離れた場所に移動し、また元の位置に戻るということを繰り返した。
自分はそんなに騙しやすそうな顔をしているのか、声を掛けられすぎてそれらの対処は慣れきっている榛名だった。(道もよく聞かれるタイプ)
 すると後ろから肩をトントンと叩かれて、今度はなんだと睨みを利かせながら振り返ると、そこには目を丸くした霧咲が立っていた。

「お待たせ。何怖い顔してるの?」
「き、霧咲さ……先生! 早いですね」

 知り合いに見られていたら困るので、とっさに『先生』と言いなおした。

「君ほどじゃないよ。結構待ったかい?」
「いえ、10分くらいです。でも退屈はしてませんよ、キャッチセールスがいっぱい声掛けてきましたからね」

 霧咲の顔を見て笑顔になった榛名は、そのままの顔でそう言った。
 すると霧咲の眉間に皺が寄る。

「そんなに嬉しそうに言うことじゃないだろう? 君はすぐに騙されそうだから心配だよ」
「え? 確かに昔はよく騙されかけてましたけど、今は大丈夫ですから!」
「本当? なんて信用できないんだろう」
「ヒドい言い草ですね……」
 
 榛名は軽く霧咲を睨んだ。

「じゃあ行こうか。ところで君、場所は分かるの?」
「えっと、スマホで一応場所は検索してきました」

 霧咲と榛名は、連れ立って居酒屋へと向かった。
 あまり歩き慣れていない新宿の街で、行ったことのない居酒屋を探すのは結構困難だ。(榛名は無自覚な方向音痴である)
 結局榛名と霧咲が辿り着いたのは、開始時間を5分ほど過ぎた頃だった。

「あ、榛名主任~! 霧咲先生、こっちですぅ~!」

 店の前で、迎えに来てくれようとしていたのか、幹事の有坂が手を振りながら待っていた。
 榛名は少し小走りで有坂の方へと近付く。

「ごめん遅くなって! 道一本間違えててさ……」
「いいえー、ちょっと隠れ家チックなお店を選んじゃったので分かりにくかったですよね。先にお酒だけ頼んでますよぉ。主任と霧咲先生も最初は生中で良かったですかぁ?」
「うん、いいよ。霧咲先生もいいですか?」
「勿論。遅れてごめんね」

 榛名と霧咲は待ち合わせ時間よりも早く合流したというのに、30分以上も歩き回っていたため、榛名は小声で霧咲に謝った。

「すみません霧咲さん、なんだかいっぱい歩かせちゃって」
「いいよ。焦っている君の姿を見てるのも楽しかったし。それにデートみたいだったしね」
「ちょっ……」

 榛名は前を歩く有坂の方を見たが、榛名と霧咲の会話は聞こえていないようだった。
 広めの個室に、透析スタッフはもう全員が揃っていた。部屋は和風の洒落た作りになっていて、長テーブルの下は掘り炬燵だ。
 霧咲はテーブルの真ん中の席に案内され、榛名はその隣に座った。ちなみに霧咲の反対側には奥本が座っており、榛名の横にはMEの二宮がいる。

「なんか、えらく男女偏ってません?」
「自然にこうなったみたいですよ。でもほら、堂島は両隣に女性陣です」

 榛名の言葉を二宮が拾い、淡々と答えた。

「ああ本当だ、嬉しそうですね……」

 榛名と二宮はほとんど仕事中の業務連絡でしか会話を交わさないが、榛名は真面目で寡黙に仕事をこなす二宮のことはわりと気に入っていた。

「だって霧咲先生は榛名主任が隣じゃないと嫌ですよね?」

 端の方に座っていた看護師の若葉が、ニヤニヤしながらとんでもないことを霧咲に聞いた。
 しかし霧咲はにこっと笑って、こともなげに答えた。

「そうだね、榛名さんの隣は落ち着くからありがたいです」
「「「きゃ~~!」」」

 若葉、有坂、富永が霧咲の言葉に黄色い声を上げて喜んだ。

「何、そのきゃーって……勘弁してよ、もう」

 榛名は内心焦りながらも、なんでもない風に答える。
 一部の女性は男同士のアレコレを見るのが好きだということを知っていたが、(学生時代もクラスに数名いた)実際に榛名と霧咲がそういう関係だと知ったらきっとこんな風には喜ばないんだろうな……と思った。
感想 7

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕