運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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37 霧咲vs堂島

「さて、これは一体どういう状況なのかを説明してもらおうか、堂島君」

 霧咲が低い声で堂島に詰め寄る。
 霧咲の怒った声は前にも一度ローズで聞いたことがある。
 榛名があの男に連れて行かれそうになった時だ。
 また恋人ではないと否定してしまった。
 そして多分それを霧咲に聞かれた榛名は、恐くて顔が上げられない。
   再び便器へ座りこみ、身体を縮込ませて堂島にキスされた首の箇所をゴシゴシと擦った。
 霧咲は堂島に聞いているが、多分目は自分へ向けられているに違いない。霧咲の視線が痛かった。

「はあ? ちょっと待ってよ霧咲先生。俺、榛名君に二人は付き合ってないって聞いたよ? なのになんでそんなに怒ってるわけ? もしかして榛名君の気持ちに気付いて弄んでた的な感じですかー?」
「ち、違うよ!」

 堂島にとんでもないことを言われて榛名は慌てて否定した。
 思わず顔を上げたら、ばちっと霧咲と目が合う。
 ひどく怒っていると思われた霧咲は、さっきと同じく無表情だった。

(違う、俺は貴方に迷惑をかけたくなくて……!)

 そう言いたいのに、言葉が出てこない。

「……何の話だ?」
「はァ? だから榛名君はアンタのことが」
「そこをどけ」

 霧咲は堂島の胸ぐらをつかみ、乱暴に個室から追い出した。
 そして腰をかがめると、榛名の肩にそっと手を置いて優しく話しかけた。

「榛名さん、たくさん吐いたの? 気分は大丈夫?」
「えっ……? あ、はい、吐いたらちょっとすっきりしました」

(榛名『さん』? 誤魔化そうとしてくれてるのか……?)

「立てそう? お水持ってこようか」
「あ、いえ……、少し休んだら大丈夫なので」

 霧咲の優しい声と態度に安堵して、思わず涙がこぼれそうになった。
 けどここで泣いたら台無しなのでグッとこらえる。
 そんな榛名と霧咲の後ろから、堂島が苛立った声を上げた。

「ちょっ……何ごまかしてんだよ!」
「堂島君、君は何か勘違いしてるね」
「は!?」

   霧咲は立ち上がると、堂島に向かって言った。

「俺は榛名さんがなかなか戻ってこないから様子を見に来ただけだ。そしたら何やら君と榛名さんの声がこの中でしたから少し聞いてみれば、榛名さんは嫌がっているのに君は何をしようとしていた? 体調を崩しているのに無理矢理押さえつけていただろう」
「っ……!」

   それにしても、いつから聞かれていたのだろう。
 そこでようやく榛名は自分の身体が震えていたことに気付いた。

「彼は女の子じゃないのに見境が無いね。それとも嫌がられているのが分からなかったの? さすがにAVなんかの見すぎだろう」
「はぁ!? 決めつけてんじゃ――」
「俺はね、技士長と師長と奥本先生に報告したいところなんだよ堂島君。お世話になっている看護師さんが未遂とはいえ、酔ったMEに乱暴されかけるなんて……結構なコトだ」
「っ……」
「それとも嗜好が同じならば、気持ちが無くてもそういうことをしていいとでも思っているのか?」

   霧咲の言葉は容赦がない。
 榛名はこれを言われているのが自分だったら耐えきれないと思う。
 もっとも酔った相手に乱暴するなんて、榛名にはありえないことだが。
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