運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
104 / 322

   羽田空港に着いて宮崎行きの便を探したが、出発まではだいぶ時間があった。

(そういえばお昼ご飯食べ損ねてたっけ)

   簡単に昼食を摂ろうと思って、目についたカフェ風のレストランに入った。
   1人がけのテーブルに案内されたあと、霧咲にメールを送る。

『父が倒れたと母から連絡があり、今から宮崎に帰ります。もしかすると26日までに戻ってこれないかもしれません。その時はまた埋め合わせさせてください』

(何の埋め合わせだよ……)

   埋めるものなんて、もう何もないのに。
 すると、メールではなくて電話が掛かってきた。
 霧咲はいつもメールの返事は電話で返すことが多いのだ。
 いちいちメールを打つのが面倒なのだろう。
 『了解』の二文字だけでも構わないのに。

「は、はい、もしもし?」
『もしもし? メール読んだけど、お父さんは大丈夫なの? 君は今どこにいるんだ?』
「え、と、俺は今羽田です。出発が3時なのでだいぶ余裕ですけど……容体はわかりません、母がパニックになってて、落ち着いたら連絡をくれると思うんですけど……。あの、霧咲さんは今どちらに?」

 確か関西の方に出張だと言ってたけど、一体関西のどこなのだろう。

『俺は今大阪にいるよ。どこもかしこも関西弁が飛び交っていて非常に新鮮だ、まあ方言なら君のが一番可愛いけどね。今度二人でUSJに行きたいな、ディ〇ニーランドより楽しめそうだし』
「いいですね、俺も行ってみたいです」

 霧咲は、デ〇ズニーランドには家族と一緒に行ったのだろうか。
 榛名も彼女と行ったことはあるが、キャラクターに興味はないし、アトラクションは長時間並ばされるばかりで疲れた思い出しかなかった。

『ごめんね、お父さんが大変な時に。昨日の夜は出張の準備が忙しくって君の声が聞けなかったからさ……』
「……」
『榛名?』

(俺のこと、考えてくれてたんだ……)

   じわりと、胸が熱くなっていく。

(父親のところよりも、霧咲さんのいる大阪に行きたいな……)

 ふとそんなことを思ってしまったが、ぶんぶんと頭を振って考え直した。さすがに親不孝すぎる。
 同性を好きになって、もう戻れなくなっている時点でじゅうぶん親不孝だとは思うけれど──。

『……榛名、どうしたの?』
「あっ……いや、なんでもありません」

 霧咲の言葉に感動してボケっとしていたが、いつの間にか料理も目の前に運ばれてきている。
 ちなみに榛名が頼んだのは、昼に食べ損ねたミートスパゲティだった。
 このまま話し続けていると周囲に迷惑かもしれないが、切りたくなかったので榛名は小声で話すことにした。

『そういえば君、体調不良は? ノロかもとか言ってただろ、大丈夫なのかい?』
「あ……それはもう治りました。ノっ……じゃ、なかったみたいです、ご心配をおかけしてすみません」

 飲食店で「ノロ」なんて言ったら、店員に睨まれて追い出されそうだ。
 周りの様子を伺ったが、特に睨まれてはいないようだった。
 隣のテーブルのサラリーマンが、少し煩わしそうな顔をしているが。

『君、今羽田のどこにいるの?』
「レストランです」
『そっか、そりゃあノロなんて単語は出せないね。とりあえず一旦切ろうか?』
「……はい」

    無意識に落ち込んだ声を出していたのだろうか?
 霧咲が電話の向こうでクスクスと笑った。

『そんなに残念そうな声を出さないでくれよ。26日まで会えなくて淋しいのは俺も同じだけどね。……あ、君は帰ってこれないかもしれないのか』
「父の容体によって、ですけど。何日連続で休めるかもわからないので」
『そっか。ねえ、榛名』
「なんですか?」

   突然、霧咲の声のトーンが変わった。

『……次に会ったとき、大事な話があるんだ』
「!」

   ドクン、と心臓が大きく高鳴った。

『ちょっと込み入った内容だから、電話じゃなくて直接話したいんだよ』

   やはり、霧咲は家族のことを榛名に話すつもりでいるのだ。
 そして、別れを告げるつもりなのだと……。

「わ、かり、ました……」

   震える声で、なんとか返事をする。

『じゃあ、また夜に電話かけれたらかけるね。忙しかったら出なくていいから』
「ハイ」

 通話が切れた。やや復活しかけていた食欲は、またどこかに消え失せてしまった。
 榛名はパスタを二口ほど食べると、そのまま勘定をしてその店を出た。
感想 7

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕